2022年11月25日
アイデアよもやま話 No.5435 空飛ぶクルマの最前線!
9月18日(日)放送の「BS1スペシャル」(NHKBS1)で「激烈!開発競争 空飛ぶクルマ」をテーマに取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、この番組は1月30日放送の再放送です。

2020年夏、日本の空に画期的な乗り物が登場しました。
アメリカでも不思議なかたちの機体が空を飛びました。
スロバキアではスポーツカーに翼が生え、空を滑走しました。
過去や未来にタイムマシンで行くバック・トゥ・ザ・フューチャー、クルマが空を飛ぶのはSF映画でおなじみですが、それが今現実になろうとしています。
開発を進めるベンチャー企業、現在、世界各国で400を超える企業が一早く実用化をしようと空飛ぶクルマの開発を競っています。
空を飛ぶ新しい機体、eVTOL(Electronic Vertical Take-Off and Landing aircraft、イーブイトール 電動垂直離着陸機 こちらを参照)、垂直に離着陸出来る電動の乗り物です。
飛行機のように滑走路は必要なく、エンジンも搭載されていません。
クルマのように手軽に空を走ることから“空飛ぶクルマ”と呼ばれています。

中国のメーカーでは既に大量生産が始まり、テーマパークで遊覧飛行が行われています。
しかもパイロットがいない自動操縦です。
ドローンの開発に伴うバッテリーやセンサーの進化で誰もが個人で簡単に空を飛べる日が近づいています。
最先端技術を投入して繰り広げられる激烈な開発競争、番組ではその最前線を見つめました。

空の主役、飛行機は地球温暖化に影響を及ぼす航空用のガソリンが燃料で、滑走路も必要です。
ヘリコプターはヘリポートが必要で騒音も大きく、値段も高価です。
一方、空飛ぶクルマは電池(バッテリー)が動力源、持続可能なエネルギーで垂直にどこでも離着陸出来るのです。

一口に空飛ぶクルマと言っても、機体のかたち、大きさ、乗車人数、飛行距離など様々です。
個人所有を前提にした飛行距離の短いもの、空のタクシーを想定した大型で飛行距離の長いもの、どの市場をターゲットにするかで機体の大きさは変わります。
電動で垂直離着陸という共通点を除けば、プロペラの数や位置、翼の有無までデザインも異なります。
全く新しい乗り物の開発、現時点では決まったかたちは未だないのです。
交通渋滞が激しいクルマ社会、アメリカでは渋滞を解消する手段として空飛ぶクルマへの期待が高まっています。

アメリカのメーカー、Joby Aviationが開発した5人乗り(パイロットを含む)のエアタクシー(こちらを参照)は後続距離240km、最高速度は320km/hです。
4つの翼と角度を変えられる6基のプロペラが特徴です。
プロペラを水平にして下に空気を押し出しながら離陸、その後プロペラの角度を前に倒して飛びます。
プロペラを垂直に倒せば、翼の力も借りて効率的な長距離飛行が可能になります。
郊外への移動手段、また都市と都市の間をつなぐエアタクシーとして開発されました。
Joby Aviationの戦略を担当するジャスティン・ラングさんは次のようにおっしゃっています。
「私たちのビジネスモデルは、機体を開発・製造し、自ら運営もして、顧客に直接エアタクシーのサービスを提供することです。」
「今や、私たちはものすごい時間を渋滞で無駄にしています。」
「通勤や友人家族に会いに行く時もです。」
「私たちのクルマなら渋滞を抜け出し、5倍の速さで目的地に到着します。」
「私たちの使命は、10億人に毎日1時間を節約させることです。」

ヨーロッパの大手航空機メーカー、European Rotorsも2021年11月にこの分野への参入を決めました。
ボーイングと旅客機のシェアを二分するフランスのAirbus(エアバス)です。
エアバスが2021年秋に発表した「City Airbus Nextgen」(こちらを参照)は4人乗りエアタクシーで航続距離80kmほどの短い距離の輸送を担う機体で、最高速度120km/h、大きな翼を搭載しました。
エアバス エアモビリティ部長のマーカス・メイさんは次のようにおっしゃっています。
「数百社が空飛ぶクルマの市場に参入していますが、どんな仕様のクルマが正しいのかまだ明確ではありません。」
「少しずつ市場が進化して最初はニッチな市場がiPhoneやEVのように巨大なマーケットに成長するのを期待しています。」

