昨年11月4日(日)放送の「NHKニュース7」(NHK総合テレビ)で耳慣れない 「仕掛け学」について取り上げていたのでご紹介します。
映画「ローマの休日」ですが、中でも有名なのは“真実の口”に手を入れるシーンです。
この“真実の口”がもし目の前にあったら、思わず手を入れてみたくなりませんでしょうか。
こんな気持ちを活用した、あるものが今話題になっています。
大阪大学医学部付属病院(大阪・吹田)にあの“真実の口”が置かれており、多くの皆さんが恐る恐る手を入れています。
実は、“真実の口”に手を入れると手指消毒剤が自動で噴射される仕掛けになっているのです。
手の消毒を口の中でしてもらおうと考えた背景には、病院が抱える悩みがあります。
以前から病院では、消毒液を設置していたものの、200人に1人程度しか使っていませんでした。
何とか消毒を徹底したいと採用したのが、このデザインなのです。
“開いた口には、つい手を入れてみたくなる”、そんな気持ちをうまく活用したのです。
こちらの木村 正病院長は次のようにおっしゃっています。
「これから寒くなってきて、手指の消毒はすごく大事なことです。」
「簡単に十分な目的を達せられると思います。」
このユニークな装置を考案した大阪大学大学院 経済学研究科の松村 真宏教授は、ついやってみたくなるような仕掛けで人の行動を変える「仕掛け学」を研究しています。
松村教授は次のようにおっしゃっています。
「「ああしなさい、こうしなさい」と言われると、あまり良い気持ちにならない。」
「不快な思いをすることなく問題が解決されるので、そういう世の中の方が幸せになっていいかなと。」
松村教授は、バスケットボールのゴールが付いたゴミ箱を開発しましたが、“ゴールがあると、ついモノを投げ入れてしまう”、その性質を利用し、“ポイ捨て”を防ぐ狙いです。
実際に大学内に設置したところ、通常のゴミ箱に比べ1.6倍のゴミが集まったといいます。
しかし、思い通りにならなかった仕掛けもあります。
人の動きに反応して黒目の部分が動くフクロウの絵です。
松村教授は次のようにおっしゃっています。
「誰かに見られている気がすると、人は悪い行動をしにくくなる。」
「置かせてもらえなくて、「気持ち悪い」と。」
「研究室にいつも置いています。」
お菓子の箱を使った封筒は、開け口が付いていると、つい開けてみたいと感じるということで、ダイレクトメールなどへの応用が期待されるということです。
こうした「仕掛け学」、実は身近な問題解決にも使えるのです。
オフィスなどで見かけるファイルボックス、それぞれの背表紙に斜線を1本ひいておくと、線がずれているとつい直したくなります。
松村教授によると、斜線という仕掛けが結果として整理整頓につながるのです。
身の回りでも使える「仕掛け学」、皆さんも活用してみてはいかがでしょうか。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して、まず思い出されたのは次の3つの言葉です。
一つ目は、高校時代に部活でやっていた柔道で有名な言葉、「押さば引け、引かば押せ」です。
2つ目は、中国の思想家、孫子の言葉、「敵を知り、己を知れば百戦危うべからず」です。
そして3つ目は、近江商人の言葉「三方良し」です。(参照:アイデアよもやま話 No.843 近江商人の教え! )
要するに、いずれも自分の意図するように、相手の行動をコントロールする極意と言えます。
「仕掛け学」もこうした考え方を現代風にアレンジした実践的な学問として位置付けたのではないかと思われます。
考えてみれば、テレビコマーシャルなども、いかにコマーシャルを通して売りたい商品をより多く販売させるかという一点が狙いなのです。
ですから、そのための「仕掛け」づくりにコマーシャル制作者はあれこれ頭を悩ましているのです。
ということで、あらゆる場面において「仕掛け学」の基本的な考え方は適用出来ると思います。
そしてうまく「仕掛け学」を活用することを常に心がけることによって、これまで以上に自分の目的を達成易くなるはずです。