2019年01月10日
アイデアよもやま話 No.4222 仮想旅行は“旅行業界のニューフロンティア”!?

昨年9月20日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で仮想旅行について取り上げていたのでご紹介します。 

 

普段行かない場所で非日常的な体験をするのが旅の醍醐味です。

ただ遠くに行こうとすると、まとまった休みが必要です。

中々時間が取れない人でも実際に旅に行かずにリアルな体験が出来る仮想旅行が今注目を集めています。

 

昨年9月20日から始まった「ツーリズムEXPOジャパン」(東京ビッグサイトで開催)は、国内47都道府県はもちろん、海外からも136の国と地域が参加する世界最大級の旅の祭典です。

 

ハワイ州観光局のブースでは、ハワイが体験出来るといいます。

VR(仮想現実)のゴーグルを着けると、バーチャルでハワイを体験出来ます。

気分を盛り上げるために座っているシートがVRの画面と連動して揺れたり、水しぶきや扇風機による風を吹き付けたりすることでより臨場感が高まり、まるでハワイにいるかのような気分を味わえます。

ハワイ州観光局のマネージャー、宮本 紗絵さんは次のようにおっしゃっています。

「行った気分をまずここで体感していただきまして、やっぱり行ってみたいと思えるきっかけになったらな・・・」

 

こうした体験自体を商品化する動きもあります。

ANA(全日本空輸)ホールディングスのブースで、深堀 昴さんは次のようにおっしゃっています。

「遠隔で本当に釣りが出来るというサービスのデモでございます。」

「釣り竿を完全同期させて、振動とか堅さ、柔らかさを模擬体験出来るようになっています。」

 

竿の動きや魚がかかった時の重さ、振動はモーターで制御、自宅にいながら遠隔地でも釣り体験が楽しめます。

ANAホールディングスでは、こうして釣った魚はANA便で翌日届くサービスが出来ればと考えており、今年春にもこのサービスを始めたい考えです。

 

更に仮想旅行のための別な仕組みも考えています。

美ら海水族館に置かれている分身ロボットでは、画面をタッチ操作することで簡単に遠隔操作することが出来ます。

自分の分身となるロボットで仮想旅行出来る仕組みです。

深堀さんは次のようにおっしゃっています。

「どうしても飛行機にご搭乗いただけないお客様は大勢いますので、例えば身体的制約ですとか、高齢者の方々で旅行に行けない方々にとって、新しい移動手段としてこういうサービスを展開していけたらと思っています。」

 

この仮想旅行が実用化に向けて動き出しています。

旅行会社のJTBは先週(放送時点)から仮想旅行の体験会を始めました。

東京・港区にいながら約1000km離れた小笠原諸島に訪れたかのような体験が出来るといいます。

小笠原には体験者の分身となるロボットがいます。

島にいる人と会話も可能です。

全てリアルタイムでのやりとりです。

更に、現地の人が亀の甲羅や手に触れると、その感触がリアルに伝わります。

この仮想旅行を実現したのは、今回JTBと組んだKDDIとロボットベンチャー、テレイグジスタンス株式会社の技術です。

ウミガメの動きや甲羅の堅さを感じられるのは、指に付けた機械によるものです。

触った感覚や温度まで感じることが出来ます。

こうした感覚はKDDIの高速通信技術によってリアルタイムで伝わるのです。

テレイグジスタンスのCPO、佐野 元紀さんは次のようにおっしゃっています。

「今までずっと概念としては研究されていたんですけども、通信の体系などの関係で中々実現が難しかった。」

「技術としてはいろいろなところに応用が利くと思っています。」

 

仮想旅行の商用化を目指すJTBは様々な可能性に期待を寄せています。

JTB 東京交流創造事業部の池田 伸之部長は次のようにおっしゃっています。

「旅を試す機会は今までなかったと思うんです。」

「より多くの方々が旅に触れる機会を増やしていく機会になるんじゃないかなと思います。」

 

ANAによると、世界的には航空機の利用者はまだ少ないので、仮想旅行のようなサービスを導入することで旅行をしたいという動機づけにしたいということです。

番組コメンテーターで大阪大学准教授の安田 洋祐さんは次のようにおっしゃっています。

「(リアルな旅行に行きたい人も増えるのではという見方について、)そうですね、そういうきっかけの一つとして、こうしたVRが役に立つかもしれないですし、例えば音楽をイメージすると、スマホでもハイレゾ、すごいいい音質のものを聴きたいとか、定額のストリーミング再生でものすごい手軽で身近なものになっているんですけど、じゃあライブの人気がなくなったかというとむしろ逆でライブに行きたい、この前も安室奈美恵さんのコンサートがありましたけど、ああいったものに人が行きたがると。」

「今回のVR旅行もああいったバーチャルな体験を通じて、よりリアルな旅に関心が高まるきっかけになるんじゃないかという気がしています。」

 

「ロボットなんかをみると、もう旅行だけではなくて、例えば「働き方改革」なんかにも使えるんじゃないか。」

「在宅で自分の代わりにロボットに出社してもらうとか、作業現場に行ってもらって、そこで実際にその指示を出したり、作業をするということに応用がすごい利きそうな可能性を感じる技術ですよね。」

 

「VRなので、リアルに旅行が出来るような場所に行くというのは番組のVTRで紹介されていましたけど、それこそ未来とか過去みたいなタイムトラベルとか、宇宙とか、実際にリアルな旅行が出来ないものにもひょっとすると仮想的に行けるようになる、そんな時代がやってくるかもしれないですよね。」

 

また、番組の解説キャスターで日経ビジネス編集委員の山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。

「(分身ロボットにより、見るだけでなく体験に近いことも出来ることについて、)ああいうのが自宅とか病院でも出来るようになると、シニアが非常に有望な市場になると思うんです。」

「過去1年間に国内、国外に旅行した人の割合が70代くらいになるとガクンと落ちるんですよ。(74歳までの70%程度以上から75歳以上では50%足らずまでダウン)」(2016年 社会生活基本調査)

「なぜかというと当然健康の問題が出たり、健康であってもおっくうになってしまうこともありますよね。」

「親孝行したくて、「一緒に旅行に行こうよ」と思う時には親がもう動けなくなっているという、そういう時に一緒にこういうもので体験してあげるとか、そういうニーズが出てくるんじゃないかなと思うんで。」

「特に団塊の世代がもう70代になってきていますからね、ここが新しい旅行のスタイルを開拓すると、そういうのも面白いんじゃないかなと。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

番組を通して、遠隔操作による、釣りの実体験に近い模擬体験や自分の分身となるロボットでの仮想旅行が出来る時代の到来を感じます。

一方で、世界的には航空機や旅客船の利用者はまだ少なく、仮想旅行のようなサービスは実際に旅行をしたいという動機づけになるといいます。

更に、こうした技術はタイムマシンや宇宙旅行などのよりリアルに近い疑似体験をも可能にします。

ですから、多忙な人や高齢者など、時間的に、あるいは身体的制約で旅行に行けない人たちも気軽に様々な旅行体験を楽しむことが出来るようになります。

ちなみに、アイデアよもやま話 No.4214 ANA 空から宇宙へ!でANAによる宇宙関連ビジネスについてお伝えしましたが、ANAは分身ロボットの遠隔操作技術により地球上のみならず宇宙空間でのビジネスチャンスを狙っているようです。

こうした取り組みは他の多くの企業でもこれから始まると思います。

ということで、仮想旅行はまさに“旅行業界のニューフロンティア”と言えます。 


 
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