メガソーラーの弊害について、以前アイデアよもやま話 No.3437 メガソーラーが抱えるジレンマ!でお伝えしたことがあります。
そうした中、3月12日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でメガソーラーの光と影について取り上げていたのでご紹介します。
東日本大震災から9年、原発、火力から再生可能エネルギーへと躍進を続ける現場の光と影を番組で取材しました。
津波と原発事故に襲われた福島県南相馬市の海岸線を進むと無数の太陽光パネルが見えてきました。
ここで稼働するのが、太陽光パネル30万枚を超える県内最大のメガソーラー、南相馬 真野右田海老
太陽光発電所です。
住友商事などが開発、2ヵ所で約3万世帯分の電力を賄うこの地は福島のシンボルと言われています。
目指すは2040年の再生可能エネルギー率100%です。
福島県庁企画調整部エネルギー課の竹内 正志主幹は次のようにおっしゃっています。
「復興計画の一つとして、再生可能エネルギーの飛躍的躍進と位置付けて、“再生可能エネルギー先駆けの地”の実現を目指す。」
現在、再生可能エネルギー率は目標の30%を超えました。
中でも太陽光発電は2011年から約23倍に急拡大しています。
この取り組みに県民のある女性は次のようにおっしゃっています。
「勿論、火力や原子力を使わないでやっていけるのが一番だとは思います。」
「自然エネルギーだけでやっていけるのが。」
また別の女性は次のようにおっしゃっています。
「子どもたちがこれから大きくなって、またその次の世代とかにつながっていけばいいなとは思います。」
福島県で急速に普及しているメガソーラー、その意外な場所がありました。
二本松市内にあるゴルフ場「サンフィールド二本松GC」は震災後の2012年に閉鎖しています。
震災後、県内の多くのゴルフ場が閉鎖、原発事故での土壌汚染が主な要因でした。
そして今、どうなったのか、クラブハウスから連なる大量の太陽光パネル、日照条件の良い県内9つのゴルフ場のコースが次々にメガソーラーに変わったのです。
しかし今、光とともに影の側面もあります。
いわき市で起きていたのが、メガソーラーの崩壊です。
大雨で斜面が崩れ、通学路に土砂が流れ込みました。
小学校のすぐ横でも土砂崩れが発生、保守点検業者は復旧工事を約束しましたが、こちらではその形跡はありません。
更にいわき市内の別の場所では、昨年10月にメガソーラーで初の違法案件となりました。
そこで今も暮らす住民は次のようにおっしゃっています。
「(自宅の家の外壁を指して、)ここまで来たんですよね、土砂が。」
「これ全部やられたまんまです。」
番組ではその企業に取材を依頼、メールで回答が来ました。
その分面には以下の記述がありました。
1日も早く是正工事を完了させ、皆様の不安を一日でも早く払拭できるよう誠心誠意努めてまいる所存です。
しかし、その企業の登記簿を調べると、メールの企業は2年前に所有権を手放し、別の企業に移転されていることが分かりました。
専門家はこうしたメガソーラーの転売がトラブルにつながっていると指摘します。
環境エネルギー政策研究所の山下 紀明主任研究員は次のようにおっしゃっています。
「(発電所を)建てて売る企業と自分では建てる気はなくて、売ってしまうと。」
「それはババ抜きのように問題があるところが売られて、またそこを誰かが見つけて買ったところを問題でまた売られる。」
太陽光発電の普及を加速させたのが2012年の、国による固定価格買取制度、FITでした。
高い買取価格に税の優遇、補助金制度も加わり、10%を超える利率の投資を加熱、“ソーラーバブル”と呼ばれました。
その後、買取価格が年々下がり、稼働を中止したケースも多発しました。
こうした状況について、山下さんは次のようにおっしゃっています。
「資本主義の社会の中で、再生可能(エネルギー)を増やすとなると、一定の利益が出ることは当然必要だと思うんですね。」
「ただ、それが非常に高い利幅の時期があって、それが投資案件に使われてしまったというところは非常に残念だなと思っていますし、トラブルの元になっていると思っています。」
こうした中、福島県に衝撃がありました。
以下の内容を含んだ“脱ソーラー宣言”をした自治体が現れたのです。
大規模太陽光発電施設の設置を望まないことをここに宣言する。
それがNPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟している大玉村です。
それは村最大の資源を守るという苦渋の決断でした。
押山 利一村長は次のようにおっしゃっています。
「再生可能エネルギーに反対しているわけでもないし、太陽光発電についても当然進めるべきものだと認識はしてますけど、大規模太陽光発電が自然景観を著しく損なう心配が出て来た。」
その現場に行ってみると、大玉村役場の武田 栄輝さんは次のようにおっしゃっています。
「ここが村に何ヵ所か、広くパネルが設置してある場所の一ヵ所になります。」
「驚いたというよりも、なんでここを選んだのかというのが不思議な、違和感ですね。」
村の人たちも知らないうちにメガソーラーが相次いで造られたのです。
森を切り開き、斜面に造られたメガソーラー、実は森林の場合、農地のような規制する法律がなく、村や住民への事前説明も義務ではないというのです。
押山村長は次のようにおっしゃっています。
「私が国に求めたいのは、許可をする前にこういう事業者からこういう申請が出ているんだけど、村としての意見はどうなんだという、事前認可の前に村の方にそれを知らせて、村の意見を聞くと。」
「20年後に確実に廃棄の段階で撤去していただけるのかという心配ももう一つ大きな心配として持っているんですね。」
大玉村は昨年12月、条例で新規のメガソーラー建設を規制しました。
一方、常磐道沿いに広がるメガソーラーがあります。
福島第一原発のある大熊町、作られた電力は県外ではなく、全て地元のためのものです。
新たなエネルギーのサイクルが始まっています。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
“脱原発”、“脱化石燃料”を目指すうえで、太陽をはじめとする再生可能エネルギーによる発電へのシフトはとても重要です。
しかし、同時に森林保護など環境への配慮も欠かせません。
ところが、メガソーラーを設置するにあたり、森林の場合、農地のような規制する法律がなく、村や住民への事前説明も義務ではないというのです。
こうした事実にはビックリです。
福島第一原発事故の直後で、政府は環境よりも電力の確保を優先した結果の政策と思われますが、それにしても十分な規制がなく、村や住民への事前説明も義務化されない中で、FITの導入で高い買取価格に税の優遇、補助金制度も加わり、10%を超える利率の投資を呼び込んだのですから“ソーラーバブル”と呼ばれるほど投資が過熱したのは当然です。
また、番組を通して、メガソーラー関連業者の中には、利益優先で、集中豪雨などによる近隣住宅の被害やメガソーラーの撤去費用などを考慮していないところもあるのではないかという心配もあります。
また、FITにより当初のメガソーラーでは10%を超える利率が見込まれたというのも業者の利益を優先した偏った政府の政策と言えます。
そのために、一般家庭には毎月「再エネ発電賦課金」という名目で電力料金が上乗せされて電力会社より請求されているのです。
ちなみに、我が家での再エネ発電賦課金の4月分の金額(税込み)は1359円でした。
2年前の4月分は805円でしたから、さりげなくとでもいいますか、電力料金は2年で500円以上も値上がりしていたのです。
ということで、政府の進める政策は必ずといっていいくらい光と影、すなわちメリットとディメリットがあり、しかもそのための資金の原資は税金です。
ですから、政策決定に携わる政治家、中でも総理大臣は国全体を俯瞰する視点からバランスを考慮した政策決定をしていただきたいと思います。