2022年08月13日
プロジェクト管理と日常生活 No.758 『ロシアによるウクライナ侵攻で高まる第三次世界大戦勃発リスク!』
5月15日(日)付けネット記事(こちらを参照)でロシアによるウクライナ侵攻で高まる第三次世界大戦勃発リスクについて取り上げていたのでその内容の一部をご紹介します。 

・ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアの核兵器使用に対する懸念が強まっている。きっかけは、プーチン大統領やラブロフ外相から核使用を示唆する発言が相次いだことに加え、ロシア軍が核抑止力部隊を高レベルの警戒態勢に置いたほか西部カリーニングラード州で核兵器搭載可能なミサイルの模擬発射が行われるなどロシアの挑発的な行動が続いたことだ。
・4月28日放送のロシア国営テレビの政治討論番組「60分」で、ゲストとして招かれた極右民族主義政党「自由民主党」下院議員で、下院国防委員会第1副議長も務めたアレクセイ・ジュラブリョフ氏は、ウクライナに対して軍事支援している英国への核攻撃の可能性について触れ、4月に発射実験が成功した新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」1発で「島国英国はなくなる」と発言した。サルマトは1発に10の核弾頭が搭載可能とされるロシア最大級のICBMだ。
・これに対し、同番組司会者で与党「統一ロシア」下院議員のエフゲニー・ポポフ氏は「英国にも核兵器がある。(核の応酬で)誰も生き残れない」と指摘したが、同じ司会者のオリガ・スカベエワ氏(ちなみにポポフ氏の妻でもある)はカリーニングラードから発射された核ミサイルが西欧の主要都市まで届く時間はベルリンで106秒、パリで200秒、ロンドンで202秒であると画面で地図のイラストを示しながら、ロシアの迅速な核攻撃能力を強調した。
・そもそもロシアはなぜ、核使用の可能性を強調するのか。ロシア外交問題評論の第一人者で、カーネギー財団モスクワ・センターのドミトリー・トレーニン所長は、その理由を北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間の戦力の「不均衡」にあると指摘する。トレーニン氏は旧ソ連、ロシアの軍・国防省での勤務経験のある外交専門家で邦訳された著作もあり、「ロシアと日本の相互理解の強化で多大な貢献をした」として旭日中綬章も受章している。
・独立系メディア「メドゥーザ」によると、ウクライナとの戦争でロシアが限定的に使用すると想定される「非戦略核兵器」は推定約800〜1900発と幅があるが、運搬手段であるロケットの数を考慮すると、実際に使えるのは520〜550発以下とされている。
・一方、ヘインズ米国家情報長官は5月10日、上院軍事委員会の公聴会でロシアがウクライナとの戦争で敗北すれば、プーチン氏が自らの体制への危機とみなし核使用に踏み切ることもありうるとの見解を示した。
・ロシア科学アカデミー安全保障問題研究センターのコンスタンチン・ブロヒン主任研究員はニュース専門サイト「ガゼータ・ルー」に対して、核使用を巡る一連の発言は「相手に心理的な圧力」をかけるための脅しに過ぎないと評価している。ウクライナへの西側の支援や、フィンランド、スウェーデンのNATO加盟論議の高まりを背景にした動きだが、いったん核を使用すれば人類史での「最後の戦争」になる公算が大きく、ロシアが核を使うのは「モスクワの目前まで敵が侵攻するなど」極めて危機的な状況に陥った場合のみであると指摘した。
・別の見解もある。核問題を巡るメドゥーザの特集記事の中で、国際安全保障を専門とする政治学者パーベル・ルジン氏は、(1)包括的核実験禁止条約の結果、ロシア軍に実際の核の破壊力について自らの経験として知っている指導者はいない(2)戦術核として開発された低出力の核兵器などの出現により、核使用の閾値が下がっている―などの事情を挙げ、クレムリンは核使用を選択肢の一つとしてとらえており、決断を下す人物(現在はプーチン大統領)の個人的、心理的側面が大きな決定要素になると強調した。
・一方でルジン氏は、非戦略核兵器は大半が平時には専用の保管施設にあり、実際の使用には多くの人員を動員してミサイル発射施設まで移動させる必要性があるほか、空軍や海軍、発射施設があるそれぞれの軍管区の多数の将校、兵士も関与することになり、そのいずれかの段階で、大統領の攻撃指示が無視され核兵器使用に至らない可能性もあるという。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

なお、2月28日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、ロシアの国防省はプーチン大統領に対し、核戦争の部隊が戦闘体制に入ったと報告したと報じています。

