2021年11月24日
アイデアよもやま話 No.5121 金融で「環境改善」が進む!?
7月28日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で金融による環境改善について取り上げていたのでご紹介します。 

ヤフーやラインなどを傘下に持つZホールディングスが新たな債権を7月28日に発行しました。
その名も「グリーンボンド」、「環境債」とも言われ、環境対策に使い道を限定した債権なのですが、なぜ今IT大手がグリーンボンドを発行したのでしょうか。
今回のグリーンボンドの額は200億円に及びます。
Zホールディングスの坂上亮介最高財務責任者は次のようにおっしゃっています。
「グリーンボンドへの投資家の関心度は非常に高かったです。」
「当社にとってみても投資家層の拡大にも今回つながったのかなと思っていると。」

今回、65の企業や大学から投資を得られました。
環境への意識の高まりでグリーンボンドを発行する動きは世界的に広がっています。
他の債権と比べて金利が低くても買い手が見つかることなどから日本でも発行総額は初めて1兆円を超えました。
今回グリーンボンドを選んだ理由について、坂上さんは次のようにおっしゃっています。
「インターネット企業としての電力消費の最大はデータセンターなんですね。」

環境対策として重要視したのは電力消費です。
子会社のヤフーでは消費電力の95%がデータセンターで使われています。
Zホールディングスは今回調達した資金を省エネ対応のデータセンターの建設に使う他、子会社のヤフーで使う電力を2023年度には100%再生可能エネルギーで賄えるようにします。
坂上さんは次のようにおっしゃっています。
「この先、いろんな企業が再生可能エネルギーを調達することは容易に想像出来ますので、そういう意味でも当社としてはとにかく先に早くやることが大事だと感じています。」

一方で、このグリーンボンドで既に課題も出てきています。
日本取引所グループの清田瞭CEOは次のようにおっしゃっています。
「(集めた資金を)本当にグリーンに使っているかどうかを含めて認証する制度を入れるべきではないかという観点もあって、・・・」

こうした状況に東京証券取引所は金融庁とともに第三者機関が資金の使い道をチェックするなど、グリーンボンド市場の整備に向けた検討を行っています。
こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「(グリーンボンドは)金融を道具にして地球環境を改善する試みの一つなんですね。」
「で、企業はグリーンボンドを発行して年金基金などの投資家からお金を調達して再生可能エネルギー事業や新技術開発(、すなわち環境改善事業)に使うということなんです。」
「で、日本は欧米に比べると5年くらいこの分野の取り組みに遅れたと言われていたのがようやくかたちになってきたという感じです。」
「(メリットがあるからこそ広がりのある需要も出てくるということなのではという指摘に対して、)はい。」
「特に欧米の投資家は年金などの運用方針で環境を非常に重視するということになっていると。」
「そうすると、環境にお金を使う企業の社債は大変投資が集まる。」
「そうすると、金利が安くなってコストも安くお金を調達出来るということなんです。」
「(環境を使ってマネーの流れをつくるということだと思うが、)環境にまつわる新技術というのは例えば水素など沢山あるが、」日本政府は先日2兆円規模のファンドを10年間でイノベーションに充てるということを言っている。」
「その時に重点分野、例えば水素だとか蓄電池だとか、そういうものを方向を示して民間のお金の呼び水にしようとしています。」
「(道筋をつけてあげるということかという問いに対して、)そうですね。」
「(ただ、国ということに関していうと、アメリカやヨーロッパなどはもっともっと進んでいるということについて、)バイデン政権は200兆円、EUは100兆円という数字になっているのですけど、そうすると日本は民間のお金の呼び水としても2兆円をうまく使って、民間は更にタッグを組んでより効率的に開発をすると。」
「それによってグリーンボンドの市場が更に膨らんでいくということを期待したいですね。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

これまで何度となくお伝えしてきたように、地球温暖化対策として“持続可能な社会”の実現、およびそのための指針として“SDGs”(参照:No.4578 ちょっと一休み その710 『日本も国家としてSDGsに真剣に取り組むべき!』)が今や世界各国や世界中の企業から取り組むべき重要事項として認識されつつあります。

今回ご紹介した、環境対策に使い道を限定したグリーンボンドはまさに“SDGs”に関する金融業界の取り組みの一環と言えます。
また投資家の関心度も非常に高くなっているので、今後とも投資家層の拡大が期待でき、こうしたビジネスの拡大が見込まれます。

Zホールディングスが7月28日に発行した新たなグリーンボンドでも65の企業や大学から投資を得られましたが、他の債権と比べて金利が低くても買い手が見つかることなどから日本でも発行総額は初めて1兆円を超えました。
なお、Zホールディングスが今回グリーンボンドを選んだ理由は、インターネット企業としての電力消費の最大はデータセンターということで、今回調達した資金を省エネ対応のデータセンターの建設に使いたいといいます。
ですから、単なる債権の発行ということではなく自らの省エネ対策に直結する、とても理にかなった取り組みだと思います。

一方で、このグリーンボンドで既に課題も出てきています。
集めた資金を本当にグリーンに使っているかどうかを含めて認証する制度導入の必要性です。
こうした状況に東京証券取引所は金融庁とともに第三者機関が資金の使い道をチェックするなど、グリーンボンド市場の整備に向けた検討を行っています。

また、日本は欧米に比べると5年くらいこの分野の取り組みに遅れたと言います。
その背景には、日本の政府、および企業に欧米に比べて相対的な地球温暖化の進行に対する危機感の無さがあると思います。
更にその裏にはやはり相対的に日本国民の危機感の無さがあると思います。
というのは、国民の強い意志を政府も企業も無視出来ないからです。
報道で知る限り、少なくともヨーロッパの国民は総じて環境問題に強い関心を持っていると思います。
ですから、金利が安くとも環境にお金を使う企業の社債は大変投資が集まることにつながっているのです。
こうした金融界の取り組みは地球温暖化阻止に向けて資金面から好循環をもたらすと期待出来ます。

なお、日本政府は2兆円規模のファンドを10年間でイノベーションに充てるといいますが、バイデン政権は200兆円、EUは100兆円を計画していますから、規模的に見て桁が違い、見劣りしてしまいます。
ファンドの規模はともかく、どのように持続可能な社会の実現に向けて、効率的、かつ効果的に取り組んでいくのかそのグランドデザインが最重要です。
是非、岸田総理にはリーダーシップを発揮していただき、日本という国を新しい、世界に誇るべき国に蘇らせていただきたいと思います。
やはり、停滞している国を蘇らせるには国の強力なリーダーシップが不可欠なのです。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています