地球温暖化問題については、これまで何度となくこのブログで取り上げてきました。
そうした中、1月13日(月)放送の「BS1スペシャル」(NHK総合テレビ)で「気候クライシス」をテーマに取り上げ、地球温暖化問題の最新状況について伝えていました。
そこで4回にわたってご紹介します。
2回目は、大地の劣化、および土地を巡る紛争の危機についてです。
国際社会が有効な対策を打ち出せない中、大地にも気候変動の危機が迫っています。
陸地の気温は海の倍のスピードで上昇し、土地の劣化が急速に進んでいます。
IPCCの副議長、アフリカ・マリ出身のヨウバ・ソコナさんが中心となり2019年8月、地球温暖化が土地に与える影響についての報告書「IPCC土地関係特別報告書」をまとめました。
報告書によると、世界各地で干ばつなどが発生、水や食料の確保が困難となる乾燥地の人口は、2℃上昇というように温暖化が進めば、2050年までに2億2000万人に達すると予測しました。
ソコナさんは次のようにおっしゃっています。
「今、少なくとも地球上の土地の4分の1が劣化しています。」
「我々人間が無制限に森林を伐採し、土地を耕し、作物を消費してきたことも影響しているのです。」
「土地の劣化、砂漠化は差し迫った問題です。」
「人々の暮らしに大きな打撃を与えることになります。」
(2019年までの)この10年では、南アメリカ、アフリカ中央部、アジアの一部などが干ばつに見舞われています。
温室効果ガスの排出が続くと、1.4℃〜3.1℃の気温上昇で今世紀末(2080年〜2099年)には世界各地で干ばつが深刻化、50年に一度の干ばつやそれ以上の規模の災害が増加すると予測されています。
今、ソコナさんが最も懸念するのがアフリカのサハラ砂漠の南に位置するサヘル地域です。
サヘル地域の一つ、ブルキナファソの農村地帯には、10年前まで畑が広がっていました。
しかし、近年干ばつが多発し、毎年国土の2%、50万ヘクタールが砂漠化しています。
更に、激しい集中豪雨で洪水が頻発し、草や木が流され、土地が水を溜めこむことが出来なくなりました。
トウモロコシの収穫量は急激に減少、今、子どもの10人に1人が深刻な栄養失調に苦しんでいます。
食糧危機にさらされる乾燥地の人々、ソコナさんが更に心を痛めているのが農業従事者の自殺です。
近年、干ばつが著しいインドでは、綿花や米などの不作が続き、自殺に追い込まれる農家が相次いでいます。
借金を抱えた農家が銀行ローン免除の救済措置を求める大規模なデモも頻発しています。
支援団体の集会に集まった遺族たちが窮状を訴えました。
参加したある女性は次のようにおっしゃっています。
「9月の豪雨のせいで、綿畑は完全にやられました。」
「そのせいで、夫は毒を飲んで自殺しました。」
また、別の女性は次のようにおっしゃっています。
「毎日、借金取りが嫌がらせにやって来ます。」
「原因は、私たちの地方を襲った深刻な干ばつです。」
こうした状況について、ソコナさんは次のようにおっしゃっています。
「土地が生産性を失い、もはや人間を養えなくなった時、それは社会の大惨事をも招くのです。」
更に、土地の劣化が民族間の紛争にまで発展することも懸念されています。
IPCCの副議長、アフリカ・マリ出身のヨウバ・ソコナさんがその悲劇の例として見ているのが2019年3月、祖国のマリで起きた事件、農耕民族、ドゴニ族が暮らす中、焼き討ちに遭い、100人近い村人が殺されました。
襲撃したのは牧畜民族のフラニ族だと見られています。(詳細はこちらを参照)
ドゴニ族のある男性の老人は次のようにおっしゃっています。
「若者から年寄りまで、子どもも妊婦までも殺された。」
かつて、農耕民族のドゴン族と牧畜民族のフラニ族は土地や水を分け合い、それぞれの暮らしが成り立っていました。
しかし、急速な干ばつで利用出来る土地が減少、その土地を巡って衝突が激しくなりました。
ソコナさんは、気候変動による危機の根底には、構造的な不平等が存在していることを理解して欲しいといいます。
ソコナさんは次のようにおっしゃっています。
「最も苦しむのは、温室効果ガスの排出量が少ない貧しい地域、貧しい人々、貧しい国々です。」
「日本での排出が遠く離れた人々の暮らしに大きな影響をもたらすことを想像して欲しいのです。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきましたが、以下にその内容を要約しました。
・世界各地で干ばつなどが発生、水や食料の確保が困難となる乾燥地の人口は2℃上昇で2050年までに2億2000万人に達すると予測されている
・今、少なくとも地球上の土地の4分の1が劣化しているが、我々人間が無制限に森林を伐採し、土地を耕し、作物を消費してきたことも影響している
・温室効果ガスの排出が続くと、1.4℃〜3.1℃の気温上昇で今世紀末(2080年〜2099年)には世界各地で干ばつが深刻化、50年に一度の干ばつやそれ以上の規模の災害が増加すると予測されている
・アフリカのサハラ砂漠の南に位置するサヘル地域の一つ、ブルキナファソの農村地帯には、10年前まで畑が広がっていたが、近年干ばつが多発し、毎年国土の2%、50万ヘクタールが砂漠化している
・更に、激しい集中豪雨で洪水が頻発し、草や木が流され、土地が水を溜めこむことが出来なくなっている
・トウモロコシの収穫量は急激に減少、今、子どもの10人に1人が深刻な栄養失調に苦しんでいる
・近年、干ばつが著しいインドでは、綿花や米などの不作が続き、自殺に追い込まれる農家が相次いでいる
・更に、土地の劣化が民族間の紛争にまで発展することも懸念されている
・その悲劇の例として、2019年3月、マリで起きた事件では、農耕民族、ドゴニ族が暮らす中、焼き討ちに遭い、100人近い村人が殺された
・気候変動による危機の根底には、構造的な不平等が存在している
・最も苦しむのは、温室効果ガスの排出量が少ない貧しい地域、貧しい人々、貧しい国々である
・日本での排出が遠く離れた人々の暮らしに大きな影響をもたらしている
以上、要約しましたが、水や食料の確保が困難となる乾燥地の人口は2℃上昇で2050年までに2億2000万人に達すると予測されている、また1.4℃〜3.1℃の気温上昇で今世紀末には世界各地で干ばつが深刻化、50年に一度の干ばつやそれ以上の規模の災害が増加すると予測されていることを私たちは重く受け止めなければなりません。
しかも、こうした流れの中で、既に自殺に追い込まれる農家や土地の劣化が民族間の紛争にまで発展するケースも出て来ているのです。
この延長線上で資源の確保を求めて国家間の紛争にまで発展するリスクも出てきます。
しかも、最も苦しむのは、温室効果ガスの排出量が少ない貧しい地域、貧しい人々、貧しい国々であるという現実にも私たちは目を向けるべきです。
ということで、地球温暖化は既にリスクではなく、現実の問題となってどんどんその被害は増大しつつあるのです。
以前、江戸時代から言われている“三方良し”をもじって“五方良し”という私の造語をご紹介しましたが(参照:No.4134 ちょっと一休み その666 『これからの時代のキーワード その4 ”五方良し”』)、私たちは次の世代以降の人たちのためにも地球温暖化の阻止に向けて真剣に向き合わなければならない瀬戸際に立たされているのです。