ですから、プーチン大統領はウクライナ侵攻前から既に核兵器をいつでも戦闘に投入出来るように準備していたわけで、プーチン大統領はこれまで核兵器は核戦争勃発の抑止力とされていた”パンドラの箱“をこじ開けてしまったのです。

しかも、ICBM「サルマト」1発で「島国英国はなくなる」というほど核兵器の威力は格段に向上しており、カリーニングラードから発射された核ミサイルが西欧の主要都市まで届く時間はベルリンで106秒、パリで200秒、ロンドンで202秒であるといいます。
ですから、なんらかのきっかけでプーチン大統領が突然“核のボタン”を押すようなことを想定すれば、ヨーロッパの国々は国の存続を危うくするほどの脅威を感じるのは当然のことです。
しかも、“核のボタン”が押されてから核爆弾が届くまでの時間は5分足らずなのですから反撃するだけの時間的余裕はないのです。

こうした事態に陥れば、当然NATOに属するアメリカがロシアに反撃することは間違いありません。
そうなれば米軍基地のある日本も被害を被ることは避けられません。
まさに第三次世界大戦の勃発です。

そこで気になるのは中国の動きですが、3月16日(水)付けネット記事(こちらを参照)でこのテーマについて取り上げていたのでその一部をご紹介します。

・ウクライナ危機が収束しません。ウクライナ軍の予想以上の抵抗に遭い、「苦戦」を強いられているとされるロシア軍ですが、首都キーウ(キエフ)を陥落させるべく、軍事侵攻をやめません。4回の停戦協議が行われたものの、糸口は探し出せていません。
・ そんな中、中国がロシアに軍事支援するとなれば、ロシアとNATO(北大西洋条約機構)間のパワーバランスに影響を与え、危機はさらに深刻化するのではないか、という懸念が市場や世論で巻き起こっていきます。
・中国とロシアの軍事関係というのは「運命共同体」といっても過言ではないほどに、兵器、人員、情報、作戦計画などをめぐって、常時緊密な連携を取っています。平時ですらそうなのですから、ウクライナで戦争が起きているような「有事」ではなおさらです。ロシア軍が中国軍に対し、ロシアの指導部が中国の指導部に対し、これまでの延長線として「軍事支援」を要請してくるのは当たり前です。何ら不思議ではありません。
・米国のバイデン政権は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対し、中国が軍事協力に前向きな考えを示した、という情報を入手し、外交公電で欧州やアジアの同盟国に伝えたと言います。しかし、私が推察するに、ウクライナ危機が起こる前も、起こった後も、中国とロシアの間では、双方向で軍事物資の供給や売買がなされています。
・現在はロシアがウクライナ戦で疲弊している状況ですから、言うまでもなく中国からロシアへの供給や売却が増加するのでしょう。
・ただ、中国は「これはウクライナ危機に際したロシアへの軍事支援ではない。あくまでも従来の軍事交流の一環であり、両国間の軍事協定の枠組みで行われているもの」と理論武装するのが必至でしょう。従来の協定内で、中国がロシアから原油や天然ガス、小麦の購買を引き続き行う、ロシア側がディスカウントするのであれば輸入量を増やすのと同じ論理です。
・しかしながら、以上をもってしても、中国がロシアのウクライナへの軍事侵攻を公に支持することはないでしょう。中国は一貫してウクライナの主権と領土の一体性が尊重されるべきという立場を表明しています。私が本稿を執筆している3月16日時点で、中国政府は、赤十字協会を通じてウクライナへの人道主義的物資援助を3回行っています。食料、粉ミルク、掛け布団などが含まれます。
・中国は引き続きロシアとの軍事協力、ウクライナへの人道支援、米国や欧州(3月8日には、習近平(シー・ジンピン)主席がマクロン仏大統領、ショルツ独首相と3者サミットを開催)とのハイレベル協議を展開し、ウクライナ危機の早期収束と政治的解決に奔走していくものと思われます。
・ウクライナ危機に対する中国の対応姿勢
(1)静観
 中国はウクライナ危機に深入りすることは危険だと考えています。理由は、中国はNATOの東方拡大、ウクライナのNATO加盟に反対する意味でロシアと立場を同じくしているものの、今回の危機が引き金となり、欧米をはじめとした西側諸国やウクライナとの関係も悪化させたくないからです。中国とウクライナは2022年に国交正常化30周年を迎え、経済や貿易、軍事といった分野で深い関係を築いてきた経緯があります。一定の距離を取って静観するしかないゆえんです。
(2)あっせん
 中国は国際連合の常任理事国であり、ユーラシア大陸の大国です。何もしないことは大国としての責任放棄につながり、それは中国の国益に符合しません。故に、中国は、王毅(ワン・イー)国務委員兼外相を中心に、ロシア、ウクライナ、欧州、米国を含めた各方面に外交的に働きかけ、停戦を呼び掛けているのです。ウクライナ侵攻が始まった2月24日から3月16日の間、王外相が各国(EU含む)の外相と行ったビデオ・電話会談は計18回に上ります。
(3)研究
 中国共産党指導部にとっての悲願は台湾統一です。先々週のレポート「中国が泥沼化するウクライナ危機から学ぶ三つの論点」で扱ったように、党指導部は、(a)米国がどのくらいの強度と速度で軍事介入してくるか、(b)国際的にどの程度の経済制裁を受けるか、(c)国内外の世論はどうなるかという三つの視点からウクライナ危機を観察し、武力行使を含めた台湾統一に向けて内的に研究を進めているのです。
・これら三つの姿勢を軸とした中国が掲げる五つの目標
(1)ロシア、ウクライナ、欧米日を含む西側いずれとの関係も悪化させない
(2)外交的あっせんを展開し、危機の解決に貢献したという評価を得ることで国際的影響力と信用力を向上させる
(3)危機対応の副作用として、西側諸国から経済・金融制裁を受けないようにする
(4)中国経済への打撃を最小限にとどめ、米国が危機対応で疲弊した場合、それを戦略的契機と捉え、経済力、軍事力、国際的影響力・信用力といった国力の相対的強化につなげる
(5)台湾統一に向けてウクライナ危機からどんな示唆と教訓が得られるか徹底分析する
・以上のように整理できます。中国は政治の国です。経済、外交、軍事を含め、すべては習近平国家主席率いる中国共産党指導部の正統性が維持、強化されるかという視点から実践されます。ロシアを軍事支援するかというテーマも同様で、上記の三つの姿勢、五つの目標を前提に、自らの行動を決定していくのが常とう手段と言えます。
・以上、中ロの軍事関係・交流を整理してきましたが、今後の焦点は、三つの姿勢と五つの目標に体現されるように、一見「いいとこどり」に映る中国の言動と作戦がどこまで現実に耐えうるのか否かです。仮に耐えられないと党指導部が判断した場合、西側に見切りをつける、ロシアと距離を置くといった対策を取ることがあるのかどうか。事態は流動的かつ不確実です。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

