以前、アイデアよもやま話 No.4333 ”多拠点生活”を支えるゲストハウス!で年間パスを購入すると、月額2万5000円でいつでも宿泊出来る都内の浅草橋にあるゲストハウスについてご紹介しました。
そうした中、2月18日(月)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で1ヵ月4万円の定額制で住み替え自由のサービスについて取り上げていたのでご紹介します。
1ヵ月当たり4万円の定額制で登録されているいろいろな家に住み替えることが出来る会員制のサービスが始まります。
地方で深刻化している“空き家”などの新たな活用法として自治体からの注目も集まっています。
ベンチャー企業の株式会社アドレス(ADDress)が4月から開始するサービスについて、佐別当
隆志社長は次のようにおっしゃっています。
「月額4万円で住居も光熱費もWi-Fiも家具もアメニティも全部揃っていると。」
「身一つで4万円でどこでも住める、誰もがセカンドハウスのような家を持てる・・・」
月4万円でどこでも住み替え放題になる定額制のサービス、その仕組みは以下の通りです。
全国の空き家や別荘など、使われていない物件をアドレスが買ったり、借りたりした後にリノベーション(管理・運営)し、会員に貸し出します。
会員は月4万円を支払えば、空いている部屋に住むことが出来ます。
ただし、一つの部屋に連続で住めるのは1週間です。
4月からのサービス開始と同時に全国11のエリアで入居が出来ます。
例えば千葉県南房総市の海辺に建つ物件はかつて民宿として営業していました。
今後、内装をリフォームしたうえで、3部屋を貸し出します。
お風呂やキッチンは住民同士で共有します。
物件の貸し手側には月10万円の賃料収入が入ります。
物件の貸し手である能津 美紀さんは次のようにおっしゃっています。
「沢山使っていただけると私たちもお家も喜ぶと思うので、いい活用方法だと思います。」
こうした活用方法の背景にあるのは、全国で急増する“空き家”の問題です。
全国の住宅に占める空き家の割合は、2013年は13%でしたが、2033年には27%を越すと予想されています。
こうした状況について、佐別当社長は次のようにおっしゃっています。
「(空き家は)これから10年で2000万戸を超えると言われているんですね。」
「持っているだけで赤字なんです。」
「「使ってくれることで状態が綺麗になる、リノベーションもしてくれる」となったら、基本的にはすごく喜ばれると思います。」
空き家問題に悩む自治体も期待を寄せます。
滋賀県大津市は、市内の空き家や未使用の企業の保養所を利用して地域の活性化を図る狙いです。
4月から利用出来る会員の募集枠30人に対し、既に1100人から問い合わせが来ています。
IT企業に勤める男性(50歳)は次のようにおっしゃっています。
「関東なら1時間半〜2時間ほどであれば、(会社に)通えるので、1週間ごとにいろいろな拠点を周りながら、回遊していくような・・・」
また料理家の西村 隆ノ介さんは次のようにおっしゃっています。
「民泊は制限も多かったりとか、一度きりで終わってしまうということもあるので、何回も自分が通うことで、地方でのつながりを増やせたらいいなと思っています。」
西村さんは、自分の店は持たず、定休日などで使われていない飲食店を借りて、東京都内や鎌倉などで不定期にお店を出しています。
西村さんは次のようにおっしゃっています。
「地方の方が作ったものだったりとか、農産物だったりとか、そういうものを使って地元で消費出来るようなお店をやったりとか、ワークショップをやらせていただいたりとか、なじんだ場所が地方にあると、すごく自分としても行きやすくなるかなと思っています。」
西村さんは、その地方ならではの素材を使った料理教室を開催したいと考えています。
アドレスでは、今後栃木県日光市や宮崎県日南市などでも拠点を展開する予定です。
佐別当社長は次のようにおっしゃっています。
「働く場所は縛られなくなりましたし、新しいライフスタイルが生まれてきていると思うんですけど、都心と地方を行ったり来たり出来る環境は僕らが提供したいなと思っています。」
番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山 章栄准教授は、次のようにおっしゃっています。
