GAFAMについては、No.4800 ちょっと一休み その745 『コロナ禍で膨張するGAFAM!』でもお伝えしましたが、8月20日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で別な角度から取り上げていたのでご紹介します。
アップルの時価総額が8月19日、一時2兆ドル、約212兆円に達しました。
2018年8月に1兆ドルを突破してからわずか2年で倍増したかたちです。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴うデジタル化の加速で業績が拡大しました。
世界の上場企業で時価総額が2兆ドルに達したのはサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラコムが昨年12月に記録して以来2社目です。
こうした状況について、番組コメンテーターでピクテ投信投資顧問 シニア・フェローの市川 眞一さんは次のようにおっしゃっています。
「アップルを中心とした、例えばGAFA、それからテスラなんかが上場しているナスダックなんですけども、このナスダック総合指数をより広範な銘柄が入っているS&P500指数で割ってみると、昨日(8月19日)現在、3.30だったんですが、これITバブルの時、2000年3月3日に3.49というところがありまして、バブルが崩壊したわけなんですけども、今そこに接近しているんですね。」
「背景は多分2つあるというふうに考えていまして、一つはまさに新型コロナウイルスの感染拡大のもとで世の中、社会が変化していくんじゃないか、それはリアルからバーチャルへ、それからフェイストゥフェイスからリモートへと、そこで活躍出来る企業に投資資金が集まっているということ。」
「そしてもう一つ重要なことはこれも新型コロナウイルスのもとで経済の落ち込みを抑制するために金融緩和が行われていて、ゼロ金利で大量のお金が市場に供給されていますので、これがこういった銘柄にリスクマネーとして投資がされているということだと思うんですね。」
「(今後もこの流れは続くのかという問いに対して、)そうですね。」
「ただいずれアメリカの新型コロナウイルスの問題が終息する中で金融政策が正常化していく、そのプロセスの中でもしかするとバブル崩壊ということになるかもしれないですけども、ただ忘れてはいけないのはITバブルも崩壊しましたが、その時に勝ち残った銘柄が今のGAFAであるということですね。」
「今、市場で活躍している銘柄の中に10年後、20年後のアップルがあるのかもしれないですね。」
また、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「日本人としてはちょっとショッキングなデータを3つ紹介しますね。」
「まずアップル、212兆円の時価総額、これは何に匹敵するか、これは日本の時価総額、上位32社の合計、トヨタもソニーもソフトバンクもメガバンクも入っていますが、束になってもかなわない。」
「で、GAFAプラスマイクロソフト、GAFAM、5社の時価総額の合計は742兆円で、東京証券取引所の全上場企業の時価総額合計、638兆円よりも多い、たった5社で。」
「そしてテスラの時価総額、37.1兆円、トヨタの時価総額35.4兆円を超えたというニュースがありましたけれども、今や自動車メーカー、9社、これを合計してもかなわない。」
「(このデータは衝撃的だが、なぜアメリカと日本で差が開いてしまったのかという問いに対して、)一言で言えば新陳代謝の差、特に今回コロナで分かりましたけども、デジタルシフトですね。」
「ここで成長分野にヒトもカネもダイナミックにシフトしていく、その力が足りないというところがはっきりしているということですね。」
「(今こそ変化の時かも知れないのではという問いに対して、)そう思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して、DXを大きな柱として、世界的に企業を取り巻く技術的な環境が大きく変わろうとしているとあらためて思います。
そして、とても重要なことは、世界的なDX化の進展は今後とも増々世界レベルでの一極集中をもたらすということです。
そして、新型コロナウイルスの感染拡大はDX先進企業にとって追い風になっており、一方でDXへの取り組みが不十分な企業にとっては死活問題になっているのです。
なお、番組ではGAFAMと日本企業との比較を以下のように伝えています。
・アップルの時価総額が8月19日、一時2兆ドル、約212兆円に達した
・世界の上場企業で時価総額が2兆ドルに達したのはサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラコムが昨年12月に記録して以来2社目である
・アップルの時価総額、212兆円は日本の時価総額、上位32社の合計を超えている
・GAFAプラスマイクロソフト、GAFAM、5社の時価総額の合計は742兆円で、東京証券取引所の全上場企業の時価総額合計、638兆円を超えている
・テスラの時価総額は日本の自動車メーカー、9社の合計を超えている
さて、アップルの時価総額が2兆ドルに達したのは、サウジアラビアの国営石油会社、サウジアラコムが昨年12月に記録して以来2社目ということですが、この事実は今後の世界経済の流れを象徴していると思われます。
というのは、エネルギーと言えば、化石燃料、中でも石油はその中心で世界的に経済的な影響力がありました。
しかし、今や石油などの化石燃料は地球温暖化や環境破壊の元凶と見られ、世界的に再生可能エネルギーへのシフトが叫ばれています。
ですから、化石燃料ビジネスは長い目で見れば衰退産業に分類されるのです。
一方、デジタル化、すなわちDXは地球温暖化対策としても有効であり、国や企業などの業務の大幅な効率化、あるいは国民の暮らしの向上に貢献出来ると見込まれているのです。
こうしてDXは今や世界的に大きな潮流となりつつあり、しかもコロナ禍がこうした動きを加速させるエンジンとなっているのです。
そこで投資機関はこうした流れを敏感に感じ取ってその代表的な企業への投資を加速させているというわけです。
しかし、一方で市川さんの指摘されているように、現在の株高の大きな要因の1つは新型コロナウイルスのもとで経済の落ち込みを抑制するための世界的な金融緩和と言われています。
確かにそうかもしれません。
そして、コロナ禍の収束が明らかになって一時的には金融引き締めによるバブル崩壊が起きる可能性はあります。
しかし、それでもDXに向けた世界的に大きな流れを止めることは出来ないのです。
この流れに乗り遅れた国、あるいは企業は衰退していくしかないと思うのです。