2023年08月30日
アイデアよもやま話 No.5673 中国の若者の失業率が過去最悪の20%超え!
5月16日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中国の若者の失業率について取り上げていたのでご紹介します。 

5月16日に発表された中国の小売売上高は、4月は前年比18.4%のプラスとなりました。
昨年のこの時期は上海などで厳しい行動制限を伴うロックダウンが行われていましたので、その反動もあって大幅な伸びとなったのです。
この数字が示しますようにゼロコロナの解除を受けて個人消費は上向いています。

番組が取材した屋台では韓国料理、たこ焼き、日本料理、様々なものが並んでいます。
実は、この屋台に中国が直面している課題の解決につながるのではないかと今、期待が集まっているのです。
中国内陸部、甘粛省・蘭州市では4月にオープンしたばかりの屋台が集まる施設に大勢の人たちが集まっています。
100店舗あまりの屋台が集まる、この場所には1日に1万人ほどのお客が訪れ、大盛況となっています。
この屋台を運営している人の多くは20〜30代の若者たちです。

4月末、蘭州政府は屋台に関する新たな方針を発表しました。
その内容は「屋台の経営を更に標準化し、活気ある事業環境をつくる」という内容です。
中国では、屋台は景観や衛生面などの問題から取り締まりの対象となってきました。
ただ、コロナ後、外出が可能となり、人々の消費の現場での期待から地方政府が次々に屋台の規制緩和に動いているのです。

屋台への期待は消費だけではありません。
雇用の受け皿という側面もあるのです。
背景は若者の失業率の悪化、5月16日に発表された4月の若者(16〜24歳)の失業率は20.4%と、統計開始以来初めて20%を超え、過去最悪に。
5人に1人の割合で仕事がない深刻な状況です。

中国政府は屋台が雇用面に与える影響をどのように見ているのでしょうか。
中国国家統計局の報道官は次のように述べています。
「雇用情勢が全体的に改善し、収入の増加と消費の促進に役立つ。」

屋台の開店準備を進める曽譯寧さん(21歳)は、飲食店やホテルで働いてきましたが、コロナ禍でお客が減り、今年に入り職を失いました。
4月末、この場所で屋台を出すことを決めました。
曽さんは次のようにおっしゃっています。
「(屋台は)失業者の気持ちを前向きにしてくれる。」
「失業はつらいものだが、屋台をやれば毎日稼げるから。」

1日当たりの売上げは約1万円、仕入れや出店料を除くと、手元に残るのは6000円ほどだといいます。
開業して2週間ほどですが、人気店になっているようです。
一方で、屋台を続けるうえでのマイナス面も指摘します。
「雨が降ったらお客は誰も来ないから店を休むことになる。」
「仕入れにお金もかかるし、家賃分のお金しか残らない。」
「10月までは屋台を続けて、11月からは別のことをやるつもりだ。」

中国政府が推し進める屋台経済、各地で生まれる小さな屋台が中国の雇用問題の解決の一助となるのでしょうか。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「もうこれ危険水域をと言っていいんじゃないかと思うんですよね。」
「日本の若年失業率は4%台なんですけども、それと比べても息を飲むような水準なんですけれども。」
「ちょっと過去を振り返ってみたいんですけども、コロナ前の中国の若年失業率はだいたい10%くらいだったんですよね。」
「コロナを経て倍になっちゃったということで、相当雇用情勢は若者にとってきついということですよね。」
「ちなみに、今年大学を卒業する中国の若者は1958万人と言われていますから、彼らがこういった状況の中で望む職に就くというのは難しいと思うんですね。」
「そうなると社会不安のもとにもなりかねないと、ちょっと深刻な状況にあると思います。」
「(それに当局としても若者の雇用をどうにかしようと様々な雇用拡大策に乗り出しているということについて、)それは分かるんですけど、問題は、その一方で中国当局が経済に対する規制の締め付けを非常に強めてますよね。」
「一番、雇用の吸収力があるのはスタートアップ企業ですけども、“金の卵を産むニワトリ”の言わば首を絞めるような政策を片方でやってるわけですよね。」
「ここは大きな矛盾ですよね。」
「このままで行くと、うまい職に就くことが出来なくなった若者がフリーターみたいになって結婚の時期にも遅れるということは出産の時期も遅れて、少子化に拍車がかかるという悪循環に陥るリスクがあるということじゃないんでしょうか。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。
・コロナ後、外出が可能となり、人々の消費の現場での期待から地方政府が次々に屋台の規制緩和に動いている
・屋台への期待は消費だけでなく、雇用の受け皿という側面もある
・この屋台を運営している人の多くは20〜30代の若者たちである
・背景は若者の失業率の悪化、5月16日に発表された4月の若者(16〜24歳)の失業率は20.4%である
・統計開始以来初めて20%を超え、過去最悪で、5人に1人の割合で若者は仕事がない深刻な状況である
・日本の若年失業率は4%台で、それと比べても息を飲むような水準である
・コロナ前の中国の若年失業率は10%ほどだったので、雇用情勢は若者にとって相当きつい
・こうした状況は社会不安のもとにもなりかねない、ちょっと深刻な状況である
・当局としても若者の雇用をどうにかしようと様々な雇用拡大策に乗り出しているが、その一方で中国当局は経済に対する規制の締め付けを非常に強めている
 -一番、雇用の吸収力があるのはスタートアップ企業だが、“金の卵を産むニワトリ”の言わば首を絞めるような政策を片方でやっている
・このような状況が続くと、失業している若者がフリーターになって結婚の時期にも遅れるということは出産の時期も遅れて、少子化に拍車がかかるという悪循環に陥るリスクがある