日本のベンチャー企業、スカイドライブ(参照:アイデアよもやま話 No.4820 ”空飛ぶクルマ”、日本初の「有人飛行」!)が未来を予想したCG映像では、自家用の空飛ぶクルマで鎌倉の自宅から東京・六本木のオフィスまで渋滞を避け、20分で到着出来ます。
最終ゴールは道路も走れる2人乗りの機体ですが、現在の技術では一気にそこにはたどりつけません。
次の事業目標を2025年開催の大阪万博での遊覧飛行と定め、機体の開発を進めることにしました。
2021年11月、東京・新橋、「令和三年度 空の日 日本航空協会表彰式」が日本航空協会主催で開催されました。
そこでスカイドライブは「空の夢賞」を受賞しました。
航空・宇宙に対する夢や希望を与えた団体に贈られる名誉な賞です。
福澤知浩社長は受賞のスピーチで次のようにおっしゃっています。
「空飛ぶクルマっていろんなものがあるんですけども、我々の一番の特徴としてはコンパクトさを追求していこうと思っています。」
「コンパクトになると、最終的にコンビニやガソリンスタンドから気軽に空に飛んで行けるというふうになっておりまして、最初はパイロットがいてお客様1人、そしてその5年以内にはパイロット不要でお客さんが2人乗って、完全自動運転を目指していこうと思っております。」

もう一社、同じく「空の夢賞」を受賞したベンチャー企業があります。
テトラ・アビエーションで中井佑CEOは受賞のスピーチで次のようにおっしゃっています。
「本日、30分で100km移動する空飛ぶクルマをご紹介していきたいんですけども、飛行機は一般的に300〜400kmをひとっ飛びで移動出来る乗り物と思われるかもしれませんが、我々の開発するクルマ、eVTOLはより細かい分散的輸送を担うというふうに考えております。」
「例えばここから前橋や宇都宮の距離にある工場であったりとかに直接東京から飛んで行きたいと思った時に使えるモビリティを目指しています。」
「最終的にはこれを量産していくことで空の原付のように皆さんに乗っていただいて、近所のスーパーマーケットの立体駐車場などから目的地まで気軽に飛んで行けるモビリティを作っていきたいなと考えております。」

「空の夢賞」を受賞したテトラ・アビエーション、代表の中井さんが2018年に立ち上げた空飛ぶクルマの開発メーカーです。
30代前半の若手エンジニアたち、8人だけで運営しています。
中井さんも空飛ぶクルマの最初のイメージは幼い頃に観た映画「フィフス・エレメント」から得ました。
中井さんは、あるコンテストがきっかけで空飛ぶクルマの世界に飛び込みました。
東京大学の大学院生だった頃、ボーイングが主催する空飛ぶクルマのコンテストの存在を知り、参加することにしたのです。
有志達と練った独創的なデザインの機体を開発しました。
2年の開発期間を得て、小型の空飛ぶクルマの開発に成功しました。
世界から参加した824チームの中で見事受賞に輝きました。
その賞金を元手に中井さんたちは事業化に向けた新しい機体の開発を始めました。
コンテストに出したモデルとかがらりと違ったデザインに変え、前後に大きな翼を搭載することにしました。
コンパクトさを妥協する代わりに航続距離を伸ばして、売れる機体を作ろうという狙いです。
新しい機体「MK−5」(こちらを参照)は前後4枚の翼とその周りの33枚のプロペラで1人乗り、航続距離は100km以上、最高速度は160km/hです。
カリフォルニアで試験飛行と顧客向けのデモ飛行を行いました。
国土の広いアメリカで、新しい移動体験に飢えている富裕層をターゲットにまずは事業を展開します。
既に200件以上の問い合わせがあり、今年中の納品を予定しています。
中井さんは次のようにおっしゃっています。
「僕らがやっている領域ってもともと市場が存在するマーケットじゃないんです。」
「(空飛ぶクルマで)時間をぐっと縮められるし、その浮いた時間で何でも好きなことが出来るんですっていうのがどれだけ人に受け入れてもらえるかは分からない。」
「ある種、無謀な賭けに見えるかもしれないんですけど、僕はそういう移動体験って人の根源からするとあると思っていて、そこを信じて開拓しています。」

