2021年08月06日
アイデアよもやま話 No.5027 EVはいずれ時代後れになる!?
前回まで中国、日本を中心にEVの開発状況についてご紹介してきました。
しかし、EVの世界的な普及の流れの中で、EVにはいろいろな問題があります。
3月21日(日)付けネット記事(こちらを参照)でEVはいずれ時代後れになるという問題提起がなされていたので記事の内容を以下に要約しました。

・地球規模の温暖化問題をうけて欧州を中心に世界各国で内燃機関のエンジンを禁止しEVへ切り替える潮流が加速している。
・EVに搭載されるリチウムイオン電池の生産には多くの電力を必要とする。
・火力発電が主力の現状では、EVは生産時に多くのCO2を排出することになる。
・従ってノルウェーのように電力がすべて再生可能なグリーン発電の場所で生産すればCO2問題はないが、日本で生産する以上この問題は避けられない。日本の火力発電比率は75%、EUは40%である(2019年)。
・現在、EV用バッテリーの生産は日中韓3カ国のメーカーに占められているのだ。もちろん生産は日中韓だけで行っているわけではないが、本国での生産が多いと考えられる。韓国も中国も火力発電比率は約70%、しかも両国ともCO2排出の多い石炭火力が主力だ。アメリカでも火力発電が6割以上(内石炭は3割以上)を占めている。
・最新のハイブリッド車であればディーゼルよりさらにCO2排出量は少なく、火力発電比率の高いエリアではEVよりハイブリッドのほうが環境に優しいと考えるべきだろう。
・さらに、EVは走行時にも大量の電力を消費するので、それもグリーン電力でなければCO2削減の意味は薄れる。つまり、EV化を進めるべきか否かということは、発電がどれほどグリーンになっているかということと極めてリンクしているのである。
・・現在、欧州を先頭に発電のグリーン化が進んでいるが、同時に火力発電の廃止も進めなくてはならない。グリーン化を進めつつ発電量も増やすのは容易なことではないだろう。

・EVの急速な普及は、生産でも使用でも電力需要の急速な拡大も意味するので、火力発電を増やす必要が生じて発電のグリーン化の足を引っ張ることにもなりかねない。それでなくても電力需要は逼迫ひっぱくしているのである。俯瞰ふかん的に考えた場合、既存の電力需要のグリーン化がまず優先されるべきなのではないか。
・現状の発電状況は、先行しているヨーロッパにおいてでさえグリーン化プロセスの途上であり、EVを普及させるよりハイブリッドをより効率化させて普及させるほうが社会全体のCO2削減に効果的なのではないだろうか。
・しかも、そのほうがユーザーの経済的負担も軽く、利便性も今と変わらずに車に乗ることができるのだ。ディーゼルとハイブリッドを組み合わせれば、さらにCO2を削減することができるかもしれない。
・EV用途に限らず発電のグリーン化は進める必要があるが、大きな問題もある。グリーン発電の主力は水力、風力、太陽光となると考えられるが、どれも発電量は自然環境に依存する。風が弱ければ風力発電量は少なくなるし、悪天候が続けば太陽光発電はほとんど期待できない。需要と供給のミスマッチは不可避だ。

・それを解決する1つの方法として、スマートグリッドというものが考えられている。
・EVが普及すれば、そのEVに大量の電力が貯め込まれている。EVは稼働していないときは充電器につながれていると考えられるので、発電量に余裕があるときに充電し、電力が不足しているときはEVのバッテリーから逆に電力を調達するという考え方だ。
・しかしこの方法は、ユーザーサイドの協力も欠かせない。電力が逼迫しているときは極力EVの利用を控える、駐車中は必ず車と充電器を接続する、などだ。理論上は正しくても、どれだけ現実性があるかは不透明だ。
・一方、将来電力のグリーン化が進み、世界中のほぼすべての発電がグリーンになったとすると、全く新しい可能性も見えてくる。グリーン電力さえあれば、カーボンフリーの燃料の合成ができるからだ。
・一番わかりやすいのは水素で、水素は水を電気分解すれば生産できる。多くの自動車メーカーが水素で走る燃料電池車の開発に力を入れている(現在EV一辺倒に見える欧州も、水素の活用を中長期的には見据みすえている)のは、このような将来像を描いているからだ。
・燃料電池車は水素から発電して電気モーターで走るので、EVの走り味と、内燃機関車と変わらない航続距離と燃料補給時間をあわせもつ、理想的な車となる。現在、燃料電池車が普及しないのは、流通している水素が主として化石燃料から作られているため、コスト的にも高く、CO2対策にもならないからだ。