「(これから先、家に住むという概念自体変わってくるのではという問いに対して、)そうですね。」
「例えば、私の周りだと若い方が最近自動車に住みたくなったんですよ。」
「ですからキャンピングカーに人気が出たり、ミニバンなんかを改装してそこに住んで移動しながら住むことに憧れる方が出てくるんですね。」
「なので、これからの未来って、今日のVTRにあったように家を住み替えるか、自動車に乗って動きながら住むか、どっちかの未来が出てくるんじゃないかなと。」
「いずれにしても、今までの1戸の家に住むっていう概念は無くなっていくんだろうなと思いますね。」
「(ですから、」持ち物も身軽になるんだと思いますね。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
これまでの一般的な暮らしは、戸建て住宅やマンションを購入して、その後は一生涯そこで過ごしたり、あるいは賃貸でアパートやマンション、戸建て住宅に住んで、何度か住み替えるというようなライフスタイルでした。
そして、ある程度以上の収入のある方の中には、別荘を持ったり、会員制のリゾートクラブに入会して、年に何度かそこを利用するというようなものでした。
ところが、今回ご紹介したような暮らしは、1ヵ月当たりの料金が定額制で登録されているいろいろな家に住み替えることが出来る会員制のサービスを使用するというライフスタイルです。
しかも、今回ご紹介したアドレスの提供するサービスは月額4万円と、従来のアパートなどの賃貸と比べて半額程度と、これまでの賃貸料金と比べて明らかに安いのです。
更に、こうしたサービスが今後全国的にどんどん広がっていけば、食事は自炊ながらも普段の暮らしと別荘や会員制のリゾートクラブとをミックスしたような暮らしが出来るのです。
更にこうしたライフスタイルを可能にするのは、特にITやデザイン、あるいは執筆などの職業に就いているケースのように、どこでも働くことが出来る人たちの存在です。
同時に、今や国内外を問わず、どこでもコミュニケーションが取れるネット社会というとても便利な環境です。
そして、こうしたサービスのユーザーは住む環境の変化により、年間を通してワクワク感のある刺激に満ちた時間を過ごせます。
また、いろいろな地域での新たな出会いがあります。
そこから新たな仕事に結びついたり、友人が出来たり、中には将来の配偶者との出会いもあり得ます。
一方、こうした物件の貸し手側には毎月賃料収入が入ります。
そして、こうした物件は一般的に“空き家”であり、その所有者は毎月大なり小なり維持管理費用が発生しています。
ですから、これまで維持管理費用が発生していたのが、逆に維持管理をしてくれて、しかも毎月賃料収入まで入るというようなサービスの誕生は願ったり適ったりです。
なので、アドレスの展開するようなサービスには、今後とも全国の多くの“空き家”の所有者が貸し物件として登録してくると思われます。
しかも、全国の住宅に占める空き家の割合は増加傾向にあります。
ですから、地方で深刻化している“空き家”などの新たな活用法として自治体からの注目が集まるのは当然です。
各自治体は、こうしたサービスを積極的に後押しすることが期待出来ます。
そして、自治体としても以下のようなメリットが期待出来ます。
・“空き家”や利用客の少ない民宿や旅館、企業の保養施設、別荘などの有効活用
・ユーザーによる地域内での消費
・その地域での暮らしを気に入ったユーザーの定住
・若い世代のユーザーの住居者の増加による地域の活性化
ということで、今回ご紹介した定額制での住み替え自由のサービスは、新しいライフスタイルを可能にするだけでなく、“空き家”対策、あるいは地域の活性化にもつながる、とても有意義な、そして期待の持てる新たなビジネスと言えます。
なお、番組でも取り上げていましたが、中にはクルマで季節の変化を楽しみながら全国を移動して暮らす人たちも現れています。
ですから、長い目で見ると、今はこれまでとは違うライフスタイルで“新たな豊かさ”を切り開こうとしている局面にあるのかもしれません。
なお、今はこうしたライフスタイルに向けて、子どもの教育など、多くの課題がありますが、徐々にこうした課題も解決されていくと期待出来ます。