空にゆっくりと浮かぶ不思議なかたちの乗り物、これも空飛ぶクルマ、eVTOL、「Opener “BlackFly” 」(こちらを参照)、テトラの中井さんと同じくアメリカの富裕層の個人所有を狙った1人乗りの機体で、航続距離は65km、最高速度は130km/hです。
ウルトラライトプレーン(超軽量動力機 115kg以下(アメリカ) 180kg以下(日本))に分類されるため、パイロットライセンスは不要です。
グーグルの創始者の一人、ラリー・ペイジさんも出資する期待の企業、Openerが開発しました。
作ったのはカナダ出身のエンジニアでOpener(オープナー)のCEO、マーカス・レンさんです。
製造業の会社を引退した後、子どもの頃からの夢だった空飛ぶクルマの開発を始め、シリコンバレーで起業しました。
レンさんは次のようにおっしゃっています。
「「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が大好き、素晴らしい映画です。」
「従業員用にそのモットー「未来に道はいらない」と書いたTシャツを作ったくらいです。」

作り上げた機体を「BlackFly(黒バエ)」と名付けました。
胴体の底を丸くデザインした独特の設計とプロペラの角度で効率のいい離陸と着陸を可能にしています。
レンさんは次のようにおっしゃっています。
「黒バエは空力学的に非常に優れた生き物です。」
「鳥や空を飛ぶ哺乳類が恥ずかしくなるくらいです。」
「あの大きさでものすごいスピードと俊敏性を持っている。」
「それで「BlackFly(黒バエ)」と名付けたんです。」

この最終モデルに到達するまでには8年の開発期間を費やしました。
レンさんは次のようにおっしゃっています。
「これが初めて作って飛ばした機体です。」
「世界初の電動垂直飛行でした。」
「自宅の地下で作り始め、電気工作はリビングルームで、モーターは台所で作りましたね。」
「初飛行は劇的ではありませんでした。」
「60mくらいの距離を1.5mくらい浮かんだだけでした。」
「機体を作るための部品は何一つ存在しなかったので、自分たちで全て設計して作りました。」

既に大量生産が始まり、1日1台を生産中で、今年中に販売を開始します。
機体をキットで販売し、購入した人は30分で組み立てが可能です。
価格は自動車のSUVと同じくらいの数百万円を想定しています。
飛行訓練のシミュレーションを行える施設も整えました。
超軽量の機体でパイロットライセンスは不要ですが、購入した人は安全に飛行出来るように十分な訓練を受けられます。
レンさんは次のようにおっしゃっています。
「本当に必要なのは個人で飛べる乗り物です。」
「エアタクシーは発着場が必要で、そこまでいかないと飛べません。」
「個人で乗れる機体があれば、行きたい場所にそのまま飛んで行けます。」
「それこそみんなが本当に望むものです。」

中国でも空飛ぶクルマの開発は進んでいます。
注目の企業、eHANGはスカイドライブと同じく小型の機体開発に集中、既に乗客を2人乗せて飛ばすことに成功しています。
「eHANG“216”」(こちらを参照)で、航続距離は35km、最高速度は130km/hです。
eHANGの戦略を担当するエドワード・スウさんは次のようにおっしゃっています。
「我々は最初から自動運転を成し遂げています。」
「それが他社と圧倒的に違う点です。」

ドローンの先進国である中国は、発達したGPSやセンサーの機能を活用し、自動操縦の技術を高めています。
この機体を使って様々なイベントやテーマパークなどで実際にお客さんを乗せて遊覧飛行を始めています。
eHANGは空飛ぶクルマが世界的な新しい産業となることを見越し、自動操縦の安全性を高めるため、開発を加速させています。
eHANGが描く近未来の世界、ビルの屋上には発着用のポートが作られ、駐機場では機体が充電されます。
機体は空の上の決められたルートを航行し、市内の至る所に用意されたポートに着陸するのです。
事故を防ぐため、全ての機体の動きはコントロールセンターで誘導・管理されます。
このネットワークで中国全土、そして地球全体を覆ってしまおうという構想です。
コントロールセンターは既に中国で実際に建設され(広東省)、小型のドローンを使った試験運転が始まっています。
広東省の雲浮市には生産工場が作られました。
年間で600機もの生産が可能です。
既に160機がテーマパークなどに販売されました。
スウさんは次のようにおっしゃっています。
「中国政府は我々の新しい技術にとても寛容で支持してくれます。」