・電気から作るカーボンフリー燃料の可能性はほかにもある。
・アンモニアもその1つだ。水素からアンモニアが合成できる。アンモニアは水素よりも液化しやすいので輸送や貯蔵にも適している。アンモニアには炭素が含まれないため、燃やしてもCO2は一切排出されない。ガスタービンや、ディーゼルエンジンでの利用などに可能性がある(過去にジェット戦闘機やディーゼルエンジン搭載のバスに使われた実例もある)。
・このように、電力で合成燃料を作ることができれば、エネルギーの貯蔵ができるので電力の需給ギャップ問題も解決できる。電力不足時にはその燃料でカーボンフリー火力発電を行えばいいのだ。

・さらには、CO2をもとに燃料を作るという研究も行われており、実験室レベルではすでに成功している。つまり人工的に光合成を行うということだ。
・グリーン電力を使えるのであればCO2を回収して燃料に戻すことが可能なのだ。日本でも東芝などが開発を進めており、2025年にANAのジェット機を飛ばすことを目指しているという。
・このように合成燃料の生産ができると、内燃機関のままでカーボンフリーが達成できてしまうのである。
・カーボンフリー社会を実現するためにはEVしかないという極端な論調が目につくが、決してEVだけが解決策ではないということがわかっていただけただろうか。
・すべての自動車がEVになるというのはおそらく間違いだと私は考えるが、どうだろうか。水素や合成燃料で走る車が究極で、EVはその繫つなぎでしかないかもしれない。

以上、ネット記事の内容の要約をご紹介してきました。

更にこの要約をベースに以下に問題、およびその対応策をまとめてみました。

(EVの抱える問題)
・EVに搭載されるリチウムイオン電池の生産には多くの電力を必要とする。
・火力発電が主力の現状では、EVは生産時に多くのCO2を排出することになる。
・最新のハイブリッド車は火力発電比率の高いエリアではEVよりハイブリッドの方が環境に優しい。
・さらに、EVは走行時にも大量の電力を消費するので、それもグリーン電力でなければCO2削減の意味は薄れる。
・ただし、風力、太陽光などの自然エネルギー発電は天候に左右されるので安定的な供給が出来ない。

(問題対応策)
・EV用途に限らず既存の電力のグリーン化(再生可能エネルギーへのシフト)を推進する。
・電力供給量の不安定な自然エネルギー発電の余剰電力をEVのバッテリーに蓄え、その一部を電力供給源として活用する
・自然エネルギー発電に限らず、他の再生可能エネルギー発電で発電した電力をEVのバッテリーに蓄え、あるいはその電力を使たり、他の再生可能な媒体を使って水素を製造し、エネルギーとして活用する。(参照:アイデアよもやま話 No.5009 オールジャパンで挑む”水素”!
・更に将来的にグリーン電力によりCO2を回収し、人工的な光合成による燃料の生産が出来れば、内燃機関のままでカーボンフリーが達成出来る。

ということで、記事でも指摘されているように、カーボンフリー社会を実現するためにはEV、および搭載されるバッテリーもその選択肢の1つでしかなく、水素燃料、および燃料電池車、あるいは将来的には人工的な光合成によるエネルギーなども研究が進められております。
そして、世界的に既存のガソリン車などからEVシフトに注目が集まっていますが、当面用途に応じてEVと燃料電池車が併存していくと思われます。(参照:アイデアよもやま話 No.5009 オールジャパンで挑む”水素”!
その先のことですが、今のところ必ずしもEVは燃料電池車が普及するまでのつなぎであるとは言い切れないと思うのです。
ちなみに、私はどちらかというと、EVが次の時代の主流になると思っています。

 
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