2022年03月19日
プロジェクト管理と日常生活 No.737 『ロシアのウクライナ侵攻に見るリーダーシップの重要性』
ロシアによるウクライナ侵攻関連ニュースが連日のように報道されています。
そして、ロシア側から発信される情報のほとんどはフェイクニュース(間違った記事)のように思われます。
そうした中、3月10日(木)付けネット記事(こちらを参照)でフェイクニュースが拡散されるネット時代の報道の役割について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 

・世界を震撼させたロシアによるウクライナ侵攻。ネットを通じて現地の状況がリアルタイムに伝わってくる一方で、誤った情報が拡散されている。
・路上に横たわる焼け焦げた遺体、ミサイルで破壊された家々、お互いを庇(かば)うように身を寄せ合う家族……。ウクライナから届くこれらの映像は、プロのジャーナリストが撮影したものではない。現地の人々がスマートフォンで撮影し、ソーシャルメディアにアップしたものだ。
・人々が自ら撮影した映像だけではない。はるか空の上からの衛星画像がロシア軍の動きを連日つぶさに伝えている。地上からも空からも、これだけ現地の状況がリアルタイムに伝わる戦争は、歴史上初めてだ。
・今回、当初はロシアに対する強い制裁に及び腰だった国々がその態度を変え、ロシア包囲網を強めている背景には、現地から届く情報によって世界に広がる反戦デモの影響がある。
・インターネットとスマートフォンとソーシャルメディアによって、権力者やマスメディアによる情報の独占が終わり、「情報の民主化」が起こった。人々はいつでも、どこでも、誰でも情報を発信・受信・拡散できる。ウクライナの人々の悲劇、怒り、悲しみの発信を受け取り、共感し、拡散することで国際的な世論のうねりが生まれる。
・一方で、拡散される情報の中には内容が誤っていたり、ミスリードだったり、最初から相手を騙そうと操作された情報もある。
・誰もが発信・拡散できる状況では、情報は玉石混交となる。紹介した事例は情報の検証に取り組む「ファクトチェッカー」たちが確認したものであり、彼らの多くはジャーナリストだ。膨大な量の情報に対して、組織や国境を越えて連帯し、検証した情報を公開・共有している。
・ベトナム戦争は多数の記者が従軍し、その写真や映像が世論を動かし、大規模な反戦運動にもつながった。それから約半世紀。報道の役割は現場を取材するだけでなく、現場からの情報を精査する方向へと広がっている。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

このネット記事と3月11日(金)付けネット記事(こちらを参照)を参考に今回のウクライナ侵攻関連の情報に関するキーワードを以下に書き出してみました。
・インターネット
・ソーシャルメディア(SNS、ブログなど)
・衛星画像
  地球観測衛星に搭載されるセンサーの観測データを画像化したものである
・報道の自由
・情報の民主化
・フェイク投稿
  今やSNS上のAI人格によるフェイク投稿も存在している
・ファクトチェッカー(こちらを参照)
  多くはジャーナリストで、膨大な量の情報に対して、組織や国境を越えて連帯し、検証した情報を公開・共有している
・サイバー攻撃
・サイバー戦争
・アノニマス(国際匿名ハッカー集団 こちらを参照)
  アノニマスはロシアに宣戦布告し、ウクライナを全面支援している

今やインターネットを通して、誰もがどこにいても世界中の様々な情報に接することが出来ます。
また、ソーシャルメディアを通して世界中の誰もが自分の伝えたいことを自由に伝えることが出来ます。
更に衛星画像を通して今や宇宙空間から見た地球上の様子さえも誰もが見ることが出来ます。

一方、こうしたネット社会にも以下のような弊害があります。
ネット社会のこうしたメリットを享受出来る大前提は報道の自由、および民主化です。
しかし、自国の政権がある意図を持って報道の自由、および民主化を規制すれば、規制された情報については、“無いこと”になってしまうのです。
また、フェイク投稿が無用の社会混乱を引き起こしています。
更に、サイバー攻撃により国家の機密情報や多くの企業の重要情報が盗まれるといった犯罪も横行しています。

しかし一方で、こうした弊害に対して“正義の味方”、あるいは“ネット社会における自警団”とも言えるグループがおります。
それは、フェイク投稿を監視するファクトチェッカー、そしてサイバー攻撃に対抗するアノニマスです。
なお、アノニマスは「情報の自由など、共通の理念に賛同する人々による社会運動であり、それらの人々による緩やかな集まり(コミュニティ)といいます。
また、その活動が評価され、2012年には、米Time紙の「世界で最も影響力のある100人」の1人に選ばれております。
そして、ロシアによるウクライナ侵攻に際してアノニマスはロシアに宣戦布告し、ロシアにサイバー戦争をしかけ、ウクライナを全面支援しているのです。
同様にファクトチェッカーもロシア側が発信するフェイクニュースを識別して人々に知らせているのです。
ですから、ウクライナは武器や経済的な支援以外にサイバー空間においても強力な助っ人の支援を受けているのです。

さて、以前から私はなぜ独裁政権は自らの非を認めないのか、またなぜ独裁政権は平気でウソをつくのかという疑問を持っていました。
今回のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに私なりにあらためてその理由を以下にまとめてみました。
・独裁国家においては独裁政権が憲法よりも上の存在であり、従って自らの非を認める必要がないこと
・独裁国家においては独裁政権にとって都合の悪い情報を徹底的に隠蔽し、一方で独裁政権にとって有利と思える情報は偽情報をでっち上げてでも積極的に拡散させること

