6月7日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で変わる教育と新たな市場の可能性について取り上げていました。
そこで今回は、プロジェクト管理の観点から、学校教育の課題とその対応策というかたちでご紹介します。
2020年度から小学校で英語教育が本格化し、プログラミング教育も必修化されます。
こうして授業数が増える一方で、教員の働き過ぎの解消も待った無しとなっています。
こうした教育現場の変化に対応するため、様々な商品サービスが登場し、新たな市場を作り出そうとしています。
6月7日、都内で開かれた「NEW EDUCATION EXPO 2018」で140あまりの出展企業の中には富士通やパナソニックといった大手企業も顔をそろえ、電子黒板などを展示していました。
中でも多くの教育関係者が詰めかけたのは、内田洋行による、全ての教材を電子化した「未来の教室」での模擬授業です。
現役の教員が興味を示したのは作業の効率化でした。
1台のプロジェクターに2画面同時に接続出来るといいます。
この教室では、答案用紙も電子化しており、瞬時に生徒全員に配信・回収することが出来ます。
このところ問題になっているのが教員の労働時間の長さです。
文部科学省によると、中学校で約6割、小学校で約3割の教員が「過労死ライン」に達する時間まで働いているといいます。
そうした中、働き方改革に関するものが注目されています。
例えば、顕微鏡で見ている映像を大きなスクリーンに投影する装置により、生徒の数の分だけ顕微鏡を用意する必要がなく、教員の負担を減らせるといいます。
また、教員にとって大きな負担になっているのは、教材の準備やテストの採点など、授業以外の時間に行う作業です。
こうした作業にも電子化の波があります。
内田洋行のAP&プラットフォーム開発部の小森 智子さんは次のようにおっしゃっています。
「(かなり分厚いバインダーの帳票を指して、)これが学校で先生方が書かなければいけない書類といいますか、作らなければいけない帳票類になっております。」
「これを今までは手で書いていたというところを今回システム(電子)化すると。」
「正しく(出席簿や成績を)つけられるとか、子どもさんに返るデータなので、精神的な負担が減るのは大きいところかなとは思います。」
展示会の主催者である内田洋行の大久保 昇社長は、日本の教育現場の特異性が新たな市場を生むと指摘し、次のようにおっしゃっています。
「日本の学校の先生ほど全てのことを要求されているところはないんです。」
「海外ですと、例えば生徒指導は別の人がやるとか、進路指導は別の人がやるとか、みな別々なんです。」
「来年、再来年以降、場合によったら(教育市場に)展示物ではなく、サービスを出してくる会社も出てくると思います。」
教育現場のもう一つの大きな変化が2020年度から始まるプログラミング教育です。
この新市場に様々な企業が参入しています。
番組の解説キャスターで日経ビジネス編集委員の山川 龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「日本の学校の先生は本当に頑張っているんですよ。」
「人口1億人超える国・地域で、これだけ教育水準が高いところは日本以外にないんですよ。」
「それを支えてるんで、本当にいろんな支援をやって欲しいんですけど、ただ1点だけ、実は授業に充てている時間と言うのは世界的にみても平均以下なんです、日本というのは。」
「授業以外のところがすごく大変で、さっきあったような事務作業だとか部活、特に事務作業のところがいろいろペーパーレス化とかやれることがいっぱいあると思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
そもそも学校教育の狙いは、生徒や学生が社会に出た後、自身の自己実現と同時に社会にとって有意な人材となることを最大限に支援することにあると思います。
ですから、学校教育は以下の要件を満たすことが求められます。
・自己実現に必要な基礎能力の育成
・社会規範の理解
・時代の要請に沿った能力の育成
ここで今回の本題である、現在の学校教育における課題とその対応策について、番組を通して以下にまとめてみました。
・教師が授業に充てる時間の増加
(現在は、授業に充てている時間は世界的に平均以下)
・教師の過重労働の解消
(現在は、教師が事務作業に忙殺)
・時代の要請に沿った教育
(現在は、グローバル化に伴う英語の必要性、あるいはテクノロジーの進化に伴う新たなスキルの習得の必要性が求められていること)
ここからは、私の思うところについてお伝えします。
個々の学校で一つひとつの課題の対応策を検討し、それを実施するという作業を行うのは、現実の教師の多忙な状況からして無理があります。
一方、個々の企業が今回ご紹介したようなかたちで個別に教育支援ツールとして提供するのでは断片的になる傾向があります。
そこで、文部科学省(文科省)でプロジェクトを立ち上げ、少なくとも義務教育における学校教育全体のプロセスを整理し、それをシステム化するとともに、国内共通のガイドラインとして提供することが望ましいと考えます。
また、専門性が要求される英語教育やプログラミング教育については、専門の教師をつけることです。
一方で、英語に限らず、どの語学教育においてもAIの進化により、いずれ同時通訳、あるいは自動翻訳が当たり前の時代を迎えることは明らかです。
また、プログラミングなどのテクノロジーもAIやロボット、あるいはIoTの進化によりこれまで人手を介してきた作業はどんどんAIやロボットに置き換わっていくことも明らかです。
ですから、こうしたテクノロジーの進化に合わせて、ヒトに求められるスキルも変化していくのです。
なので、国としてこうした状況をきちんと把握しつつ、どのような人材を育成すべきかを常に念頭に置いた教育政策を進めることがとても重要だと思うのです。
一方で、どんなに優れた才能やスキルがあっても、反社会的、あるいは犯罪に結びつく行動に走るような人材が増えては、健全な社会とは言えません。
そこで、教育の指針として絶対に外せないのは以下の3点だと思います。
・独創性
・最新テクノロジーを最大限に使いこなせるスキル
・“5方良し”の精神(参照:No.4134
ちょっと一休み その666 『これからの時代のキーワード その4 ”五方良し”』)