さて、スカイドライブは進化が速い世界の先端技術に負けないため、2人乗りの機体の設計を急ピッチで進めていました。
スカイドライブは新しい機体の開発に協力してくれるパートナー会社、東レ・カーボンマジック株式会社(滋賀県米原市)と機体の共同開発に取り組むことになりました。

東レ・カーボンマジックは炭素繊維、カーボンを使った製品や部品の製造で世界のトップを走る企業です。
カーボンはバイクやレーシングカーなど、あらゆる乗り物に使用されています。
アルミなどの金属よりも軽くて丈夫なため、軽量化と安全性を追求する空飛ぶクルマには最適な素材となります。
レーシングカーの製造などで培ったノウハウを生かして機体の開発に取り組むのです。
スカイドライブが設計したデザインを基に東レ・カーボンマジックの技術者たちが強度や安全性の解析を行っています。
コンピューターによる解析だけでなく、実際のコックピットを再現することで居住性や使い易さの検討も開始しています。
3年後の大阪万博に向け、日本の技術の粋を結集させます。
スカイドライブのCEO、福澤さんは次のようにおっしゃっています。
「僕たちのビジョンは「空を走ろう」というふうに言ってるんですね。」
「「空を走ろう」というのは、走るぐらいに日常的に簡単に高価でなく、空を使って自由に移動出来る。」
「これが空飛ぶクルマのかたちと決まってないので、本当に自由に設計出来るので、そこを進めていきたいと思っていますね。」

自宅のガレージから渋滞を気にせず、好きな場所に気軽に飛んで行ける未来、その実現に向けて世界で空飛ぶクルマの激しい開発競争が繰り広げられているのです。
便利で排気ガスを出さない、持続可能な社会へ。
移動革命は私たちの目の前で起きているのです。

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、10月1日(土)放送の「NHKBSプレミアム」(NHKBSP)で「ついに未来がやってきた!空飛ぶクルマ大全集」をテーマに取り上げていたので、先ほどの9月18日に放送された番組では紹介されていなかった、空飛ぶクルマの開発に携わる世界のベンチャー企業に焦点を当ててご紹介します。

プロペラタイプのクルマは世界で作られているんですが、その中でも次のようなクルマもあります。
ドイツ南部の小さな町、ブルッフザール、ここに専門家が世界で最も早く実用化に成功すると見ているメーカー、Volocopter(ボロコプター)があります。
第二次世界大戦の頃から使用されている格納庫の中に収められていたのが21世紀最先端の機体です。
10年の開発期間をかけてきた空飛ぶクルマ(こちらを参照)、一見ヘリコプターのようにも見えますが、大きな丸いフレームに18個の小さなプロペラが付いています。
2011年創業、代表のフロリアン・ロイターさんは次のようにおっしゃっています。
「技術の成熟度において、我々は業界のパイオニアであり、リーダーと呼ばれています。」

このメーカーでは既にテスト飛行を1500回以上重ねてきました。
ポイントは9個の独立したバッテリーで動く18ものプロペラ、数を増やしたのは一部のプロペラが故障しても飛行に支障が出ないようにするためです。
実際に都市の中を飛ぶことを想定した訓練も既に行われています。
街の至る所にポートを設置し、近距離を移動するタクシーを目指しています。
10年後にはエアタクシーを利用しているでしょう。
そして50年後にはエアタクシーしか存在していないかもしれません。

世界では様々なメーカーが翼のついた空飛ぶクルマ、エアタクシーを開発しています。
アメリカのベンチャー企業、Joby Aviation(ジョビー・アビエイション)のエアタクシー(こちらを参照)には大きな4つの翼と向きを変えられる6つのプロペラが付いています。
プロペラの向きを水平にして垂直に離陸、プロペラを斜めに倒して前進、更に倒せば翼の力も借りて長距離飛行も出来ます。
エアタクシーはパイロットも含めて5人乗り、航続距離は240km、最高速度は320km/hです。
戦略担当のジャスティン・ラングさんは次のようにおっしゃっています。
「今や私たちはものすごい時間を渋滞で無駄にしています。」
「私たちの使命は10億人に毎日1時間を節約させることです。」