要するに独裁政権が成立する要件の一つは国内の情報統制なのです。
徹底した情報統制のもとでは、独裁政権は思い通りに情報をコントロール出来ます。
しかし、情報統制のたがが緩むと、政権に都合の悪い情報が国民の間に知れ渡り、政権に対する不満が高まります。
あるいは、海外の情報が際限なく入ってくると、他の国の人たちとの生活レベルや行動や発言に対する自由度の違いを知ることになり、やはり政権に対する不満が高まります。
こうした状況は政権転覆につながるリスクが高まるのでどこの独裁政権も情報統制にとても気を配るわけです。

しかし、今やネット、更にSNSにつながりさえすれば、どこの国のであってもネット上で公開されている情報は自由に入手出来てしまいます。
また少なくとも民主主義陣営の国においては法に触れない情報であれば、誰でもネット上に自分の発信したい情報を自由にアップすることが出来ますし、一方で誰でも自由にこうした情報に触れることが出来るのです。

さて、今やロシアのウクライナ侵攻は世界中の多くの人たちの関心の的になっています。
ですから、特にロシアのプーチン大統領やウクライナのゼレンスキー大統領の発言には注目が集まります。
そして、例えばプーチン大統領が「ロシア軍はウクライナの軍事施設および兵隊しか攻撃対象にしていない」とネット上で発言しても、ウクライナの政府や一般国民がロシア軍による砲撃で一般住宅が破壊されている様子や負傷している一般国民の様子を動画に撮ってネット上にアップすれば、この動画を見た人たちは、プーチン大統領はうそをついていると分かります。
こうした発言を何度も繰り返してきているので今ではプーチン大統領の発言は信用出来ないという思いが多くの人の間で強くなってきていると思います。
しかし、プーチン大統領はロシア国内で情報統制をしていた延長でしか国際社会を認識することが出来ず、国際的な情報統制に失敗していることを理解していないように思えます。
ですから、今やプーチン大統領は情報統制においては現代の“裸の王様”状態と言えます。

一方、ゼレンスキー大統領は連日、ロシアのウクライナ侵攻に関する状況をSNSで発信し続けております。
そして、その発言はウクライナの国民がSNSで発信している情報と整合性が取れているように見受けられます。
更に、ゼレンスキー大統領の発する言葉は世界中の多くの人たちの心に響くような説得力を持ち、共感を持たせるパワーを感じさせます。
今や、こうしたネット上の人たちの“人の輪”があちこちで出来上がり、こうしたパワーが各国の政府のみならず国連をも動かし始めているのです。
アメリカを中心に多くの国々がウクライナに様々なかたちで“支援の輪”を広げています。
要するに軍事大国が圧倒的な武力を背景に一方的に他国に侵攻し、同時にフェイク情報をまき散らして自国に有利な展開を目指しても、世界中の多くの人たちがその非を知ることによって“反ロシア侵攻”の輪が広がり、そのパワーが国連をも動かし、同時にアノニマスやファクトチェッカーがサイバー空間で侵攻の対象国を支援するといった構図が出来上がることが分かったのです。
ですから、ロシアが今回のウクライナ侵攻に失敗することになれば、中国の覇権主義をも断念させることにもつながる可能性が高くなるというわけです。

こうして見てくると、ロシアによるウクライナ侵攻はウクライナの国民に大変な犠牲を強いたり、国際経済に大きな影響を与える一方で、図らずもサイバー空間が戦闘の行方に大きな影響を及ぼすことを明らかにしました。

さて、ロシアによるウクライナ侵攻についていろいろとお伝えしてきましたが、ロシアの想定以上に戦闘が長引いている理由について以下にまとめてみました。
・ウクライナのゼレンスキー大統領がロシアにとって以下のように想定外の強力なリーダーシップを発揮していること
  SNSの活用
   ウクライナ軍の善戦、およびウクライナ国民、あるいは領土の被害状況の公開
   ウクライナの軍隊、国民への祖国防衛意識の鼓舞
   ヨーロッパをはじめとするウクライナと価値観を共有する国々へのウクライナ支援の働きかけ
・ロシアによるウクライナ侵攻が自由・人権・民主といった価値観を持つ国々に以下のような危機感をもたらせたこと
  ウクライナ侵攻後に更にロシアが領土拡大に突っ走るのではないかというヨーロッパの国々の危機感
  ロシアによるウクライナ侵攻が中国による台湾侵攻というリスクを発生させるのではないかという自由主義陣営の国々の危機感
・こうした危機感が自由・人権・民主といった値観を共有する国々の連帯意識を目覚めさせ、ウクライナへの武器や経済の支援、あるいはサイバー攻撃への加担、そしてロシアへの経済や金融制裁といったようなウクライナへの様々な支援につながったこと

さて、プロジェクト管理の観点から今回のロシアによるウクライナ侵攻を考えてみると、あらためてリーダーシップの重要性を再認識しました。
これまでのウクライナのゼレンスキー大統領の強力なリーダーシップが際立っています。
一方、ロシアのプーチン大統領は一見強力なリーダーシップを発揮しているように見えますが、その発言はどんどんロシアを“国際社会からの孤立化”に向わせています。
また、アイデアよもやま話 No.5215 生け捕ったロシア軍を解放するウクライナ!でもお伝えしているように、ロシア軍の現場の指揮官や兵士の中には事前にウクライナへの侵攻を知らされておらず、軍事訓練のつもりで戦闘に参加していると報じられています。
ですから、ロシア軍における指揮命令系統の危うさを感じます。

さて、企業においても経営者が代わることによってそれまでの赤字体質が一転して黒字体質に転換したという事例が少なからずあります。

また、スポーツの世界でもチームの監督が代わることにより、チームが見違えるほど潜在的なパワーを発揮して強いチームに生まれ変わったという事例が沢山あります。
ですから、先ほどもお伝えしたように、ロシアによるウクライナ侵攻による戦闘が長引いている最大のポイントはゼレンスキー大統領の強力なリーダーシップにあると思うのです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています