7月12日(金)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で耳慣れない言葉、“ファクトフルネス”について取り上げていたのでご紹介します。
今年、日本で一番売れるビジネス書と話題になっている本「世界を正しく見る力 ファクトフルネス」、事実や最新の統計を基に物事を見る習慣をつけることを提案しています。
専門家とされる人たちでも自分の認識と世界の現状にずれがあることを示し、世界では既に100万部を超えるヒットになっています。
来日した、その著者の一人、アンナ・ロスリング・ロンランドさんは次のようにおっしゃっています。
「(人々の認識はなぜ現実とずれてしまうのかについて、)私たちはかつてないほど高い教育を受けるようになり、自分の無知に無頓着になっている。」
「それが落とし穴。」
「「もう知っている」と思い込み、知識やデータの更新をしなくなる。」
ただ、こうしたずれは恐怖や犯人探しなど、人間が持つ様々な本能から来るもので、解消するには時間がかかるといいます。
「人間はドラマチックな話が好き。」
「時間をかけ、社会が良くなることは忘れがち。」
「だから認識はずれていく。」
「知識のアップデートが重要と分かっても、真の実践は中々大変なこと。」
目まぐるしい社会の変化の中で、嘘の情報も拡散する現代、私たちが普段の生活で心がけることは何か、コツについて次のようにおっしゃっています。
「政治家が何か数字を出したら、他と比較し、読み解いてみること。」
「政治家は一部の数字を選んで使い、全体像を見せはしない。」
「政治家に全体像を望むのは期待薄。」
「残念だが、有権者が賢くならないと。」
番組コメンテーターでモルガン・スタンレーMUFG証券シニアアドバイザーのロバート・A・フェルドマンさんは次のようにおっしゃっています。
「私がこの本の13問のテストを受けた時に、4つしか正しく答えられなかったんですよ。」
「見事に“お猿さん”という結果ですよ。」
「で、この本は民主主義の基本を守ろうという意味が大きいと思いますね。」
「やっぱり、事実を確認するということは基本じゃないですか。」
「で、本に書かれている通り、人間の心理が邪魔になっちゃうんでうね。」
「1つは、やっぱり人間て嫌な事実は無意識に排除します。」
「もう1つは、都合の良い事実しか言わない癖があるんですね。」
「そうすると相手が隠したものを取らないといけないんですね。」
「結構大変ですね。」
「なので、やっぱり全ての事実をテーブルに載せて議論すべきだということですね。」
「ポピュリズムを抑制して、民主主義が勝つようにするという一つの方法ではないかと思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
確かに、何事においても事実をベースに物事を考えるということはとても大事だと思います。
しかし、事実を把握することは一見簡単そうですが、実はとても難しいと思うのです。
例えば、学校の歴史の教科書の内容でも、歴史に係わる全ての事項を記述することは出来ません。
また個々の国の政府の意向や価値観が反映されるのが一般的です。
そもそも全ての事項を把握することは誰にも出来ません、
なぜならば、現存する歴史書が必ずしも全ての事項を記述していることはありませんし、しかも時の政権の意向を酌んで、その暗部など都合の悪い事実は隠している可能性が否定出来ないからです。
また、日本の学校の歴史の教科書の見直しでも、坂本龍馬に関する記述が削除されたというように、その時代の価値観や時の政権の意向などにより内容は変わり得るのです。
一方、生徒たちはこうした教科書の内容を通して、歴史の事実を学んでいるのです。
こうした状況において、今回ご紹介した著書「世界を正しく見る力 ファクトフルネス」の指摘は以下の点においてとても的を射ていると思います。
・私たちは既存の知識やデータの更新をしなくなる傾向があること
・その結果、いつの間にか事実から遠ざかった情報に囚われてしまうこと
・しかも、自分の無知に無頓着になっていること
・嘘の情報も拡散する現代、私たちが普段の生活で心がけるべきコツ(対応策)について提案していること
また、フェルドマンさんの指摘されているように、私たち人間は嫌な事実は無意識に排除したり、都合の良い事実しか言わない癖があります。
ですから、どの世界においても「ファクトフルネス」の指摘に基づいて、謙虚に、そして常に事実とされる情報に対して、反対の立場も含めて複数の情報源に向き合うことがとても大切なのです。
ということで、「ファクトフルネス」の基本的な考え方は、フェルドマンさんも指摘されているようには民主主義の基本を守るうえで大いに参考にすべきだと思います。
一方、こうしてみると、以前にもお伝えしたように(参照:No.4416
ちょっと一休み その683 『偽情報の溢れるネット社会に求められる報道と一人ひとりに求められる要件』)ジャーナリストや報道機関の役割もとても重要です。
なぜならば、私たちはこうした情報に接することにより、事実かどうかは別として世間の動きを認識するからです。