2020年07月16日
アイデアよもやま話 No.4696 新型コロナウイルス治療薬に挑む日本企業の最前線 その2 花王の取り組み!

前々回まで2回にわたってPCR検査関連の記事についてご紹介してきましたが、前回、今回と新型コロナウイルス治療薬に挑む日本企業の最前線について2回にわたってご紹介します。

2回目は、6月2日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)を通して、花王の取り組みについてのご紹介です。 

 

今回は、製薬会社ではない意外な日本企業、花王株式会社(東京・中央区)の挑戦です。

洗剤やスキンケア商品などを手掛ける花王は、商品開発の一環としてウイルスや菌の独自研究を続けてきたのですが、新型コロナウイルスの封じ込めにつながるある発見が今、期待を集めています。

神奈川県川崎市、羽田空港からほど近いところにある花王の安全性科学研究所では、洗剤などの商品開発のため、微生物やウイルスの研究を独自にしています。

新型コロナウイルスの問題を受け、3月から急きょ研究に乗り出したのです。

開発グループリーダーの森本 拓也さんは次のようにおっしゃっています。

「こちらが今回発見したVHH抗体になります。」

「新型コロナウイルスの感染を抑制する能力があることを確認出来ています。」

 

新型コロナウイルスを抑えるという、このVHH抗体、意外なところから発見したといいます。

森本さんは次のようにおっしゃっています。

「花王は衛生に係わる様々な商品を世の中にお届けをしています。」

「その中で、菌やウイルスの研究はこれまでずっと行ってきています。」

「アルパカがつくる抗体の遺伝子の情報を用いまして見つけることが出来ました。」

 

ラクダ科の一種、アルパカが持つ固有の抗体を調べたところ、今回の発見につながったということです。

スパイクタンパク質という突起を持つ新型コロナウイルスが人の肺の細胞と結合することで感染します。

VHH抗体はこのスパイクタンパク質にくっつく性質があり、ウイルスをブロックしてくれるのです。

花王は北里大学などと共同で新型コロナウイルスを使い、抗体の実験をしてきました。

感染の危険があるため、実験はロボットを使って行われました。

試験機器の中央の、人の生きた細胞が入った試験官にウイルスとVHH抗体を注入して、反応を確認します。

5日後、試薬を使って細胞を青く色づけました。

VHH抗体を混ぜた試験官は青く染まりましたが、ウイルスだけの方は反応しませんでした。

ウイルスのみの試験官では、細胞は死滅してしまい、残骸しか残っていません。

しかし、VHH抗体を混ぜた方は、青く染まった細胞が正常に残っています。

抗体がウイルスの細胞への感染を防いだということです。

 

このVHH抗体にはどんな可能性が秘められているのでしょうか。

森本さんは次のようにおっしゃっています。

「VHH抗体ですけども、治療薬とか検査薬に使うのに有望なものが得られていると考えてはいます。」

「新型コロナウイルスに関しては、変異体が出て来ているという情報もあると思いますけども、(ウイルスの)変異に対しても迅速に対応出来る特徴があると考えます。」

 

しかし、なぜ花王がこうした分野の研究に取り組むのでしょうか。

長谷部 佳宏専務は次のようにおっしゃっています。

「花王はですね、元々モノを洗うということが本業でして、モノを洗うことは人にとって危害があるもの、菌とかウイルスとか、そういうものを落とす研究を大切にしているわけです。」

「実は、製薬会社さんではなくて、(ウイルスの研究は)我々の方が本業かもしれないと思っているわけです。」

 

製薬会社と異なるアプローチに、専門家である日経バイオテクの坂田 亮太郎編集長は次のようにおっしゃっています。

「今回の花王の事例は非常に示唆に富むと考えております。」

「これまでの常識なら花王がウイルスを撃退する抗体を発見するというのは誰も考え付かなかったと思います。」

「新型コロナウイルスの脅威はまだまだ過ぎ去ったわけではありませんので、どんなアイデア、どんな技術が生かせるかはまだまだ全然分かっておりません。」

「未曾有の危機を前に、自分なら何が出来るか、目の前の課題を自分事と捉えて行動した結果が今回の成果だったと言えると思います。」

 

花王は今後、製薬会社などと連携し、治療薬の開発をサポートするとしています。

なお、花王によりますと、既に製薬会社や研究機関などから今回発見した抗体で、新薬の開発を進めたいという要望が寄せられているということです。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

洗剤やスキンケア商品などを手掛ける花王は、商品開発の一環としてウイルスや菌の独自研究を続けてきたといいますが、こうした事実は知りませんでした。

しかし、その花王が新型コロナウイルスの問題を受け、3月から急きょ研究に乗り出したというのはこうした事実からうなずけます。

そして、3ヵ月ほどで、ラクダ科の一種、アルパカが持つ固有の抗体を調べたところ、VHH抗体の発見につながったというのですからとても短期間での発見と言えます。

 

花王には既に製薬会社や研究機関などから今回発見した抗体で、新薬の開発を進めたいという要望が寄せられているということですので、是非共同で早期の治療薬の開発を目指して取り組んでいただきたいと思います。

 

さて、ダチョウは驚異的な免疫力を持っており、怪我をしても傷の直りが早いといいますが、アイデアよもやま話 No.1283 ダチョウが人類を救う?で、ダチョウに無毒化したインフルエンザウイルスを注射して抗体を大量生産する取り組みについてお伝えしました。

ということは、このアイデア同様に、ダチョウやアルパカに無力化した新型コロナウイルスを注射して抗体を大量生産する研究をする価値はあると思います。

もし、この研究が成果をあげれば、回復した感染者の血液を収集するよりもはるかに効率よく抗体を大量生産出来るようになります。

ちなみに、今回、花王はアルパカが持つ固有の抗体を調べて今回の発見につなげたといいますから、アルパカもダチョウと同様に驚異的な免疫力を持っているのではないかと思われます。


 
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