2018年11月09日
アイデアよもやま話 No.4169 自動運転車の実用化に向けた哲学的命題!

アイデアよもやま話 No.4071 次世代自動車のキーワードは”CASE”で次世代自動車のキーワードについてご紹介しました。

そうした中、7月24日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でA:オートノマス(自動運転)とE:エレクトリック(電動化)の2つについて取り上げていました。

そこで、今回は自動運転車の実用化に向けた哲学的命題についてご紹介します。

 

 

前回は2050年に100%電動車化を目指す動きについてご紹介しましたが、番組の最後に番組コメンテーターでクレディ・スイス証券の市川 眞一さんは次のようにおっしゃっています。

「今、日本の自動車産業が抱えているのは動力の問題、つまりガソリンなのか電動なのかという問題と同時に制御の問題というのがあって、これが自動運転自動車というものなんですけど、両方とも基本的には技術の問題だと受け止められがちなんですが、実は自動運転の問題は極めて深遠な哲学的な命題を含んでいることだと思うんですね。」

「それは例えばクルマを運転していて危険な状態になった時、搭乗者の安全を優先するのか、それとも道を歩いている歩行者の安全を優先するのかという問題があって、人がクルマを運転しているのであれば、それはやはりドライバーの責任が重くて最終的には結果責任を裁判で明らかにすることになるんですけども、自動運転になった時にプログラミングをして事前にその時の対応を決めておかなきゃいけないわけですね。」

「(どちらを選択するのか、サンデル教授の有名な「ハーバード白熱教室」でもそういう議論がありましたが、左側に行けば二人いる、右側に行けば一人いる場合、どちらに突っ込みますかということになってしまいますが、)そこに対してサンデル教授は白熱教室の中では結論を出していないんですね。」

「これは哲学的命題だということで、結論を出していないんですけども、これを制度化していく、つまり実用化していくということになると制度に仕込まなきゃいけないわけですから、これは結論を出さなきゃいけないということになります。」

「(市川さんの視点としては、制度設計こそ国の役割であるということかという問いに対して、)そうですね、アメリカや中国は今これに向けて議論もしていますし、法制化の準備もしている。」

「これに対して、日本がはたしてこの問題をどうしていくのか、そこが実は一番重要なポイントになってくると思いますね。」

 

「仮に90%の事故が減らせるとしても、きちっと事前に説明が国民に出来ていないと、一つの事故で全てが台無しになってしまうわけですね。」

「その辺がやはり政治や行政はきちっと国民にあるべき姿を説明して、その中でコンセンサスを取っていくという作業をこれからしていかないと、国内において自動運転車は普及させ、更にそれを世界に戦っていくということが出来なくなってしまいますね。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

自動運転については、昨年10月に初期の日産「リーフ」から新型「リーフ」に買い替えた時から、高速道路での同一車線上でそのメリットを体感しています。

一旦時速を設定すれば、その後は渋滞の時でさえブレーキペダルから解放されるからです。

しかし、万一の事故についてはあくまでもドライバーの自己責任となります。

同様に、自動駐車については、実際に日産販売店で試乗体験しましたが、壁ギリギリまで「リーフ」が近づき、普段運転しているが故に精神衛生上とても悪いと感じました。

それは現在の自動運転だけでなく駐車機能について万一キズが付いたり、へこんでもオーナーの自己責任になると分かっていたからです。

 

なお、自動運転のレベルは以下の5つのレベルに区分されています。

レベル0  ドライバーがすべてを操作

【運転支援】レベル1 システムがステアリング操作、加減速のどちらかをサポート

【運転支援】レベル2 システムがステアリング操作、加減速のどちらもサポート

【自動運転】レベル3 特定の場所でシステムが全てを操作、緊急時はドライバーが操作

【自動運転】レベル4 特定の場所でシステムが全てを操作

【完全自動運転】レベル5 場所の限定なくシステムが全てを操作

 

ですから、新型「リーフ」の自動運転レベルは「レベル2」ということになります。

そして、「レベル5」の段階になって、初めて自動運転車の乗客は自己責任から免れるのです。

それでも安心は出来ません。

なぜならば、番組で紹介されたサンデル教授の「ハーバード白熱教室」でも、どうしても避けられない事故が発生する可能性があるからです。

しかも、事故の場合、どちら側の人を助けるかなど、いくつかの選択肢が発生します。

ですから、正解はなく、結論を出すことが出来ず、従って哲学的命題として正解はお預け状態にせざるを得ないのです。

それでも、自動車事故はドライバーに起因する場合が多いということから、自動運転車の普及は自動車事故を減らすうえではとても有効です。

ですから、番組でも指摘されているように、自動運転の機能と限界、および万一の事故の場合の責任を明確にして法制化したうえで、それを分かり易く理解出来るレベルにまとめて国民にガイドすることが今後の自動運転車の開発、普及の必須条件だと思います。

 

なお、いろいろと解決すべき課題は残っていますが、将来的にあらゆるクルマの運転形態の標準が「レベル5」の自動運転になれば、免許のない人でも気軽にクルマを利用出来るようになり、現在よりも格段に自動車事故は少なくなると期待出来ます。


 
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