2023年05月10日
アイデアよもやま話 No.5577 SDGsの達成 その3 飢餓をゼロに!
「ワールドビジネスサテライト(BWS)」(テレビ東京)では1月30日(月)の週に「SDGsの達成」をテーマに取り上げていたので3回にわたってご紹介します。
3回目は2月1日(水)放送分から「飢餓をゼロに」についてです。

国連が掲げているSDGs、持続可能な開発目標、17の項目(ゴール)ですが(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)、2030年までにこれらの達成を目指していこうというものです。
なお、今回のテーマ「飢餓をゼロに」はゴール2です。

売れ残りなどで食べ物が捨てられてしまうフードロス、実はそのフードロスよりも数倍も多くあるとされるのが調理する過程で捨てられてしまう食べ物の切れ端などの“隠れフードロス”なのです。
これをゼロにしようと新たな取り組みが始まっています。

年間1億食ほど売れる吉野家の牛丼、その味に欠かせないのがじっくりとタレで煮込んだタマネギです。
吉野家の担当者は次のようにおっしゃっています。
「タマネギは吉野家の牛丼の命になります。」
「しっかりとタレの中で甘みが出て、マイルドな牛丼になります。」

そのタマネギ、吉野家の工場でカットされます。
しかし、丸ごと使えるわけではありません。
芯の周りの部分はくり抜いて、表面の色のついた部分は煮込んでも硬いため、切り落とします。
こうした廃棄される部分は吉野家ホールディングス東京工場(埼玉県加須市)だけで1日約350kgにもなるといいます。
吉野家ホールディングス製造部の浦内貴史さんは次のようにおっしゃっています。
「タマネギは人間以外食べないので廃棄物として処理しております。」

そこにやってきたのが食品ロスの問題に取り組むアストラ・フード・プラン株式会社(埼玉県富士見市)の加納千裕社長で次のようにおっしゃっています。
「まだ全然食べられるオニオンリング状のものも入っていて、もったいないですね。」

3年前、加納さんが創業したアストラ・フード・プラン、運んできたのは吉野家の工場で廃棄される予定だったタマネギです。
それを細かく刻んで専用の装置に投入、400℃の高温で一気に過熱・殺菌をしていきます。
タマネギが持ち上げられて循環している間に乾いていきます。
10秒ほどの加熱で出来るのがタマネギパウダーです。
高温で加熱することで通常の乾燥機に比べて風味や栄養価を損ねないといいます。
昨年、独自に開発したこの装置、加熱水蒸気という蒸気の中で熱をかけることで焦がさずに乾燥することが出来ています。
高温になった水蒸気の熱を利用することでタマネギを焦がさずにパウダー状に出来るのです。
現在、食品メーカーやスーパーなど約50社とタッグを組み、廃棄予定だった野菜をパウダー化(あおのり、ショウガ、ニンジン、タマネギ、大根の葉、レモンの皮など)、新たな食品の原料にすることに挑戦しているのです。
元々飲食チェーンなどで商品開発を手掛けてきた加納さん、ある問題意識が起業のきっかけになりました。
加納さんは次のようにおっしゃっています。
「食品の現場では一般の方が知らないようなロスが沢山出ているというのは実感として感じていました。」
「食料が足りないですとか、自給率を上げようという中、こんなに沢山捨ててしまっているのはもったいない。」

そして今、このパウダーを使って、新たな取り組みが始まっています。
この日、吉野家のテストキッチン(東京・江東区)ではある試食会が開かれていました。
加納さんのタマネギパウダーで作ったふりかけです。
「すき焼き」や「紅しょうが」の味など5種類が並びます。
吉野家ホールディングス 素材開発部の開発リーダー、黒川眞行さんはふりかけを牛丼にたっぷりかけて食べた感想を次のようにおっしゃっています。
「タマネギの味がすごいですね。」
「甘みが増すような気がします。」
「まさか規格外品が粉末化して、こんなに良いものが出来るなんて思ってませんでした。」

上々の評価です。
吉野家では今後、商品化に向けて開発を進めていくことになりました。

更に加納さんがやってきたのは全国展開するベーカリーのポンパドウル元町本店(横浜市中区)です。
先月(1月)から加納さんのタマネギパウダーを使って新商品の開発を始めたのです。
初めて出来た試作品、タマネギパウダーをたっぷり練り込んだパンやビザなど4種類です。
ポンパドウル社員の感想も上々で、今月(2月)から一部の店舗で実際の販売が決まりました。

動き始めた“隠れフードロス”削減への取り組み、加納さんは次のようにおっしゃっています。
「元々捨てられていたものに新たな価値を付けて美味しい商品にしていただいて、召し上がっていただく、みんながウィンウィンになって、1社では出来ない循環型を持続可能なかたちでやっていきたいと思っています。」

日本の“もったいない精神”が世界で見直されているといいますけれども、様々なことが考えられます。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまで売れ残りなどで食べ物が捨てられてしまうフードロスについては報じられる機会が多かったように感じます。
しかし、調理する過程で捨てられてしまう食べ物の切れ端などの“隠れフードロス”はフードロスよりも数倍も多くあるというのです。
そうした中、牛丼が年間1億食ほど売れる吉野家でその味に欠かせないのがタマネギですが、廃棄される部分は吉野家ホールディングス東京工場(埼玉県加須市)だけで1日約350kgにもなるといいます。
ちなみに、“タマネギは人間以外食べない”というのはこの番組で知りましたが、ちょっと意外です。
こうした中、食品ロスの問題に取り組むアストラ・フード・プランでは、これまで廃棄されていたタマネギの部分を独自に開発した技術によりリサイクルしてタマネギパウダーとして商品化しているのです。
そして、このパウダーで作った5種類の味のふりかけを吉野家では今後、商品化に向けて開発を進めていくことになりました。

一方、全国展開するベーカリーのポンパドウルでは1月からタマネギパウダーを使った新商品の開発を始め、初めて出来た試作品、パンやビザなど4種類を2月からポンパドウル元町本店(横浜市中区)をはじめ一部の店舗で実際の販売が決まりました。
ちなみに、私も是非一度このパンやビザなどを食べてみたいと思い、元町本店でこれらを購入し、食べてみました。
確かにタマネギの味がかすかにして、美味しかったです。

なお、“隠れフードロス”削減に取り組むアストラ・フード・プランはタマネギ以外にも廃棄予定だった野菜のパウダー化を進め、新たな食品の原料にすることに挑戦しているといいます。
ですから、アストラ・フード・プランには“食のニューフロンティア”とも言える“隠れフードロス”の削減に邁進し、食糧不足の軽減を図り、同時に新たな食生活を開拓し、更には世界展開し、“食文化”に革命を起こしていただきたいと思います。
ということで、アストラ・フード・プランの取り組みもSDGsの優れた事例の一つと言えます。

 
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