2022年10月29日
プロジェクト管理と日常生活 No.769 『ロシア支配地域での住民投票で高まる”核”使用リスク』
9月23日(金)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)でロシア支配地域での住民投票について取り上げていたのでご紹介します。 

“茶番”、ウクライナのゼレンスキー大統領がこう表現したのが、ロシアが一方的な併合を狙う地域で始まった住民投票だとする活動です。
9月23日、ウクライナの東部や南部にある、ロシアが支配する地域で始まりました。
ドネツク州の親ロシア派リーダーは次のようにおっしゃっています。
「住民投票の初日を迎えた。」
「ロシア編入に賛成を。」

ロシアのプーチン政権がウクライナで支配する地域の一方的な併合を狙う中、親ロシア派勢力が東部ドネツク州やルハンシク州などで住民投票だとする組織的な活動を開始しました。
アメリカのシンクタンクは、ウクライナ当局などの情報として、ルハンシク州ではロシア側が武装グループを結成し、住民投票に参加させるために戸別訪問を行っているなどと警告しています。
そのルハンシク州の住民によりますと、「ロシアの一部になることを支持するか」という質問への賛否を回答することになっているということです。
この住民は次のようにおっしゃっています。
「投票所には行きたくありませんが、もし彼ら(ロシア側当局者)が家に来たら(投票するしかない)。」

住民投票だとする活動にウクライナ側は強く反発しています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は8年前に住民投票の結果を根拠にプーチン大統領が南部クリミアを一方的に併合したことを挙げて、次のようにロシアを避難しています。
「占領地での偽りの住民投票という茶番は2014年にクリミアで起きたことと同じ。」
「実施されれば、ロシアは外交交渉の可能性を自ら葬り去ることになる。」

また、大部分がロシアに占領されている東部ルハンシク州の要衝、セベロドネツクのストリュク市長は次のようにおっしゃっています。
「ロシア側は「住民投票」の日に個人情報と引き換えに支援物資を配ると発表している。」
「投票したくない人を買収するものだ。」

そのうえで、“ロシア側が市民の行動を厳しく監視する中で自由な投票など不可能だ”と非難し、投票に正当性はないと訴えています。

そのウクライナ情勢を巡り、9月22日に開かれた国連安全保障理事会の閣僚級会議でもロシアは頑なな姿勢を崩しませんでした。
アメリカのブリンケン国務長官は次のようにおっしゃっています。
「プーチン大統領は今週、国連に世界の多くの国が集まっている時に戦争拡大を選択した。」
「国連憲章や国連総会、安保理をないがしろにしている。」

アメリカのブリンケン国務長官が厳しくロシアを非難していた時、席についていなかったロシアのラブロフ外相は自らの発言の直前に議場に現れ、あらためて軍事進攻を正当化しました。
「ウクライナはロシアの安全保障を脅かす「反ロシア」の役割を担ってきた。」
「ロシアは決して容認しない。」

そして発言の後、イギリスのクレバリー外相が話始めると、ラブロフ外相は席を立ち、議場を後にしました。
この時、クレバリー外相は次のようにおっしゃっています。
「ラブロフ氏の退場は驚くことではない。」
「各国の非難を聞きたくなかったのだろう。」

各国の批判に耳を傾けようともしないロシア、事態打開の糸口は見えません。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

なお、こうした情勢の中、9月24日(土)放送の「報道特集」(TBSテレビ)でロシア支配地域での住民投票で高まる”核”使用リスクについて取り上げていたのでご紹介します。

ロシアが占領したウクライナの地域で住民投票をこのタイミングで実施したロシアの狙いについて、防衛省防衛研究所の長谷川雄之さんは次のようにおっしゃっています。
「戦闘地域ですのでウクライナ軍が引き続き領土奪還のために動くと思うんですけど、今後もし強制的に編入されれば、ウクライナの(4州に対する)攻撃は、ロシア本土に対する攻撃とみなして、ロシアとしてはより強硬な反発に出るのではないかと思いますね。」
「核のリスクが非常に高まっているというところで、戦術核なりを使用する可能性を十分に懸念しているというところですね。」

以上、番組の内容に一部をご紹介してきました。

いよいよロシアは、ロシアにより支配されている領土の奪還に向けて勢いづいているウクライナに対して、場合によっては戦略核使用も選択出来るように支配地域での住民投票を行い、一方的にこれらの地域をロシアの領土として併合しようとしたのです。
そして、実際に9月30日、プーチン大統領はウクライナ東部・南部4州(ドネツク州、ルガンスク州、ザポリージャ州、ヘルソン州)の併合を宣言してしまったのです。
この併合はロシア連邦議会によって承認され、プーチン大統領は10月5日、これら4州をロシア連邦に編入するための「条約」の批准法案と国内法改正案に署名し、ロシア連邦としての法的手続きを完了しました。(こちらを参照)

こうしてロシアによる一連の動きは、逆算すれば今後圧倒的に形勢不利になった場合を想定して、プーチン大統領がいざという場合には戦術核を使用出来るように4州の併合を急いだと読み取れます。
いずれにしてもロシアによる4州の強引な併合は、一気にロシアによる戦術核使用のリスクを一気に高めてしまったのです。
そして、実際にこのリスクが現実のものとなれば、第三次世界大戦勃発のリスクも高まってしまいます。(参照:プロジェクト管理と日常生活 No.758 『ロシアによるウクライナ侵攻で高まる第三次世界大戦勃発リスク!』
ですから、何としてもロシアによる戦術核の使用リスクを抑止することが国際的に求められるのです。
そうした中、注目すべきはロシア国内における以下の2つの現象です。
・ロシア国内で広がりを見せているウクライナ侵攻の反対デモ
・ロシア軍の士気の低下、および十分な戦闘訓練を受けた兵力不足

この2つの現象、およびロシアへの更なる経済制裁が相まって、ロシア国内で反プーチンの動きが加速してプーチン大統領が辞任に追い込まれるようなことがあれば、一気にウクライナ侵攻は収束に向かうと期待出来ます。
なぜならば、そもそもプーチン大統領個人の独断によりウクライナ侵攻は始まったからです。
ですから、こうしたロシア国内のこうした動きを加速させるような国際的な取り組みが最もロシアによる戦術核の使用、更には第三次世界大戦勃発のリスクを発生させないで済む対応策として有効ではないかと思われます。

 
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