2019年11月26日
アイデアよもやま話 No.4496 通貨の3つの機能から見た仮想通貨の危うさ!

仮想通貨からの不正流出がたびたび報じられており、止まりそうもありません。

そうした中、7月12日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で通貨の3つの機能について取り上げていたのでご紹介します。

 

仮想通貨業者、ビットポイントジャパンは7月に35億円分の仮想通貨が不正に流出したと発表しました。

こうした状況について、番組コメンテーターでモルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。

「新しいこと(仮想通貨)が市場に出ると、こういうこと(不正流出)があるなと思いますけど、仮想通貨が本当に通貨になるかどうかがちょっと気になるところですけども、通貨になるという条件が実は3つありますね。」

「で、(1番目は)価値の保存機能ですね。」

「(仮想通貨は)盗まれて保存されないんですね。」

「だからちょっとこれが危ないなと思いますね。」

「もう一つ(2番目)は交換機能ですね。」

「例えばコンビニに行ってモノを買いますね。」

「あんまり仮想通貨入ってないです。」

「ちょっと交換機能をまだ果たしていないなということです。」

「3番目は価値の尺度機能、ドルの価値とかビットコインの価値とかあんまり言われてないんですね。」

「なのでちょっと本当に仮想通貨を通貨として機能するかということですと、残念ながら“×、×、×”、今はね。」

「これからは、うまく開発するならうまくいくかなという可能性もまだあります。」

「(そのためには更なるイノベーションが必要ではという問いに対して、)そうです。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

さて、上記の1番目の価値の保存機能についてですが、7月16日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で流出した仮想通貨の行先について取り上げていたのでご紹介します。

 

ビットポイントは2016年に創業し、六本木に本社を構えます。

昨年まで社員はわずか18人でしたが、今年110人まで拡大した急成長企業です。

口座を持つ11万人のお客から約160億円分の仮想通貨を預かっています。

 

ビットポイントによると、お客から預かった仮想通貨のうち、87%はインターネットにつながっていないコールドウォレットと呼ばれる場所に置かれていました。

ですが、犯人は何らかの方法で鍵を入手し、インターネットにつながっているホットウォレットから残りの13%の仮想通貨を盗み出したのです。

 

今回流出したビットポイントジャパンの35億円以外にも昨年1月にはコインチェックで約580億円、9月にはテックビューロで約70億円と、この1年半で約700億円分の仮想通貨が流出、警視庁などが捜査にあたっていますが、いずれの事件も犯人の逮捕には至っておりません、

また、国連は今年一部の流出事件について、北朝鮮が国家ぐるみで行ったとの報告書を公表しています。

ビットポイントは、盗まれた仮想通貨はお客に全て返金するとしましたが、その時期や方法は未定といいます。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

フェルドマンさんは、仮想通貨が通貨になると条件として、価値の保存機能、交換機能、価値の尺度機能の3つを挙げています。

そして、今のところ、この3つの条件全てについて満たしていないとおっしゃっています。

しかし、No.4446 ちょっと一休み その688 『暗号資産の信頼性はまだ先!?』でもお伝えしたように、今や仮想通貨は世界的に投資先として注目されています。

また、ユーザーの立場からもとても利便性が高いのです。

更に、仮想通貨を含めた電子マネーの普及は国の脱税対策としてもとても有効に機能します。

ちなみに、韓国における電子マネーの100%近い普及の裏には政府の脱税対策があったと言われています。

また国内においては、消費増税により消費税が10%となり、その買い控え対策として電子マネーでの購入には「5%のポイント還元」制度を期限付きで導入しています。

ですから、近い将来、通貨の3つの条件を電子マネーそのものは概ねクリアしていくと見込まれます。

しかし、その電子マネーはクレジットカードも含めてとても種類が多く、クレジットカード以外の電子マネーの中には今のところ使えるお店が限られるという問題もあります。

ですから、電子マネーの世界は今はまさに戦国時代という状況です。

そして、フェースブックが導入すると言われているリブラは従来の仮想通貨にない価値の尺度機能も兼ね備えているといいます。

世界各国の政府は、このリブラの持つ可能性に脅威を感じており、同時にその運用上の危うさを指摘し、フェースブックに対していろいろな条件を突き付けています。

そして、フェースブックもこの条件を満たす方向にあります。

 

では戦国時代が今後どのように収束していくかですが、既存のクレジットカードと新興の電子マネー、そして仮想通貨の三つどもえの状況がしばらく続くと思います。

そして、その先は利便性、低コスト(振込料金など)、安全性などの観点でより優れているものがこの戦いを制すると思います。

 

なお、こうした動きの一方で、北朝鮮のように国家ぐるみ、あるいはテロ集団による仮想通貨に係わる犯罪行為の防犯対策がとても重要であることは言うまでもありません。


 
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