2023年01月28日
プロジェクト管理と日常生活 No.802 『“アベノミクス”の成果と課題』
昨年9月27日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でアベノミクスの成果と課題について取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

2012年末に発足した第二次安倍政権、当時は為替は1ドル85円台と、今とは逆に円高に苦しんでいた時期で、物価も賃金も上がらないデフレが課題でした。
そこで打ち出したのが“3本の矢”からなる経済政策“アベノミクス”です。
円高やデフレから脱却するための第一の矢として大胆な金融政策を推進、日銀総裁に新たに黒田東彦(くろだはるひこ)さんが就任し、異次元緩和がスタートしました。
その結果、為替は一気に円安が進み125円台に、輸出企業の業績が回復したことなどから日経平均株価は2倍以上に上昇しました、
また円安はインバウンド消費も刺激、海外からの訪日客は急増し、2019年には3000万人を突破しました。
総理在任時に当番組に出演した安倍総理(当時)は次のようにおっしゃっています。
「この道しかないんです。」
「10年間ずっと駄目だったんですから。」
「ピクリとも動かなかった、いろいろな指数が動くようになったじゃないですか。」
「だから私たちはこの道を行くしかないと思いますね。」

この“アベノミクス”の指南役だったのがアメリカのエール大学の浜田宏一名誉教授で、次のようにおっしゃっています。
「(安倍元総理の強みについて、)自分の頭で考えて「円高を解消する場合には金融政策を使わないといけない」と、主体性を持って政策を執行されたところが安倍政治のプラスの面だと思います。」
「(浜田さんが考える“アベノミクス”の効果について、)金融政策で円高を解消して、ともかく“雇用”を増やすということで、雇用者はネット(正味)で500万人増えた。」
「東京ドームが5万人とすれば、それを100個作ったと。」
「これは大きな効果だったと思うんですね。」

2012年から2019年までの7年で雇用者数は500万人増加、失業率も4%台から2%台まで回復しました。
一方で、物価と賃金がともに上昇する「経済の好循環」はいまだに見えていません。
また安倍政権は2014年と2019年の2度にわたり、それぞれ5%から8%、8%から10%へと消費税増税を実行、賃金が上がらない中での増税に国民からは反発も起きました。
更に企業への恩恵となっていた円安も1ドル140円を超え、輸入物価の高騰を招くという弊害が出てきています。
こうした課題にどう立ち向かえばいいのか、浜田さんはイノベーションを起こすための人材育成がカギだと言います。
「「何か自分で違ったことをやろう」という、経営者としても、創業者としても最も重要なところを日本の教育は教えていないんじゃないか。」
「出来る学生をちゃんと育てることが今後必要になってくる。」

今、振り返ってみて、“アベノミクス”は何だったのかについて、解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
これが第二次安倍政権が成立する前の、10年前の日本を襲っていた、いわゆる“6重苦”の図なんですよね。」
「中でも一番大きかったのは超円高の問題だったと思うんですが、それを是正するために金融緩和を行って、実際に円高を是正したというのが最大の“アベノミクス”の成果だと思います。」
「(今は円安の副作用が大きな問題になっているが、第二次安倍政権が発足した)10年前は1ドル80円の超円高で、日本経済は沈没寸前だったんですよね。」
「1つ例を挙げましょう。」
「トヨタ自動車なんですが、2008年のリーマンショック以降、単独決算では4年連続で営業赤字だったんです。」
「その赤字の合計額は1兆4000億円に上ってたんですよね。」
「そうした背景にある超円高を是正して、企業の経営や雇用を回復軌道に乗せた。」
「そこが1番注目したいポイントだと思います。」
「(今は、日本企業は過去最高益となっていますが、儲けが出た分、投資や賃上げに回してこなかったと言われるが、)法人税を引き下げたり、日本主導でTPPをまとめるといった、経済の活性化策を打ち出してはいるんですけども、中々肝心の企業が動かなかったんですよね。」
「でも最近の円安について、ものは考えようなんですが、競争力が回復するという条件にもなる。」
「しかも、サプライチェーンの確保が重要性を増しているということで、ここへきてようやく日本国内の投資というのが見直され始めているというふうに思います。」
「(また労働市場問題もあり、女性や高齢者が働き手となることを後押ししてきた労働政策もあったが、)日本は人口減少の局面にある中で、日本経済が収縮せずに、一応拡大するように向かったっていうのは大きいと思うんですね。」
「やっぱり女性や高齢者、先ほど浜田さんがおっしゃっておられましたが、新規参入が500万人あったお陰ですよね。」
「ただし、課題が残っているんですね。」
「年収100万円を超えた辺りで、税や社会保障の負担がドーンと重くなるという問題がありまして、それが働く女性にとっての大きな壁になっているという指摘は確かです。」

