2021年07月23日
アイデアよもやま話 No.5015 画期的な次世代の国産新型コロナワクチン!
6月23日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で画期的な次世代の国産新型コロナワクチンについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

ファイザーやモデルナ製のワクチンに続く第2世代と呼ばれている、現在国内で開発中の新型コロナワクチンの最大の特徴は、わずか127g、コップ半分ぐらいの量で日本の人口約1億2000万人分の接種を賄える可能性があるといいます。
果たして世界で勝負出来る国産ワクチンの誕生となるのでしょうか。

6月1日、東京・羽田空港、来日した一人の男性、赤畑渉さんです、
アメリカでワクチンメーカーを立ち上げ、社長を務めています。
赤畑さんは2002年に京都大学大学院を卒業後2002年に渡米、アメリカ国立衛生研究所でワクチン研究に従事し、2013年にVLPセラピューティクスを設立、がんやマラリアなどのワクチンを開発してきた化学者です。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「ワクチンていわゆる病気を治すのではなく、病気を予防するので縁の下の力持ちのような感じのものなんですけど・・・」

赤畑さんは昨年新型コロナウイルスの拡大を機に日本でワクチンを開発することを決意し、日本法人 VLPTジャパンを立ち上げ、独自の技術で全く新しいワクチンの開発に着手しました。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「一番の強みは少量接種で素早く多くの人に供給出来るワクチン。」
「少量だと例えばワクチンの製造が非常に楽になると。」
「接種した時の副反応が非常に軽減される可能性が高いということで。」

赤畑さんが開発中の新型ワクチンはレプリコンワクチン、自己増殖を意味するワクチンです。
ファイザーやモデルナ型のワクチンの改良型だといいます。
その仕組みは以下の通りです。
コロナウイルスの突起した部分、スパイクタンパク質に人の細胞が触れると感染します。
このスパイクタンパク質の設計図と呼ばれるのがメッセンジャーRNAで、ファイザーやモデルナのワクチンはこれを活用します。
メッセンジャーRNAを体内に注射すると感染力のないスパイクタンパク質が作られ、体内でスパイクタンパク質が出来れば、それに対する抗体が出来、免疫が生まれます。
こうしてコロナウイルスの侵入や付着を防ぐのです。

一方、赤畑さんが開発するレプリコンワクチンのケースは、体内に入ったメッセンジャーRNAが特別な技術でどんどん増殖する機能を持っています。
そのため少量の接種でも大量の抗体が作られます。
これにより効率的で高い免疫効果を発揮するというのです。
赤畑さんによれば、既存ワクチンの10分の1〜100分の1の量の接種で効果が期待出来るといい、わずか127gで日本の人口約1億2000万人分の接種を賄えるとしています。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「2022年には承認申請を行いたいと。」
「(来年にも承認申請を終えればワクチンとして接種出来るかという問いに対して、)はい。」

富山県富山市、かつて薬売りが町の経済を支えたことで知られています。
そこに一昨日、赤畑さんの姿が、向かった先はワクチンの製造を委託する富士フィルム富山化学です。
富士フィルムは昨年10月から最新の設備で赤畑さんのワクチンの生産を進めているのです。
この日、出てきたのが出来たばかりの「レプリコンワクチン」のサンプルです。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「手に持つと実感しますけど、前に進んでいるなと思いますけど、1日でも早くこれをちゃんとしてワクチンとして世の中に出していきたいと思っています。」

富士フイルムは将来の市販化に向けて、国産ワクチン専用の生産ラインの新設を検討しています。
富士フイルムの岡田淳二取締役は次のようにおっしゃっています。
「VLPT社のワクチンは更に一段進んだワクチンだというふうに理解しています。」
「日本人全体、あるいはアジアまで供給出来るような生産設備体制が必要になると。」