続いて大手航空機メーカー、エアバスも空飛ぶクルマの開発競争に参戦、開発したCity Airbus Nextgenと名付けたエアタクシー(こちらを参照)はパイロットも含めて4人乗り、航続距離は80km、最高速度は120km/hです。
主翼に付いたプロペラで垂直に離陸し、尾翼に付いたプロペラで前進するデザインです。
エアモビリティ部長のマーカス・メイさんはその狙いについて次のようにおっしゃっています。
「私たちは空港から街までの近距離や都市の中での2点を結ぶ輸送に焦点を当てています。」
「それに適したデザインに決めました。」

続いて、ドイツのベンチャー企業、Lilium(リリウム)が開発するエアタクシー、Lilium Jet(こちらを参照)は大小4つの翼と36個の小さなプロペラでパイロットも含めて7人乗り、航続距離は300km、最高速度も300km/hを実現しました。
内部も豪華なラグジュアリー仕様、これは快適な空の移動を楽しめそうです。

こうした海外の空飛ぶクルマメーカーの動きについて、日本の空飛ぶクルマメーカー、テトラ・アビエーションの中井CEOは次のようにおっしゃっています。
「(強力なライバルではないかという問いに対して、)そうですね、技術的には強力なライバルだなと感じるところはあると思います。」
「ただ、実際に現場で非常に活発に技術交流もしていますし、エンジニア同士もよく話しています。」
「このマーケットって、やっぱり自分たちだけが製品を成立させても大きくならないので、こういった大きな多くのメーカーが参入して、ネットワークを作っていって下さることで我々もそういったところで貢献出来ますし、協調して仲間としてやっていってます。」

「(国際的な開発基準について、)」今、我々が開発している基準はアメリカの基準になってるんですけど、日本の基準とヨーロッパの基準とそれぞれ違うんですね。」
「とは言え、その空飛ぶクルマって今までどの国も、どの地域も実現したことがないっていうマーケットなので、皆さん規制ルールを作られる側もなるべく同じようにしよう、そうでないと世界中で使ってもらえないし、マーケットが広がらないということで、今、ルール側もそういう調整を頑張っているところです。」

いろいろな空飛ぶクルマをみてきましたが、プロペラタイプでもない、翼タイプでもない、これまでとは全く違う原理のものも生まれてきているのです。
オーストリアのリンツにあるメーカー、CycloTech(サイクロテック)、まるでF1カーのような見た目ですが、よく見るとタイヤではなく、ドラム上の得体の知れないものが4つというかたちをしています。(説明はこちら、動画はこちらを参照)
実験開始、4つのドラムが回転し始めると、なぜか浮かび上がりました。
更にスッと横に移動しました。
上下左右、どの方向にも自由自在だといいます。
秘密はドラムの中に入っているブレード、5枚のブレードはコンピューター制御で1枚1枚独立して動かせるようになっていて、ドラム全体が回転します。
ブレードの動きとドラムが回転する軸をコントロールすることで、気流の向きが変わり、自由自在に空中を動けるといいます。
CEOのハンス・キンスキーさんは次のようにおっしゃっています。
「狭くて込み合った空間での正確な操縦やピンポイントの着陸が可能です。」

更に2022年の販売が既に決まっている空飛ぶクルマもあります。
スウェーデンのJetson(ジェットソン)が開発した「Jetson One(ジェットソン・ワン)」(こちらを参照)、小型で軽量、1人乗りで飛行時間は20分、最高速度は102km/hです。
バイクのように気軽に乗ることが出来る、個人で所有するレジャー用の空飛ぶクルマです。
間もなく販売を開始し、既に世界中から170機の受注を受けているといいます。

しかし、空飛ぶクルマと呼ぶからにはやっぱり道路も走りたい、そこにこだわり続ける開発者がします。
一見スポーツカー、それが変形して翼を広げ、トランスフォーム、そして滑走路を走り、何とそのままテイクオフ、スロバキアのメーカー、klein Vision(クレイン・ビジョン)の「エアカー」(こちらを参照)は2人乗り、ガソリンエンジンを搭載し、航続距離は1000km、最高速度は300kmです。
どんな人が他のものとは大きく違う空飛ぶクルマを生み出したのでしょうか。
スロバキアのとある地方空港の格納庫、CEOのステファン・クレインさんは25年の歳月を費やし、2020年、「エアカー」を完成させました。
「エアカー」の操縦席に座ったクレインさんは次のようにおっしゃっています。
「クルマのハンドルと飛行機の操縦かんを兼ねています。」
「こっちが飛行機のスロットルです。」
「そしてこっちがクルマのシフトレバー、ギアは6速あります。」
「私はパイロット一家に生まれ育ちました。」
「祖父はパイロットで、父もその後を継いだのです。」
「幼い頃は空港が私の遊び場でした。」
「将来、航空デザイナーやエンジニアになろうと思っていました。」
「夢はクルマと飛行機を融合させること。」
「クルマと飛行機、それぞれに利点があるので、移動するならこの2つの世界をつなげれば良いと思ったのです。」