記事の内容から読み取れるのは、ロシアへの支援、および国際社会との協調という相反する観点からバランスの取れた対応を取ろうとする中国の戦略です。
ですから、以下のように一見するとどっちつかずに見えるわけです。

ロシアによるウクライナ侵攻について、中国によるロシアへの経済的な支援はロシアからの輸入量の増加といったように明らかです。
しかし、中国の軍事面での動きはロシア軍との共同演習は実施されていますが、表立っての軍事的な支援の動きは見当たりません。
一方で、ロシア、ウクライナ、欧州、米国を含めた各方面に外交的に働きかけ、停戦を呼び掛けているのです。

しかし、これまで何度となくお伝えしてきたように、習近平国家主席は経済的にも軍事的にもアメリカを凌駕し、中国を中心とする国際社会に再構築することを目指しているのです。
こうした目的を果たすという観点からすると、ロシアによるウクライナ侵攻に対する中国の動きを以下のように予測することが出来ます。
・ロシアによるウクライナ侵攻を長引かせ、アメリカを含むNATOの軍事力を弱体化させ、中国の軍事的な優位性を高める
・一方で、国際的に孤立化を深めるロシアを中国の属国化させる
・ロシアによるウクライナ侵攻の状況を観察し、よりスムーズに中国による台湾進攻を実施するうえでの参考にする

ということで、ロシアによるウクライナ侵攻は実質的にはロシアとNATOとの戦いであり、この侵攻と同時並行で中国による台湾進攻がどこかのタイミングで実施され、米中の2大陣営による第三次世界大戦に突入するリスクが高まっているのです。
そして、アジア歴訪中のペロシ米下院議長(民主党)は7月2日に、専用機で台湾を訪問したことがこのリスクを一段と高めているのです。

なお、リスクにも大小様々なレベルがありますが、第三次世界大戦の勃発は人類史上最大級のリスクと言えます。
ですから、こうした状況下において、ロシアによるウクライナ侵攻の早期終息、および米中の対立を何としても軍事力以外の手段で解決させることが人類にとって最も重大なリスク対応策であると認識し、世界各国が行動に移すことが求められているのです。

 
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