2021年11月12日
アイデアよもやま話 No.5111 追い詰められるガソリン車!
7月24日(土)付けネット記事(こちらを参照)で追い詰められるガソリン車について取り上げていたのでその要旨をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・脱ガソリン・脱ディーゼルの流れがはっきりしてきた。欧州を「震源地」に、中国や米国そして日本でも電気自動車(EV)化へ向けた動きが加速している。
・しかし、まだ不透明な部分もあり、自動車メーカーのEVへの対応に温度差があるのも事実。実は「EVシフト」に消極的なメーカーが好んで使う三つの「キーワード」がある。
(1) 燃料電池車(FCV)
FCVに搭載する燃料電池の進化は、EVの車載電池よりも遅い。さらには水素ステーションのような燃料供給インフラは、EVの充電スタンドよりもはるかに少ない。
しかし、同一ルートを走行する大型のバス・トラックは車両基地に水素ステーションがあればいいので、早期の実用化も可能だろう。ただ、現時点での水素価格はディーゼルエンジン用の軽油よりも高いのが難点だ。
(2) 全固体電池
全固体電池はリチウムイオン電池に比べて航続距離が最大2倍、わずか15分で全容量の80%を充電できるという。しかも、発火事故や電池の劣化も起こりにくい。
まさに「理想の電池」だが、抜群の性能も「実験室レベル」。量産時に同様の性能を実現できるかどうかは未知数だ。
EVを動かすような大型全固体電池の量産は当分先だ。
(3) ライフサイクルアセスメント(LCA)
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品に必要な原料の採取から生産、製品が使用され、廃棄されるまでの全過程での環境負荷を定量的に評価する手法のこと。
EV自体は走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しないが、車載電池の生産や充電用電力の発電などで大量に排出するから、LCAで見れば環境にやさしいわけではないという主張がある。
しかし、CO2を排出しない太陽光や風力といった再生可能エネルギー発電は、量産化による設置コスト低下で総電力に占めるシェアが上がりつつあり、EVのLCAでのCO2排出量は低下する見通しだ。
一方、ガソリン車やディーゼル車がLCAでEVを上回るためには、エネルギー変換効率を50%以上に引き上げる必要がある。現状ではディーゼル車が40%、ガソリン車が30%程度であり、実現は容易ではない。
・技術革新に乗り遅れると「致命傷」に
HVを含むガソリン車・ディーゼル車が、現在も自動車産業の根幹を支えていることは間違いない。だが、技術革新の波はあっという間に押し寄せる。液晶テレビで世界を席巻した日本のテレビ産業も、世界に先駆けて開発した有機ELテレビでは量産化に出遅れて国産メーカーは全て撤退してしまった。HVで独走する国産車メーカーも、EVに乗り遅れると存亡にかかわる可能性がある。油断は禁物だ。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

更にこうした状況を以下にまとめてみました。
(現状の問題点)
・“脱炭素”社会、あるいは“持続可能な社会”の実現に向けて、多くの国々は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにするという目標を掲げている(中国とロシアは2060年を目標設定している)
・こうした中、CO2排出量の多いガソリン車も“脱炭素”に向けた取り組みを迫られている
・現在、大きくEVと燃料電池車の2つがその候補としてあげられているが、現状ではそれぞれ解決すべきいくつかの課題がある
・しかし、欧米、および中国の自動車メーカーはEVへのシフトに向けて、国をあげて取り組んでいる
・一方、日本は当面ハイブリッド車に軸足を置き、完全なEV化、あるいは燃料電池車へのシフトに向けては欧米や中国の自動車メーカーに出遅れている

なお、こうした情況に加えてEUでは国境と国境の間を輸出される時の国境炭素税を導入する動きがあります。(参照:アイデアよもやま話 No.5049 EVを巡る世界的潮流!
こうした動きからEU各国におけるEVへのシフトの本気度が伺えます。

ではこうした欧米各国のEVシフトに対して、日本はどのような戦略で立ち向かうかですが、そこで参考になるのはかつてのホンダの取り組みです。
以下はホンダがマスキー法をクリアするために取り組んだ新しいエンジン、CVCCに関するホンダのホームページ(こちらを参照)からの抜粋です。

従来の大気清浄法を大幅に修正した1970年大気清浄法(通称、マスキー法)案がアメリカ連邦議会で1970年に提出され、同年12月31日に発効しました。
しかし、同法案の内容は非常に厳しく、世界中の自動車メーカーは、この規制内容を達成することはほとんど不可能であると主張していました。
ところがホンダ創始者の本田宗一郎は「4輪の最後発メーカーであるHondaにとって、他社と技術的に同一ラインに立つ絶好のチャンスである」として、果断にこの法案をクリアすべく新たなエンジンの開発にチャレンジしたのです。
そして、1975年の排出ガス規制値を満足させるレシプロエンジン(CVCC・複合渦流調速燃焼方式)を開発しました。
しかもホンダは、かねてから公害対策技術は公開する方針を表明しており、CVCC技術は他の自動車メーカーにも公開しました。
そして、これがだめだったら、4輪市場からの撤退も考えなければならないという背水の陣で開発されたシビック・CVCCエンジン搭載車が1972年7月12日に国内で発売されました。
同車の市場評価は高く、1973年度モーターファン誌主催のカー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。
なお、CVCCエンジンには、現在も追求されている希薄燃焼方式の考え方がいち早く採り入れられていた。その考え方は今もLEV(Low emission vehicle 低排ガス車)エンジンなどに脈々と受け継がれております。

以上、CVCCに関するホンダのホームページからの抜粋でした、

今は日本の自動車メーカーは“脱ガソリン車”の市販化において、総じて欧米、および中国の自動車メーカーに比べて立ち遅れ気味です。
こうした状況において、日本の自動車メーカーは優れた技術力を駆使して猛スピードでこうした海外の自動車メーカーに立ち向かい、自動車のボディやバッテリーのみならずカーライフ全般においてライフサイクルを通して、すなわち全過程での環境負荷をゼロにするという目標を掲げ、個々の企業が単独ではなく全ての関連企業が協業して圧倒的な競争力を持つ製品を国内外を問わず、世界中に展開すべきなのです。
その際、当然企業だけで解決出来ない課題も出てきますが、それについては国、あるいは地方自治体が一体となって支援するのです。
ですから、政治家、中でも総理大臣が“脱ガソリン車”の重要性を十分に理解し、自らその実現に向けた構想を練るくらいの力量が求められるのです。
こうした一連の取り組みをスムーズに、そして素早く進めるためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の観点からのアイデアも求められます。
こうした取り組みで“ジャパン・アズ・ナンバーワン”が実現出来れば、関連技術の世界展開、および国境炭素税が世界的に導入されても日本は経済的に優位に立つことが出来るようになるのです。
逆に、このまま“脱ガソリン車”の取り組みに立ち遅れたままであれば、自動車産業は日本の主力産業ですから、日本は経済的に沈没してしまうリスクが大きくなってしまうのです。

 
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