2018年12月28日
アイデアよもやま話 No.4211 景気後退に配慮する軽減税率だが・・・

現行の8%から10%への増税の時期は2019年10月となり、No.4194 ちょっと一休み その676 『ユーザー目線が欠如している消費増税に伴う軽減税率の指針!』ではユーザー目線が欠如している消費増税に伴う軽減税率の指針についてお伝えしました。

一方、11月22日(木)放送の「ニュース7」(NHK総合テレビ)では消費税率の引き上げに伴う景気対策として新たな検討案について取り上げていたのでご紹介します。

 

新たな検討案とはクレジットカードなどのポイント還元です。

安倍総理はポイント還元率を5%とし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの9ヵ月間実施することを検討する考えを示しました。

政府内ではこれまで消費税率の引き上げ幅に合わせて2%分を還元する方向で検討が進められていましたが、これを更に拡大し、増税分以上の還元を検討する意向を表明したことになります。

 

還元率が5%になれば、例えば現金を使わずにクレジットカードなどで1000円の買い物をした場合、税率が10%で100円の消費税がかかる一方で、50円分がポイントとして還元されることになります。

また、5%分の還元が実現した場合、軽減税率の対象となる飲食料品の税率は実質3%となる計算です。

例えば、中小の小売店で飲食料品を1000円分買った場合、現在は税込み価格が1080円、増税後も軽減税率が適用されて据え置かれますが、5%、50円分のポイント還元を受けると実質的な負担は1030円で済む計算です。

 

安倍総理は、マイナンバーカードを活用して買い物に使えるプレミアム付きのポイント販売するよう求める自民党の提言についても“しっかり準備した上で導入していきたい”と述べました。

伊藤忠経済研究所の武田 淳チーフエコノ三ストは次のようにおっしゃっています。

「5%還元ということになりますと、消費増税後の落ち込みをカバーする、これは当然なんですけども、それに加えて消費増税前の駆け込み需要をも後ろにずらすということで、景気の波を平準化出来ると。」

 

一方で、オリンピックの後の景気が不安なところにポイント還元の終了というマイナス要素が加わることになる、オリンピック後の景気を支えるために、また新たな財政支出をする事態になれば、財政健全化が相当遅れることになる、そうしたリスクをはらんでいる政策だと指摘しています。

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

なお、先ほどのマイナンバーカードを活用して買い物に使えるプレミアム付きのポイント販売については、プレミアム付き商品券として12月7日(金)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)で取り上げていたのでもう少し詳しくご紹介します。

 

来年10月の消費税率の引き上げの対策の一つとして販売されるプレミアム付き商品券について、政府は使用出来る期間を再来年3月までの半年間とし、最大で2万5000円分の商品券を2万円で購入出来るようにする方針です。

また利便性を高めるため、額面が1枚500円とする方向です。

なお発行する枚数が多くなり、事務的な負担が増すことから自治体の裁量でより額面が大きい商品券の販売も出来るようにする方向です。

また商品券の利用先は原則として発行元の市区町村に限定する方針ですが、小規模な自治体などにも配慮し、周辺の自治体でも利用出来るように検討することにしています。

なお、対象は低所得者や2歳以下の子どもがいる子育て世帯です。

政府はこうした方針を来週(番組放送時)早々に自治体側に伝え、制度設計を具体化させることにしています。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

確かに、毎度のことながら消費増税時には増税前の駆け込み需要による増税後の落ち込みがもたらされます。

ですから、そうした弊害を出来るだけ少なくするために政府が景気の波を平準化させる対策を検討することの必要性は理解出来ます。

しかし伊藤忠経済研究所の武田さんが指摘されているように、オリンピックの後の景気が不安なところにポイント還元の終了というマイナス要素が加わることになり、オリンピック後の景気を支えるために、また新たな財政支出をする事態になれば、財政健全化が相当遅れることになります。

また、消費増税で最も影響を受けるのは低所得者や2子育て世帯で、こうした方々は増税後ずっと増税の負担が続くのです。

一方で政府は少子化対策も進めています。

そして、No.4194 ちょっと一休み その676 『ユーザー目線が欠如している消費増税に伴う軽減税率の指針!』でもお伝えしたように、クレジットカードのポイント還元やプレミアム付きのポイント販売にも運用に伴う新たな作業が発生します。

 

こうした中、12月11日(火)放送の「おはよう日本」(NHK総合テレビ)でNHKの世論調査について伝えていたので以下にご紹介します。

消費税率引き上げ後の消費の冷え込みを抑えるため、中小の小売店などで現金を使わずに買い物をした場合に5%分のポイントを還元する政府の方針について聞いたところ、反対が45%と賛成を大きく上回りました。

 

NHKは12月8日から2日間、18歳以上の1951人に電話(固定・携帯 RDD(Random Digit Dialing))で世論調査を行い、1074人(55%)から回答を得ました。

来年10月に消費税率を予定通り10%に引き上げることについて、賛成29%、反対36%、どちらとも言えない27%という結果でした。

また5%分のポイント還元については、賛成14%、反対45%、どちらとも言えない31%でした。

そして住民税が非課税の世帯などを対象に、購入額よりも多い額の買い物が出来るプレミアム付き商品券の発行については、賛成24%、反対31%、どちらとも言えない37%でした。

 

ちなみに、東京など大都市への税収の偏りを是正するため、政府、自民党は企業が自治体に納める地方法人税の一部を地方に再配分する方向で調整を進めています。

これについて、賛成32%、反対12%、どちらとも言えない43%でした。

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

NHKの世論調査結果からみると、消費増税について反対の方が多いのは当然ですが、その差は7%とそれほど大きな差はありません。

しかし、5%分のポイント還元について反対が賛成よりも31%多く、プレミアム付き商品券の発行についても反対が7%多いという結果については、国民は消費増税の意図について理解しており、政府の方針について消費増税の意図に反すると考えているのではないかと考えられます。

ですから、国民の総意としては、生活が厳しくなる消費増税には反対だが、増税する以上はやたらと複雑な消費の落ち込み対策などせずに進めて欲しいということだと思います。

特に軽減税率については、現状の政府の方針はとても複雑なので、買い物の現場のあちこちで混乱が起きるのは間違いありません。

 

こうしたことから、私が考える対策は以下の2つです。

1つ目は、今回の消費増税の狙いを国民が十分に納得出来るように安倍総理自らがしっかりと説明することです。

2つ目は消費増税に伴う弊害の対策は低所得者や子育て世帯を対象としてピンポイントで給付金を支給することです。


 
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