2023年01月29日
No.5490 ちょっと一休み その861 『キーエンスにみる、業界最高水準の従業員の平均年収を可能にする企業の要件!』
前回は、富士通による新卒2年目での課長級抜擢についてご紹介しました。(参照:No.5484 ちょっと一休み その860 『富士通、新卒2年目で課長級抜擢!』
今回は、昨年12月22日(木)付けネット記事(こちらを参照)で平均年収2000万円以上の株式会社キーエンスのヒミツについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

(組織の構造によって社員全員が成果を上げられる)
・2022年6月の有価証券報告書によると、キーエンスの平均年収は2183万円だった。このため、入社2年目には年収1000万円を超えると言われている。
・キーエンスはそれだけの給与を支払う成果が出せるのか?
 その答えが、この「構造が成果を創る」という考え方の中にあります。
 つまり、営業の構造、商品企画・開発の構造、マーケティング・販売促進の構造、人事の構造など、キーエンス組織内における構造のすべてが、「お客様に付加価値を提供するための構造」になっており、社員の個人的な能力や努力だけではなく、構造によって社員全員が成果を上げられるようになっているのです。

(キーエンスを読み解く3つのキーワード)
1.マーケットイン型
キーエンスでは、マーケットイン型の新商品企画がなされています。なぜお客様が買うのか? 本当にその商品・機能は使われるのか? 使われたら本当に役に立つ(困り事・課題を解決する)のか? どんな役に立つのか? について商品の開発前に突き詰めることが徹底されています。もしかすると、「自社でもそれはやっている」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、追求度が他社とは異なります。
・ここで興味深いのが、キーエンスではその実現のために、「世界一の高度な技術が使われている」ことが重視されているわけではないことです。
・商品がどのようにお客様に使われるのか、その「『使われ方』までを追求した商品である」ことが重視されているのです。
・開発前にお客様のニーズがどこにあるのかを徹底的に突き詰めていくため、彼らは、お客様のニーズについて、お客様よりも詳しく知っています。
・彼らはお客様のニーズを捉えたら、商品企画に入る前に、社会全体の潮流や業界全体のトレンドを視野に入れ、現在自社が持っている技術的な強みを活かして、どんな商品を作れるのかという分析をし、さらに、同じような商品を作っている競合他社の調査・分析をします。
それらの綿密な分析を交えながら、それまでに掴んだお客様のニーズをベースに、「こういう商品を作ったらいいのでは」と仮説を立てて商品企画を行うのです。
・キーエンスが日本有数のマーケットイン型企業と言われる理由は、仮説を立てた後、商品開発する前に「その仮説が本当に合っているかを、さらに検証する」点にあります。
・キーエンスでは、このように自分たちの仮説が間違っていないことを確認したうえで、ようやく本格的に商品開発に入っていきます。これが、マーケットイン型企業キーエンスの考え方、やり方であり、他企業がなかなか真似できない点なのです。

2.高付加価値状態での商品の標準化
キーエンスでは、特注品ではなく「標準品」を作っています。にもかかわらず、作る前に現場に足を運んで直接お客様の潜在ニーズを見つけ出すという市場調査を行っています。この仕組みがあるため、最大公約数の仕様・機能を備えた高付加価値状態の標準品での対応を可能にしています。

・キーエンスにおける「高付加価値状態での商品の標準化」について言及する前に、理解しておいてほしい大切な考え方があります。
 それは、「市場原理、経済原則で考えることが大切である」という考え方です。
 これもキーエンスの経営理念の主軸として位置づけられている重要な考え方の一つです。
 「市場原理で考える」とは、「市場=お客様が何を買い、何をどう使って、いつ、どんなときに価値を感じるのか? その原理はどのようなことか? をしっかりと考えましょう」という意味です。
そして、「経済原則で考える」とは、「どうすると一番利益が出るのか? で、意思決定しましょう」という意味です。
・「経済原則で考える」だけを重視し、ただ利益を上げたい、という発想だけでビジネス展開していると、市場を敵に回してしまうこともあります。
 しかし、膨大な時間とお金をかけて、その会社でしか使えない特注品を作っても他では売れない、つまり儲からないので経済原則には沿っていません。
 キーエンスでは、この市場原理と経済原則の両方をうまく合致させたやり方で商品を作っています。
 キーエンスの人たちは、どの競合他社よりも多くの事例を知っていて、多くの企業が困っていることを熟知しているからです。
 そのため、お客様のニーズに応えつつ、標準化して展開できる商品を企画、開発できるのです。
 この仕様・機能をまとめて、標準型の商品にすることが、キーエンスにおける潜在ニーズの実現です。
 その結果、お客様が困っていることを解決でき、しかも特注品を作るほどのコストがかからず、たくさん売れて利益が上がる、という市場原理と経済原則の両方に合致した展開ができるのです。
・キーエンスではニーズから逆算して商品を作り、お客様に対する付加価値の提供と同時に、生産性と利益を上げることに成功しています。
 それがキーエンスの付加価値創造戦略の肝になっているのです。

