2021年09月11日
プロジェクト管理と日常生活 No.710 『「抗体カクテル療法」をリスク管理の観点から見ると・・・』
8月25日(水)付けネット記事(こちらを参照)で「抗体カクテル療法」について取り上げていたのでその一部をご紹介します。 
なお、日付は全て記事掲載時のものです。
また、この記事は人工的に作った抗体を薬とする研究でリードする東北大大学院医学系研究科の加藤幸成教授へのインタビューに基づいています。

・新型コロナウイルス感染症の治療薬「抗体カクテル療法」とは初の軽症者向けの薬で、患者の重症化と医療体制の崩壊を防ぐ切り札として期待されています。
・抗体カクテル療法の効果などを調べた海外の試験では、重症化リスクが7割下がったというデータがあります。ちゃんと医療現場で定着すれば、来年には流行は収束すると思います。そう簡単ではないかもしれませんが、ワクチンだけに頼るよりいいでしょう。
・そもそも抗体とは体に侵入したウイルスや細菌を無力化したり、働きを弱めたりする免疫の働きの一つです。一つのウイルスには一つの抗体が対応しています。体内には1000万、1億という膨大な種類の抗体があります。
・ウイルスが体の細胞に入り込み、増殖することで感染します。対する抗体はウイルスの表面にくっついて体に入り込むのを防ぎ、増殖させないようにします。
・自らの抗体で新型コロナに10日間ほど耐えられれば治りますが、新型コロナは増殖が速く、その前に軍勢で負けてしまいます。ですから、増殖が進む前の軽症のうちに(発症から原則7日以内)、作った抗体を送り込み、自らの免疫が働くまで時間を稼ぐ必要があるのです。
・抗体は血液や体液の中に存在するタンパク質です。口から摂取したらアミノ酸になって、筋肉になるだけです。
・抗体カクテル療法で2種類の抗体を交ぜて使うのは1種類では効かなかったからです。ある抗体が、あるウイルスにくっつく箇所は決まっています。その場所で変異が起きるとくっつかなくなります。また、1種類ずつ順に使っていたら、その間に患者は重症化し、亡くなってしまいます。
・2カ所とも変異が起きたら、新たな製剤が必要になります。ただ、この2種類は人工知能(AI)を使って、変異しにくいところを選び取っていると予想されます。
・がん細胞と違って、ウイルスを狙い撃つのは比較的簡単です。変異さえしなければ、すぐにやっつけられるのです。ただし、変異のスピードは予想以上に速い。変異の速度を抑えるには、人流(人の流れ)制限しかありません。この点は政治の問題になります。
・理論的には3、4種類を交ぜれば効果は上がりますが、価格も3、4倍になるので現実的ではありません。本来なら、抗体医薬は1種類で効かなければ認可されません。2種類を交ぜるだけでも相当異例です。

(他の医療への適用)
・危なくないように処理したウイルスをマウスに打ち、抗体を生み出すB細胞というリンパ球を取り出し、ウイルスに反応する抗体を探し当てます。遺伝子工学の技術で9割以上を人の遺伝子に変えれば、安全に人に投与できます。「ヒト化抗体」といい、カクテル療法でも用いられていて、この研究室でも日々行っています。
・感染した患者やワクチンを接種した人から直接B細胞を持ってくる「ヒト抗体」もあります。医薬品を作るのにどちらが優れているか、現時点で答えは出ていません。
・ヒト化抗体は最近の技術ですが、人工抗体は1970年代からあります。ただ、今はスピード感が大きく違います。昨年6月の段階で、中国ではサルに効く新型コロナの抗体医薬ができたし、米国では患者への試験投与が始まりました。

・年間の売上高が1000億円を超える画期的な新薬は「ブロックバスター」と呼ばれます。そんな抗体医薬が2000年代から次々と登場しています。かつては治らないと思われてきた関節リウマチや悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬が出ています。アトピー性皮膚炎、片頭痛、アルツハイマー病などでも開発が進んでいます。

・加藤教授の研究室ではがんの抗体医薬をつくることを専門にしていますが、さまざまな抗体をつくって「抗体バンク」を運営しています。新型コロナに対する抗体も複数開発し、無償で譲り渡しています。組み合わせでいいカクテル療法になるのでは、というアイデアがあれば、自由に使ってもらいたいと思います。

・抗体カクテル療法は米バイオ企業リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発した。昨年10月、トランプ前米大統領が未承認ながら特例で投与を受け「神の恵みだ。(感染した)皆さんにも同じ治療を受けてもらいたい」と絶賛した。翌11月、米食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可を出した。
・日本では今年7月、特例承認された。厚生労働省は当初、投与後の容体悪化に対応できる医療機関や宿泊施設で、入院患者のみに投与を認めていた。各地の病床逼迫(ひっぱく)を受け、外来患者に対しても投与を認める方針に転換した。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

新型コロナウイルスの変異ウイルスによる世界的な感染拡大に伴い、ワクチン接種が進んでします。
しかし、変異ウイルスの感染力強化もあり、ワクチン接種後の「抗体」に差が出ています。(参照:アイデアよもやま話 No.5056 ワクチン接種後の「抗体」に差!

そうした中、「抗体カクテル療法」は軽症者向けの治療薬で、患者の重症化と医療体制の崩壊を防ぐ切り札として期待されています。
ですから、「抗体カクテル療法」は新型コロナウイルス感染リスクのコンティンジェンシープランの一つであり、同時に軽症患者の重症化と医療体制の崩壊リスク対応策として位置付けられます。
こうした「抗体カクテル療法」の狙いから考えると、軽症以外の症状の患者向けの、短期間のうちに沢山の抗体を作り出す「抗体カクテル療法」の可能性に期待したくなります。

なお、抗体とは体に侵入したウイルスや細菌を無力化したり、働きを弱めたりする免疫の働きの一つであり、一つのウイルスには一つの抗体が対応しています。
ですから、私たちの体内には1000万、1億という膨大な種類の抗体があるというわけです。
また、抗体は血液や体液の中に存在するタンパク質で、口から摂取したらアミノ酸になって、筋肉になるだけということなので、飲み薬というかたちでの抗体を使った治療は出来ないということになります。

また、抗体カクテル療法は複数の抗体を交ぜて使うというのは、これまで繰り返しお伝えしてきたアイデアは既存の要素の組み合わせてあるという言葉を思い起こさせます。

なお、新型コロナウイルスの変異のスピードは予想以上に速く、変異の速度を抑えるには、人流(人の流れ)制限しかないという指摘は、ワクチンや治療薬だけでの対応の限界を感じます。
やはり感染拡大阻止対策として人流制限をするロックダウン(都市封鎖)は切り札の一つとして有効性を発揮するのです。

また、この記事では抗体について、マウスを使って抗体を生み出すB細胞というリンパ球を取り出し、遺伝子工学の技術で「ヒト化抗体」を作り出す方法と感染した患者やワクチンを接種した人から直接B細胞を持ってくる「ヒト抗体」を作り出す方法があるといいます。
将来的には遺伝子工学などの技術の進歩により、「ヒト化抗体」を作り出す方法の方がより短期間でウイルスに対抗出来るようになると期待出来ます。

更に抗体を利用したこうした治療法ですが、かつては治らないと思われてきた関節リウマチや悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬が出ており、アトピー性皮膚炎、片頭痛、アルツハイマー病などでも開発が進んでいるといいます。

ということで、「ヒト化抗体」関連医療は今は変異ウイルスの軽症患者向けの治療薬として注目を集めていますが、コロナ以外の様々な病気リスクのコンティンジェンシープランとして今後期待したいと思います。

 
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