来年の市場投入に向けて準備が進む新型国産ワクチン、その最大の関門が国の承認です。
赤畑さんは3ヵ月に一度来日し、厚生労働省に開発状況を報告しています。
6月中にも治験を開始する届けを出す予定ですが、厚労省との間では“安全性”を巡って詰めの協議が続いています。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「(承認の課題について、)それはやっぱり開発者と承認する人たちの“せめぎ合い”は絶対にあるので、そこはコミュニケーションを取っていくしかないと思っていますし。」

承認を巡って激しい“せめぎ合い”があるといいます。
赤畑さんは次のようにおっしゃっています。
「安全でかつ早く開発するというのはちょっと矛盾するところがあって、出来るだけ安全で行くというのは勿論時間がかかりますよね。」
「でも早くというとリスクが出ますよね。」
「そこのリスクとベネフィット(便益)のバランスは国や国民性によって違うんじゃないかと私は勝手に思っていて。」
「(日本の場合はどっちに比重があるかという問いに対して、)それはやっぱり日本の国は安全性を重視する立場は私は他の国に比べてあるんじゃないかなというのはありますし、それは私も絶対に安全なものを作りたいという思いはあるので。」

1日でも早くワクチンを世に出したい、一方で安全性は譲らない、国産ワクチンを巡る葛藤は続きます。

赤畑さんによれば、承認に向けてもう一つ大きな壁があるそうです。
それは現在のワクチンの接種が進んでいるために必要な治験者の確保がより難しくなっているということなのです。
ですから、そこが国産ワクチンの開発の今後の新たな課題となっています。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

また5月17日(月)放送の「あさチャン!」(TBSテレビ)でも同様のテーマについて取り上げていましたが、新型コロナワクチンのこれからの課題について、国際医療福祉大学の松本哲哉主任教授は以下の2つをあげています。
・マイナス80℃での保存の管理が難しい
・有効性・安全性の評価に時間がかかる

今回ご紹介した画期的な国産新型ワクチンの特徴を以下にまとめてみました。
・少量接種なのでワクチンの製造が非常に楽になる
・素早く多くの人に供給出来る
・接種した時の副反応が非常に軽減される可能性が高い
・来年にも承認申請を終えて、ワクチン接種出来る可能性がある

このように、今回ご紹介した画期的なワクチンは来年にも接種出来る可能性があるといいますが、以下の3つの課題があるといいます。
・国によるワクチンの承認を巡って、日本の場合は安全性重視なのでその分承認まで時間がかかる
・必要な治験者の確保が難しい
・マイナス80℃での保存の管理が難しい

このように今回ご紹介したワクチンはとても画期的で素晴らしいワクチンなのですが、課題もあり、実際にワクチン接種出来るまですんなりとは行かないようです。
しかし、国がその気になってあらゆる面でバックアップすれば、その分早くワクチン接種にこぎつけるはずです。
しかも、一旦ワクチン接種が可能になれば、これまでのワクチンに比べて多くの面で優れているのです。
更にマイクロニードルを利用したワクチン(参照:アイデアよもやま話 No.5005 手首にシートを貼るだけの抗体検査!)の技術と組み合わせれば、より一層ワクチンを接種し易くなります。

一方、新型コロナウイルスは新たにより一層感染力の強い変異ウイルスの登場による世界的な感染拡大が起きており、今後とも次々に変異ウイルスが登場してくる可能性があります。
ですから、これらの変異ウイルスの感染拡大に伴い、新たなワクチン開発に迫られ、より広範囲に、より速やかなワクチン接種が求められます。
ということで、何とか1日も早く今回ご紹介したワクチンの登場を願いたいと思います。
そうすれば、人類はこれまで専門家が予想していた以上に短期間で新型コロナウイルスの終息を迎えることも夢ではなくなるのです。


(追記)

8月25日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で画期的なワクチン開発のその後の進捗状況について取り上げていたのでご紹介します。 

大分大学は新型コロナワクチン「レプリコン」の治験を早ければ10月半ばから始めると発表しました。
「レプリコン」は創薬ベンチャーのVLPTジャパンが大分大学などと共同開発している国産ワクチンです。
最初の治験では45人にワクチン(偽薬を含む)を投与し、効果や安全性を確かめる予定です。

 
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