街の電気屋さんといえば、家電量販店やネット通販などに押されながら、細々と地域密着型のきめ細かいサービスで商売を続けているというイメージがあります。
そうした中、昨年10月23日(火)放送の「あさチャン」(TBSテレビ)で年商9億円の街の電気屋さんについて取り上げていたのでご紹介します。
東京の町田市に大手家電量販店が11店舗もあるこの家電激戦区に年商9億円の街の電気屋さんがあります。
それは「お役に立ちます でんかのヤマグチ あなたの街の電気屋さん」の看板のある株式会社ヤマグチの展開する販売店です。
店内の商品の価格をチェックしてみると、例えば55型4K有機ELテレビの場合、大手家電量販店の平均価格は約36万5000円ですが、54万8000円と割高です。(昨年10月17日時点)
社長の山口 勉さんは次のようにおっしゃっています。
「(店内にお客さんの姿はあまり見かけませんが、)何とか22年間黒字できております。」
「(年商は)やっと9億5000万〜6000万円。」
「やはり我々街の電気屋ですから、そんな量販店のようには安く出来ないんですよね。」
安いことで年商9億円を稼ぎ出しているわけではなさそうです。
そこで買い物客の声を聴いてみると、次のような声が続きました。
「多少お金を払ってもサービスが良い。」
ではでんかのヤマグチにはどんなサービスがあるのでしょうか。
でんかのヤマグチには総勢40人の従業員がいます。
例えば、10年以上の常連客の女性、中溝さん(85歳)はいつも配達をお願いしているといいます。
中溝さんは次のようにおっしゃっています。
「今日、ふと思い付いてお電話したら、今日のうちに来て下さるじゃない。」
「本当にありがたいですよ。」
でんかのヤマグチでは「即日配達」をするのは当たり前、更にFAXなどの操作方法を懇切丁寧に分かり易く説明してくれます。
お客さんを満足させるサービス、実はここからが凄いのです。
午後5時、ある団地に入っていく従業員、すると1分後あっという間に出てきました。
その手には家庭ごみがあります。
お客様の代わりにゴミ箱に持って行くというのです。
これをでんかのヤマグチでは“裏サービス”と呼んでいます。
これこそが年商9億円を稼ぎ出すでんかのヤマグチの真骨頂なのです。
このサービスを受けている足の不自由な高齢の女性は次のようにおっしゃっています。
「自分で歩けないですから、これは歩行器ですからね。」
「だから本当にありがたいです。」
「本当、“神様、ヤマグチ様”です。」
従業員の名刺の裏には、次のような文言があります。
ヤマグチの裏サービス
久しぶりに孫の顔を見に行くのが、留守になるのが心配!!
家に一晩泊まってもらえないかな
留守中の花の水やりたのみたい!!
少しタンスを動かしたい
ちょっと買い物してもらえないかな?
お店に行きたいけど・・・
送迎します
このようにこれまで実際に応えて来たサービスが書かれています。
電化製品とは全く関係のないサービスがずらりと並んでいます。
今年襲来した台風24号の後、小屋が倒壊したお客さんのお宅では、なんと営業担当の加藤寛志さんが小屋を修理していました。
加藤さんは次のようにおっしゃっています。
「普段から家電以外でもお付き合い出来るように心掛けています。」
「そうすることによって商売につながると思っていますから。」
一方、テレビが映らなくなったお宅では、故障のため買い替えることになりました。
すると15分後には新しいテレビが届き、設置も手早く完了しました。
でんかのヤマグチならではの“血の通ったサービス”があったからこそ、迷うことなく即購入、人々から信頼を得ることで年商9億円を稼ぎ出していたのです。
山口社長は次のようにおっしゃっています。
「電気製品の修理に行くだけじゃなくて、地域のお客様にあそこの電気屋があって、あんな面白いことやっているよ、ちょっとぶらっと来てもらいたい。」
「それでにぎやかしてもらったら一番いいですよね。」
ということで、年商9億円を稼ぎ出すサービスは以下の2つです。
1.懇切丁寧な説明
2.お客様のためなら何でもやる“裏サービス”
以上、番組の内容をご紹介してきました。
番組を通して分かった、でんかのヤマグチの商売の戦略、あるいはお客様に対する接し方でリッツ・カールトンホテルのサービス(参照:No.468
ルールの少ないのが成熟した社会!)を思い出しました。
両者に共通しているのは、本来の業務を超えたお客様に対する徹底したサービスです。
さて、商品を購入するお客様には大きく以下の2つのタイプがあると思います。
1.価格重視:他のサービスは度外視して少しでも安い商品を求める
2.サービス重視:多少価格が高くても、その販売会社、あるいは販売員の信頼性の高さやアフターサービスなど総合的な評価で購入先を決める
そして、一人のお客様の購入判断の決め手は、購入する商品によってこの2つのタイプのどちらになるかが変わり得るのです。
そして後者のサービス重視のタイプの場合、販売会社のコストがかかるので、当然その分販売価格も高くなります。
ですからお客様は販売価格の高い分以上に販売会社によって提供されるサービスにメリットを感じるかどうかが2つのタイプの販売会社の選択の分かれ目になるのです。
ということで、今回ご紹介した年商9億円の街の電気屋さん、でんかのヤマグチの年商9億円の秘密は、その対象となるお客様が何を求めているのか、あるいはどんなことに困っているのかを的確に把握し、競合する家電量販店と差別化した徹底したサービス重視の戦略にあると言えるのです。
そして、このサービス重視はお客様との間に強い信頼感、絆が生まれるので容易に離れることのない固定客となるのです。
更に、ここには隠れたメリットがあります。
それは、サービスを通したお客様との深い信頼関係から、でんかのヤマグチの従業員に与えられた仕事への“やりがい”を感じることです。
このことが、更なるサービス、あるいは生産性の向上につながるという好循環を生むのです。