2019年06月07日
アイデアよもやま話 No.4349 パソナグループの新制度に見る新しいシニア人材の活用!

2月6日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でパソナグループシニアによる新しいシニア人材の活用について取り上げていたのでご紹介します。 

 

人材派遣大手のパソナグループは2月6日、4月入社の採用説明会を行いました。

その対象は60歳以上の定年退職をした人たちです。

人生100年時代と言われる中で、定年後の働き方は変わるのでしょうか。

 

「人生に定年無し! 生涯現役を目指す」という看板を掲げ、人材派遣会社のパソナグループは4月入社の採用説明会を行い、南部 靖之代表は次のようにおっしゃっています。

「本当の働き方改革が誕生するのではないかなと思っております。」

 

説明会の参加者の多くは60歳以上の定年退職者で、約100人の参加予定に対して200人が集まりました。

参加した元翻訳サービス経営者(69歳)は次のようにおっしゃっています。

「おじさん、おばさんたちに対しては、こういう環境は私の知っている限り初めて、良い試みだと思います。」

 

また、元製造業営業職(61歳)は次のようにおっしゃっています。

「(前の会社で)再雇用してもらった時に年収が半減しました。」

「この年収レベルで私が社会に貢献出来ることが他にあるのではないかというふうに考えました。」

 

今回、パソナグループは独自のシニア採用制度「エルダーシャイン」制度を作りました。

応募者は、採用後、契約社員となり、フルタイムや短時間勤務、曜日を選んで働くなど、自分の条件に応じた雇用契約を結びます。

この採用では、地方創生サービス、財務・人事などの専門職、そしてベンチャー起業支援の3つのコースに分かれて合わせて80人程度の募集を行っています。

今後、この制度で採用した人をグループ全体の5%程度まで増やす方針です。

南部代表は次のようにおっしゃっています。

「ゼロからの新入社員の気持ちでやると、そう思ってパソナグループに入ってくれれば、僕はもうそれだけで将来パソナグループにとってみても新しい人材の活用にもなりますし、本人たちも社会へ参加出来るという意味で喜んでくれると思います。」

 

番組コメンテーターで、A.T.カーニー日本法人会長の梅澤 高明さんは次のようにおっしゃっています。

「(再雇用の方も増えていますし、シニアの方の活躍も欠かせない社会になっている中、今考えておくべきことについて、)人事制度のあり方を抜本的に見直すタイミングだと思います。」

「一つ目がシニアの多様性、健康、経済、あるいは家族状況、これシニアになればなるほど個人差が大きくて、個々のニーズに合った多様な働き方の実現と同時に働きがいの実現、これが必要です。」

「しっかり働いても年金で損にならない仕組みも作る必要があります。」

「2つ目がモチベーション、再雇用で大幅に年収がダウンするケースが多くて、かつ面白味に欠ける仕事をやらされるというケースも多い。」

「で、仕事のアサインとか処遇の仕組みを少なくとも本当に能力のある人に対しては考え直す必要があると思います。」

「それから3つ目が働く人のスキル育成ですね。」

「人生100年時代で三毛作の時代ということになると、スムーズな転職のために若手、あるいは中堅の時から市場性の高いスキルをどれだけ身に付けさせることが出来るかというのが企業の競争力にもなってくるというふうに考えます。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

現在、一般的には60歳で定年退職になりますが、早期定年退職や会社の倒産、あるいは家庭の事情などでまだまだ働けるのに若くして職を失ったり、退職したりしてしまう人たちもおります。

一方で、現在、企業の方では特に中小企業においては後継者不足により存続を危ぶまれているところもあるといいます。

ちなみに、プロジェクト管理と日常生活 No.582 『中小企業の3分の1ほどが10年以内に廃業!?』でもお伝えしたように、日本には約380万社の企業がありますが、そのうち、およそ3分の1にあたる127万社ほどが後継者不足により今後10年以内に廃業する可能性があると言われています。

また5月7日(火)付けネットニュース(こちらを参照)によれば、経団連の中西 宏明会長(日立製作所会長)は、5月7日の定例会見で終身雇用について「制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と改めて持論を展開し、「雇用維持のために事業を残すべきではない」と、経営者に対して新しいビジネスに注力するよう訴えております。

 

そうした中、番組コメンテーターの梅澤さんがおっしゃっている、少子高齢化時代のシニア人材の活用における以下の3つの要件は、全くその通りだと思います。

1.個々のニーズに合った多様な働き方の実現と同時に働きがいの実現

2.モチベーション

3.現在働いている人のスキル育成

 

そして今回ご紹介したパソナグループ独自のシニア採用制度「エルダーシャイン」制度は、上記の3つの要件のうち、1番目と2番目に合致します。

パソナグループの独自のシニア採用制度「エルダーシャイン」制度では、応募者は採用後、契約社員となり、フルタイムや短時間勤務、曜日を選んで働くなど、自分の条件に働くことが出来ます。

ですから本人の健康状態や家庭の事情などで働く日や時間帯を選択出来るのです。

しかも、今やインターネットにより在宅勤務も可能な時代ですし、AIやロボットなどの活用により労働の負担も従来の働き方に比べて軽減されつつあります。

 

ということで、より多くの企業が「エルダーシャイン」のような制度を導入することにより、これまでは働きたくとも働けなかった高齢者が働くことが出来るようになるのです。

 

なお、高齢になっても働いている人たちは一般的に働いていない人たちに比べて長生きすると言われています。

ですから、高齢者に限らず、これまで働きたくても働くことが出来なかった人たちがより多く働ける環境が整えば、経済のみならず健康面でもメリットのある社会になると大いに期待出来ます。

同時に、今は技術革新のスピードが速く、時代の流れについていけずに会社が倒産してしまうリスクもこれまでに比べて高いですから、現在働いている人たちも新技術に即したスキルの育成が欠かせません。

勿論、こうした状況に対応した国の制度の見直しも必要になります。


 
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