2023年04月06日
アイデアよもやま話 No.5548 老化を治療出来る時代へ!
昨年12月25日(日)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で間近になってきた老化が治療出来る時代について取り上げていたのでご紹介します。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

老化を治療する研究をしている、東京大学医科学研究所の中西真教授は実験で、年老いたマウスを若返らせることに成功したといいます。
マウスがどのくらい棒につかまっていられるか、合わせて40匹のマウスで比べた実験では、老齢マウスは30秒だったのに対し、若返らせたマウスは100秒にまで回復しました。
人に当てはめると70歳相当のマウスが40歳くらいまで若返った恰好です。

では、いったいどうやって若返らせたのか、それにはまず老化がなぜ起きるのか、知る必要があります。
中西さんは次のようにおっしゃっています。
「(そもそも人はどういうふうに老いていくのかという問いに対して、)いろいろな原因があると言われていますけれども、我々の様々な臓器や組織に小さいけれども、ずっと長く続くような炎症が起こる。」
「これが一つの原因だと言われています。」
「その炎症を起こしている細胞が“老化細胞”。」
「広がってベターとくっついている、これが老化細胞の特徴です。」

若い細胞は細長く、引き締まった形をしていて、分裂を繰り返し、新陳代謝を行います。
一方の老化細胞はのっぺりと広がったかたちをしていまして、細胞分裂を出来なくなっていました。

老化細胞は本来、体にとって不要なため、ほとんどは免疫により取り除かれます。
ただ、一部は体に残り続け、年齢を重ねるにつれて、体内に蓄積してしまいます。
そして臓器や組織に炎症を引き起こす物質を出して、筋力など体の機能の衰えや様々な病気を引き起こすのだといいます。
中西さんは次のようにおっしゃっています。
「例えば神経細胞が老化したりすると、アルツハイマー病になったりとか、肝臓の細胞に老化細胞が溜まると肝炎が起こったり、肺にあったりすると肺繊維症という線維化が進んだりして、肺が硬くなったりとか。」

様々な悪影響を引き起こす老化細胞、だとすればこれを取り除けば老化を防ぐことが出来るのではないか、世界中の研究者が長年老化細胞を体から取り除く方法を探ってきました。
しかし、健康な細胞まで傷つけてしまうなど、うまくいきませんでした。
でもそんな中、中西さんは約30年間の研究の末、昨年、老化細胞だけを取り除く方法を発表したのです。
実は老化細胞は自分自身が壊れないように特殊な酵素を使っています。
で、中西さんはその酵素を薬でブロックし、使えないようにして老化細胞だけを壊すことに成功したのです。
で、先ほどの実験でお見せしたマウスもこの方法で若返らせたものです。

中西さんは最近、もう一つ別の方法も編み出しました。
老化細胞は免疫による攻撃を受けていますけれども、ある物質を出して、その攻撃を無力化しています。
今度はこの物質が働かなくなるような薬を投与して、免疫が攻撃出来るようにしたのです。
マウスがまるで若返ったように、体の機能が改善したこの研究ですが、人での効果はまだ未知数で、これから多くの検証が必要だということです。
中西さんは次のようにおっしゃっています。
「老化細胞除去によって、これは予想ですけれども、(人間は)老化の症状を示しにくいような個体に変わってくるんじゃないか。」
「最大寿命まで“皆さんが健康に生きることが出来るような社会”が近づいてくるんじゃないかなと思います。」

将来的に老化が治療出来るようになると、マウスのように人間も若返っていくことが出来ると思いたいですが、中西さんの話では、若返っていつまでも長生き出来るという効果はないだろうということでした。
そもそも人の寿命は最長でも120歳くらいと言われていて、今回の研究は飽くまでも、その寿命の中で健康でいることが出来る期間を長くするというものなのです。

しかし、気になるのは、老化細胞とはいえ体に残り続けるのは意味があるんじゃないか、取り除いてしまって本当に大丈夫なのでしょうか。
それについては研究中で、まだ分からないこともあるのですが、老化細胞は悪さだけをするのかというと、必ずしもそうではないということなのです。
なので、どの程度老化細胞を除去するのか、適切なあんばいを見つけ出すことが大切で、それが人に応用していく際に重要なポイントになるということでした。
そこで、ズバリ人への実用化はいつになるのかですが、中西さんは次のようにおっしゃっています。
「出来れば5年で応用してみたいが、正直、実用化はまだまだ先だろう。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、中西さんの研究内容を以下にまとめてみました。
(老化が起きる理由)
・若い細胞は分裂を繰り返し、新陳代謝を行うが、老化細胞は細胞分裂を出来ない
・老化細胞は本来、体にとって不要なため、ほとんどは免疫により取り除かれるが、一部は体に残り続け、年齢を重ねるにつれて、体内に蓄積される

(老化による悪影響)
・老化細胞は様々な臓器や組織に炎症を引き起こす物質を出して、筋力など体の機能の衰えや以下のような様々な病気を引き起こす
 -アルツハイマー病
 -肝炎
 -肺繊維症

(老化の防止策)
・老化細胞は自分自身が壊れないように特殊な酵素を使っているが、その酵素を薬でブロックし、使えないようにして老化細胞だけを壊すこと
・老化細胞は免疫による攻撃に対して、ある物質を出して、その攻撃を無力化しているが、この物質が働かなくなるような薬を投与して、免疫が攻撃出来るようにすること
・研究ではマウスの体の機能が改善したが、人での効果はまだ未知数で、これから多くの検証が必要であること
・人への実用化について、5年後を目指すが、実際には実用化はまだまだ先であると見込まれること

(老化防止による期待効果)
・老化細胞除去によって、人間は老化の症状を示しにくいような個体に変わり、最大寿命まで健康に生きることが出来るようになること
・人の寿命は最長でも120歳くらいと言われており、今回の研究は飽くまでも、その寿命の中で健康でいることが出来る期間を長くするというものであること

(残された研究課題)
・老化細胞が体に残り続ける意味については研究中で、老化細胞は悪さをするだけではないので、どの程度老化細胞を除去するのか、適切なあんばいを見つけ出すことが大切で、それが人に応用していく際に重要なポイントになること

そもそも老化が治療出来るなんていうことはまだまだ先の夢物語だと思っていました。
しかし、老化のメカニズムは既に解明されており、マウスを使った実験には成功しているので、長くても10年後くらいには老化の治療、あるいは老化の予防策は実用化されていると期待出来そうです。
もし、これが現実のものになれば、薬による“健康寿命”(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活出来る期間)問題の解決につながります。
ですから、人類の健康にとって、老化を治療出来るようになることは画期的なことなのです。
まさに歴史的な、世紀の大発見です。
そして、医療費の削減にも大いに貢献出来ます。
ですから、国はこうした研究には最大限の資金をはじめ様々な援助をすべきなのです。

なお、iPS細胞を使った若返りの研究もiPS細胞の生みの親、京都大学iPS細胞研究所の所長でもある山中伸弥教授のグループにより進められております。(参照:アイデアよもやま話 No.5115 iPS細胞関連研究の最前線 ー その3 若返りの研究!
いずれにしても1日も早く老化を治療出来るようになる時を迎えたいものです。

さて、老化を治療出来る時代到来後に残された人類の最大の課題は“永遠の命”です。
しかし、もし人類が“永遠の命”を手に入れたら、食糧やエネルギーの危機を迎えてしまいます。
その他にも様々な弊害が起きてしまいます。
ですから、この課題の解決については慎重な検討を要します。

 
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