ということで、大きな壁を取り払うのが岸田総理に残された課題とも言えそうです。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

第二次安倍政権が発足した2012年末、当時は為替は1ドル85円台と、今とは逆に円高で物価も賃金も上がらないデフレが課題でした。
そこで安倍政権が打ち出したのが“3本の矢”からなる経済政策“アベノミクス”だったのです。
円高やデフレから脱却するための第一の矢として大胆な金融政策を推進、異次元緩和がスタートしました。
その結果、円高が是正され、以下のようなメリットをもたらしました。
・500万人の雇用の増加
・失業率が4%台から2%台まで回復

一方、安倍政権は2014年と2019年の2度にわたり、賃金が上がらない中で消費税増税を実行しました。
更に企業への恩恵となっていた円安も昨年10月には円の為替レートは1ドル150円ほどまで安くなり、現在も130円程度という状態で輸入物価の高騰を招くという弊害が出てきています。
こうした新たな課題の解決策として、“アベノミクス”の指南役だった浜田さんは、イノベーションを起こすための人材育成がカギだと指摘されております。

そもそも私たちの暮らしを豊かにしていく基本は経済の活性化、成長であり、それを実現するのは人材です。
そして、どんな先進的なテクノロジーも優れた人材から生まれてくるのです。
ですから優れた人材の確保は国策としてとても重要なのです。
そして、その対応策として以下のものが挙げられます。
・少子化対策の強化
・教育方針の変更
  暗記中心から自ら考える思考能力、あるいは独創性を高める内容に変更
・海外から優秀な人材を国内に招き入れるような政策の推進

ところが、第二次安倍政権で打ち出した3本の矢の一つ、成長戦略には社会人の創造性育成(リカレント教育)は含まれていますが、学校の教育方針や海外からの人材獲得については触れられていませんでした。

ともかく“アベノミクス”は円高是正という大きな課題は解決してくれましたが、金融緩和などにより行き過ぎた円安という副作用をもたらし、物価と賃金がともに上昇する「経済の好循環」という課題の解決はそのまま現政権まで持ち越しとなった状態が続いています。
そうした中、現在の岸田政権は人材関連で少子化やリスキリング(参照:アイデアよもやま話 No.5401 今、注目されているリスキリング!)に関する政策は打ち出していますが、最も肝心な教育方針については触れられていません。

人材の育成は「国家100年の計」であり、永遠の課題です。
そして優秀な人材の確保は国家のあらゆる政策のベースとなるものです。
ですから、現政権も含めて、これから引き継がれる政権には、人材の育成、および海外も含めた優秀な人材の確保、およびこうした人材の活躍の場を提供出来るような環境づくりに努めていただきたいと願います。

なお、人材の育成は国だけに依存するものではありません。
これまで「経済の好循環」が上手く回らなかった要因は企業側にもあったのです。
企業も従業員をコストと見なすのではなく、重要な資源と見なし、積極的にリスキリングに取り組むことが求められるのです。(参照:アイデアよもやま話 No.5452 人への投資で見劣りする日本企業!

 
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