なお、7月20日(木)付けネット記事(こちらを参照)には以下の記述があります。

7月20日、中国で若者の失業率が3月に50%近くに達した可能性が研究者によって指摘され、公式統計を巡る議論が再燃、労働市場の低迷が改めて注目されている。

中国で若者の失業率が3月に50%近くに達した可能性が研究者によって指摘され、公式統計を巡る議論が再燃、労働市場の低迷が改めて注目されている。

国家統計局は同月の16─24歳の失業率は19.7%と発表した。これに対し北京大学の張丹丹副教授は財新のオンライン記事で、家で寝そべっていたり親に頼る非学生の1600万人が統計に含まれていたら、失業率は46.5%に達した可能性があると指摘した。記事は17日に掲載されたがその後削除されている。

要するに、家で寝そべっていたり親に頼る非学生も含めれば、2人に1人近くが失業状態にあるというのです。
こうした状況は、まさに国家的な非常事態と言えます。
そして、こうした中国当局にとって都合の悪いネット記事は即座に削除されてしまうのです。

中国はかつて“一人っ子政策”があり、コロナ禍での極端な“ゼロコロナ政策”もあり、少子高齢化、そして経済への締め付けが相まって、今や若者は5人に1人の割合で仕事がない深刻な状況というのです。
そうした中、地方政府が次々に屋台の規制緩和に動いており、一部の若者は屋台の店主として働いているのです。
その一方で、中国当局は経済に対する規制の締め付けを非常に強めており、多くの若者はフリーターとして不安定な暮らしを余儀なくされているのです。
こうした状況は、滝田さんも指摘されているように、若者は結婚したくても出来なく、従って少子化に拍車がかかるという悪循環をもたらすのです。
本来であれば、こうした経済状況を打破するために中国当局は雇用の吸収力があるスタートアップ企業の育成や支援をすべきなのですが、そうした政策は打ち出すことはしないのです。
その理由は、以前にもお伝えしたように、中国共産党による一党独裁国家、中国は“まず中国共産党ありき”で憲法よりも中国共産党は上位に位置付けられ、“中国共産党にとって脅威となるもの、あるいは脅威となる可能性のある存在は極力排除する”という論理が働いているからなのです。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.690 『中国式“法治”の脅威!』

こうした論理こそ中国に限らず独裁国家の最大の弱点であり、様々な有効な政策を打ち出すうえでの高いハードルとなってしまうリスクをもたらすのです。
要するに国家レベルの政策遂行における競争原理が働かないので最も有効な政策が実行出来ないケースがあり得るのです。

ということで、こうした中国当局の弱点が現在の中国の若者の過去最悪の失業率をもたらしているのです。
ですから、このまま中国当局が政策転換をしなければ、以下のような状況をもたらすと見込まれます。
・かつての天安門事件のような若者による反乱
・大量の若者の国外脱出

 
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