デザインと工学を学んだ後、長年の夢だったクルマと飛行機の融合に挑みました。
こだわったのは道路を走るクルマの機能を備えたまま空も飛べる機体、電動で垂直離着陸を目指す他社とは一線を画すコンセプトです。
クレインさんは次のようにおっしゃっています。
「高度な空気力学を使いたいので、このデザインで進めています。」
「私にとって飛距離が最も大事なので、効率よく、速く飛べる機体が理想なのです。」

自宅のガレージから運転して道路を走り、平らな場所が50mあれば芝生の上でも離着陸が可能、しかもボタン1つでわずか3分で飛行機からクルマに変身出来ます。
2022年1月、スロバキア国内で飛行出来る耐空証明を取得しました。
既に受注を開始、2023年後半には納入を開始する予定です。

空飛ぶクルマの開発を巡るこうした世界的な動きについて、サイエンスプロデューサーの米村でんじろうさんは次のようにおっしゃっています。
「すごい展開が今始まって。」
「よくカンブリア爆発っていう言い回しがありますけど、カンブリア紀に急速な進化的爆発があったという説があるわけですけど、進化というのはものすごい年月を、何億年みたいなことをかけて、最初は昆虫、50センチもある巨大なトンボが飛んでたり、そうやって進化してくる、淘汰されながら。」
「だから今ちょうどカンブリア爆発に例えていいのかどうか分からないですけども、空飛ぶクルマの進化的な爆発、僕たちが目撃者になっているんじゃないか。」

実用化がすぐそこまで迫っている空飛ぶクルマ、この新しい技術がもたらす移動革命は私たちにどんな未来を運んで来てくれるのでしょうか。
そして、最前線で空飛ぶクルマを開発している日本のメーカーのお二人はどんな未来を夢見ているのでしょうか。
スカイドライブの福澤CEOは次のようにおっしゃっています。
「1920年頃にクルマにみんなが乗り出したとか、飛行機に乗り出したとかあって、今ちょうど100年経ったんですね。」
「それまでは馬に乗って糞尿の処理をしてて大変だったのが、もう今はみんなクルマに乗っていますと。」
「それと同じように渋滞とか満員電車で大変というのがこの先一気に無くなっていって空を自由に飛んで、あの頃は大変だったなという時代が来るっていう、そんな転換期を作っていきたいなと思っています。」

またテトラ・アビエーションの中井CEOは次のようにおっしゃっています。
「もしかしたら自分では予想していなかったところに連れて行ってくれるようま、本当に行きたかったところに連れて行ってくれるような世界を実現したいなと思っています。」
「で、今の自分たちの生活でも、例えばケガをしてしまって足、歩くのが難しくなってしまったりとか、忙しくて時間が取れないということで移動が出来ない、移動の不自由さを感じている方が多いと思います。」
「そういった不自由さのない、行きたいところにいつでも行けるような未来を作っていきたいと思っています。」

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

なお、今回ご紹介してきた空飛ぶクルマ一覧を作ってみました。(こちらを参照)
こうしてみると、今のところ、その用途は大きく個人向けと少人数のエアタクシーに大別されます。
そして、その形状もいろいろです。
中には水上に着陸出来るタイプもあります。
また、その多くは自動運転を目指しています。
そして早いものでは今年中に納品予定といいます。
またユーチューブをのぞいてみると、この他にもいろいろなタイプの空飛ぶクルマが世界中で開発中のようです。
空飛ぶクルマ時代の到来はすぐそこまで来ているのです。
ということでサイエンスプロデューサーの米村でんじろうさんが指摘されているように、空飛ぶクルマは百科騒乱で今まさにカンブリア爆発を起こしており、これからも多種多様の空飛ぶクルマが生まれてくると期待出来ます。
そして私たちはその目撃者になろうとしているのです。
私も目撃者の一人として、とても楽しみにしています。
そして1日も早く空飛ぶクルマに試乗してみたい気分です。

 
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