3.世界初・業界初の商品
キーエンスでは、「お客様も気づいていない潜在ニーズ」を、徹底したコンサルティングセールスによって探り出し、「まだつくられていない付加価値(新創造価値)」を備えた商品=「世界初・業界初の商品」を生み出しています。

・驚くべきは、キーエンスの新商品の70%が世界初もしくは業界初であるということです。
 世界初・業界初というと、今までにない特許技術を駆使したような難しい商品と思われるかもしれませんが、世界一、業界一といった性能面(技術面)で高性能を備えたものではありません。
 お客様の使い方を知り尽くし、課題や問題点を深掘りすることで、今までになかった機能や仕様を実現し、未解決の課題を解決しているのです。
 トップ技術を使うというよりは、アイデアや機能の組み合わせなどを駆使し、お客様のアプリケーションに対してのソリューションを提供しているということです。
 顧客の潜在ニーズの中にある、まだ誰も叶えたことのないニーズを叶えるのが「世界初・業界初の商品」です。
・キーエンスは、お客様の潜在ニーズを知るため、この未知の部分にまで踏み込み、徹底的に探索します。
 このような努力を続けているからこそ、キーエンスは常に、高付加価値の商品を生み出すことができるのです。
・世界初・業界初の商品を生み出す意義は、お客様に高付加価値を提供できるだけではありません。
 同時に、他社商品との差別化を図ることができるのです。世界初・業界初の商品であれば、他社との比較のしようがないので、相見積もりをとられることは基本的にありません。
 つまり、キーエンスは世界初・業界初の商品を作り出すことによって、「付加価値戦略」と「差別化戦略」を両立しているのです。
・キーエンス社員がお客様に必ず伝えること
 大切なことは、「この商品はあなたの役に立ちます。そして、それはこの商品にしかできません!」と伝えられることです。そう伝えるとお客様は「これ、いくら?」と反応し、ここで初めて独自の価格がつくのです。
  キーエンスの営業だけでなく、トップセールス、トップマーケターたちは、この付加価値戦略と差別化戦略の両立が重要だということを認識し、お客様に提案するときは、この点を必ず伝えてアプローチしています。
 そうすることにより、「相見積もり」をとられにくくし、価格競争に巻き込まれることを抑制しているのです。
 世界初・業界初の商品を作ることによって、付加価値戦略と差別化戦略の両方を展開している。それが構造=仕組みとして確立されていて、ずっと変わることなく継続し続けている。それがキーエンスなのです。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

今回ご紹介したキーエンスの事例を参考に、業界最高水準の従業員の平均年収を可能にする企業の要件を以下にまとめてみました。
・お客様満足度の向上
  徹底的なソリューション、および高付加価値の追求
  高品質・低コスト・短納期の追及
・全ての社員の意識が「お客様満足度の向上」に向けて徹底的に浸透していること
・全ての組織が「お客様満足度の向上」に向けて有機的に機能すること
  情報共有
  タイムリーな組織間の連携
・業界最高水準の従業員の平均年収
・業界最高水準の福利厚生
・取り扱う商品の選択基準
  長期的に世界的に多くの需要が期待出来ること
  高い利益率が期待出来ること
  世界初・業界初の商品
・上記の選択基準に照らして、最も高い利益が期待出来る商品の研究・開発に取り組むこと
・より多くの顧客の共通した付加価値を商品の機能に取り込むこと
・一方で、開発する商品の持つ機能について、他社との差別化を図ること
・仮説に基づいた商品企画、および仮説の検証後に本格的な商品開発を進めること

このようにまとめてみましたが、中でも特に重要なことは、他社が気付いていない、顧客の要望を満たす商品の提供です。
こうした差別化した商品は商談における競争力がとても強いからです。

更に、業界最高水準の従業員の平均年収、および福利厚生の企業であれば、常に良い意味でマスコミなどで取り上げられることが多く、従って国内外を問わず、優秀な人材が集まってきますから、増々企業競争力の強化が図られると期待出来るのです。

 
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