2018年12月11日
アイデアよもやま話 No.4196 燃えないバッテリーが地球を救う!?

8月9日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で燃えないバッテリーについて取り上げていたのでご紹介します。

 

オフロードバイクで日本最高峰のレース、全日本モトクロス選手権(7月 岩手県一関市で開催)、1秒を争うこのレースは今電気の力でエンジンをかけるセルスタートです。

今までは足でキックペダルを踏み、エンジンをかけるキックスタートだったのです。

激しいモトクロスのレースでは転倒は当たり前、そのたびに100kgある車体を起こしてからキックでエンジンをかけるのはタイムロスが大きかったのです。

そんな中、ホンダは昨年導入したセルスタートが好成績を収め、一気に普及しました。

 

これを実現させたのが小型軽量のリチウムイオンバッテリー(電池)です。

しかし、リチウムイオンバッテリーというと、衝撃に弱く、発火の危険性があります。

それを克服したのがあるベンチャー企業が開発したリチウムイオンバッテリーです。

釘を刺しても、ライフル銃で撃ち抜いても燃えません。

大企業からアメリカ軍までその実力を買うベンチャーとはエリーパワー株式会社ELIIY Power)です。

社長の吉田 博一さん(80歳)は健康維持のために毎日ストレッチを続けています。

そこまでして実現したかった“燃えないバッテリー”、その工場(神奈川県川崎市)は全自動です。

バッテリーは湿度を嫌うため、人が発する汗などは大敵、湿度が変われば品質の悪いバッテリーができ、発火の可能性が生じます。

そのリスクを徹底的に無くそうとして無人に行き着いたのです。

吉田さんは次のようにおっしゃっています。

「(なぜ安全性に徹底してこだわっているのかという問いに対して、)やはりバッテリーはエネルギーなので安全でなければいけない。」

「これ(1つのバッテリー)は手榴弾1個分のエネルギーと言われている。」

 

大きなエネルギーを蓄えるバッテリー、一つ間違えれば命に係わるのです。

一般的なバッテリーでは部材を巻いて作るため、プラスとマイナスが触れてショートが起こると熱が逃げずに膨張し、爆発に至ります。

一方、エリーパワーのバッテリーは部材を積み上げて作るため、熱が逃げ易いのです。

更に燃えにくい材料を使うことでショートを起こしても燃えないといいます。

 

総工費200億円をかけたというこの工場、ベンチャー企業がなぜそこまで出来たのでしょうか。

旧住友銀行の副頭取まで上り詰めた吉田さんが起業したのはある偶然からでした。

それは吉田さんがたまたま慶応大学のEV(電気自動車)開発プロジェクトに参加した時、吉田さんはEVの試作車の加速に心を打たれたのです。

そして、「いつかEVの時代が来る」と確信しました。

早速、吉田さんは大企業に協業を働きかけました。

しかし、ガソリンエンジンを守りたい自動車メーカーからは拒否されました。

更に三洋電機、パナソニック、ソニーといったほとんどのバッテリーメーカーのトップにも会いましたが、「あんな危ないものを大きく出来ないよ」と言われました。

そんな中、大学の別の研究室でリチウムイオンバッテリーが爆発しました。

そこで吉田さんは「だからどこの会社も作りたがらなかったのか」と気づきました。

しかし、吉田さんには「このまま終わっていいのか? だったら俺が作ってやる」という想いがありました。

この時、吉田さんは69歳、起業を決意しました。

吉田さんの考えに、新たな事業分野の開拓を目指す大和ハウス、国際石油開発帝石、大日本印刷などの大企業が賛同して出資、資本金315億円の巨大ベンチャーが誕生しました。

 

こうして出来たバッテリーは現在大和ハウスなどの住宅で太陽光で発電した電気を溜めるバッテリーとして使われています。

吉田さんは次のようにおっしゃっています。

「将来的には大和ハウスさんの住宅で電力事業が必ず出来ると思っています。」

 

なお、エリーパワーのバッテリーは通信システムを搭載しており、遠隔で充電・放電のコントロールも出来ます。

街全体のバッテリーを一元管理することで、今後街の中で電気を融通したり、電気を別のエリアに売ることも可能になります。

燃えないバッテリーが生活を大きく変えようとしているのです。

吉田さんは次のようにおっしゃっています。

「太陽光もある、風力もある、バイオもある、地熱もあるという、いろいろな発電はあるけど、これを本当に同質のエネルギーにするにはバッテリーしかない。」

「バッテリーというのはこれから地球も救っていくことになるんだろうなと思います。」

 

以上、番組の内容をご紹介してきました。

 

将来的に全てのエネルギーを太陽光などの再生可能エネルギーで賄うようにするためには吉田さんのおっしゃるように、またプロジェクト管理と日常生活 No.570 『太陽光発電存続の危機とその対応策!」でもお伝えしたように、発電した電気を蓄えておくためのバッテリーがなくてはならないのです。

しかもこのバッテリーを普及させるためには、低価格で小型、しかも安全性を兼ね備えていなければなりません。

しかし、現状ではバッテリーはとても高価格です。

ですから、低価格で小型、しかも安全性を兼ね備えたバッテリーの実現こそが再生可能エネルギーの世界実現の大きなカギなのです。

ということで、エリーパワーのみならず全てのバッテリーメーカーには是非低価格で安全なバッテリーを出来るだけ早く開発していただきたいと思います。


 
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