ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産、あるいは暗号通貨)については、これまでアイデアよもやま話 No.3395 仮想通貨が決済手段に!などで何度となくお伝えしてきました。
そうした中、7月1日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で暗号資産の信頼性について取り上げていたのでご紹介します。
一般的に仮想通貨と呼ばれている暗号資産の代表格であるビットコインは今年40万円弱で始まりましたが、3月辺りからジワジワと上がり始めて一時は140万円を超えました。
低空飛行を続けていたビットコインの上昇の背景に何があるのか、番組では中国で取材しました。
ビットコインに投資する中国人なら一度は訪れるという深圳の電気街、ビットコイン関連の電機メーカーも数多く集まる場所ですが、ここでも大きな変化が起きていました。
“中国のシリコンバレー”とも呼ばれる深圳、何でも揃うと言われるこの電気屋街には最新型のドローンや携帯電話の充電ケーブルばかりを扱う店もあります。
ここで今売り上げを伸ばしているのがビットコインを掘り当てるための“マイニングマシン”の専門店です。
このあるお店の店員は次のようにおっしゃっています。
「ビットコインが値上がりしたお蔭でお客さんが増えています。」
「1000台とか5000台とか買う人もいます。」
暗号資産の一つ、ビットコインはこうしたマシンがネット上での売り買いを記録することで成り立っていて、記録作業を行ったマシンの所有者は見返りにビットコインを得られます。
つまりビットコインの価格が上がれば上がるほどその報酬も大きくなる仕組みです。
これを金の採掘に例えてマイニングと呼び、その報酬を手にしようと世界中の投資家が最新のマシンを投入して競い合っているのです。
中には1台50万円の値が付くものもあるといいます。
上海市内のホテルで6月にビットコインで一獲千金を狙う投資家たちに向けたセミナーが開かれました。
そこでは次のようなプレゼンがされています。
「仮想通貨やその技術は未来のビジネスの基礎になります。」
中国で“ビットコイン投資熱”が再燃したのは今年の4月頃、米中貿易戦争などの影響で人民元安が進んだため、資金の投資先としてビットコインを買う人が増えた、と見る専門家もいます。
ある中国人投資家は次のようにおっしゃっています。
「短期的に値上がりすると思った。」
「早速お金をつぎ込んだ。」
およそ450万円相当の株を売り、ビットコインに替えたという人は次のようにおっしゃっています。
「株式投資の時代は既に過去のもの。」
「未来の投資がビットコインだ。」
「好きな時、場所で換金出来る。」
「(株より)ずっと便利だ。」
公式にはビットコインの取引が禁止されている中国で、こうした投資熱を支えているのがある“抜け道”の存在です。
実は中国政府は海外への資金流出を嫌って、2017年9月から国内の交換所でのビットコインの売買を禁止、これを受けて交換所側は海外に新たな交換所を次々と設立、国内の投資家を誘導する“抜け道”を作っていたのです。
更に新しいサービスを生み出す中国企業も現れていました。
5年前に設立された深圳のスタートアップ企業、パンダマイナーが今年本格的な販売を始めたのが“マイニングの代行サービス”です。
パンダマイナーの楊 笑COOは次のようにおっしゃっています。
「(自社の工場を指して、)我々の“マイニング工場”です。」
「24時間体制で管理しています。」
「投資家がマシンを預けて(マイニングを)依託出来ます。」
この工場には8万台を超える“マイニングマシン”がずらりと並んでいます。
四川省や内モンゴルの地区に工場を作り、山間部の水力を使った自家発電で電気代を日本の4分の1ほどに抑えました。
投資家のマシンを預かって管理する“マイニング代行”サービスの他、1口およそ1600円で自社のマシンを使ったマイニングの“採掘権”を投資家に販売しています。
サービスの利用者は50万人に達したといいます。
楊COOは次のようにおっしゃっています。
「中国の“土の利”を生かして、代行サービスを世界に売り出したい。」
「特に日本、韓国は最優先で、開拓したいマーケットです。」
ただ専門家は、中国政府がいつ更に規制を強化してもおかしくないと再燃するブームに警鐘を鳴らします。
岡三証券 上海駐在員事務所の酒井 昭治首席代表は次のようにおっしゃっています。
「人民元流出の手段にもなっていたということで、(中国政府の)ビットコインへの厳しいスタンスは変わっていないと。」
「実際にビットコインにこの段階から(投資する)というのは、非常に注意を持って見る必要が当然あるのかなと。」
ビットコインへと向かう投資の熱に中国政府がどう対応するのか、ブームの今後を大きく左右するかもしれません。
こうした状況に、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄教授は次のようにおっしゃっています。
「(暗号資産の先行きについて、)当面はまだ課題が多いと思いますね。」
「国の通貨と例えると分かり易いですが、今話題になっているビットコインですとかイーサリアムは通貨でいうといわゆる変動相場制に近いんですね。」
「ですから裏付けになる資産みたいなものが無くて、結果的に価格が変動し易いわけですね。」
「変動し易いっていうことは、逆に投機の対象になり易いわけです。」
「だから今の世の中を上がったり下がったりという不安定な状態になり易いわけですね。」
「それに対して、この1、2年はステーブルコインと言って、ある意味固定相場制みたいなものなんですが、特定のドルですとか、こういった通貨と相場を固定してしまう通貨が出て来ているんですね。」
「例えば、有名なのがテザーですとか、今度フェースブックなどが導入すると言われているリブラなわけですね。」
「これは価格のレートが固定されていますので、変化がないですからある意味非常に安定して決済に使える可能性が高いんですが、ただこれ逆に言うと、このコインの信頼性が必要なんですね。」
「裏付けになる資産が十分になくちゃいけない。」
「国と通貨でもかつてアルゼンチンとかインドネシアが固定相場制を入れてて、でも国の信頼性が無くなって来ると、やはり大きく不安がやってきて経済危機になることがあったんですね。」
「ですので、通貨も長い間新興市場の通貨って変動が多かったですよね。」
「それと同じことが暗号通貨の世界で起きているので、当面はまだ変動が多いだろうと見た方がいいですね。」
「(変動をどう抑えていくか、あとは信用、信頼性をどう確保していくか、)そのための技術と制度の整備が必要だということですね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
ビットコインなどの暗号資産は、世界共通の通貨として、銀行などを通さなくてもネット上で簡単にやり取り出来る、しかも手数料も不要というように大きなメリットがあります。
一方、投資の対象としても世界的に注目されており、資産としての信頼性に対する不安定感があります。
暗号資産は、それでもやはり通貨としての利便性は多くの面であります。
ですから、長い目で見れば今は発展途上でいろいろな問題を抱えていますが、暗号資産は世界の共通通貨としていずれ現在の通貨と同様のレベルの信頼性、あるいは安定性を持った世界共通の通貨として位置付けられるようになると思います。