2018年07月29日
No.4080 ちょっと一休み その657 『いずれ人の体内にもプラスチックが蓄積される!?』

前回、No.4074 ちょっと一休み その656 『プラスチック袋80枚余りを飲み込んで死んだクジラ!』で、海の環境への深刻な影響を受けて、海外でストローなど使い捨てのプラスチック製品を規制する動きが広がっているとお伝えしました。

そうした中、7月15日(日)付け毎日新聞のネット記事(こちらを参照)で、2050年までに海に流入するプラスチックごみの総重量が、世界の海に生息する魚の総重量を超えるという予測について取り上げていました。

そこで、その一部をご紹介するとともに、食物連鎖によりいずれ人の体内にもプラスチックが蓄積されるかもしれないことについてお伝えします。

 

安価で丈夫なプラスチックは多くの製品に用いられ、20世紀半ば以降の暮らしを大きく変えました。

2050年までに海に流入するプラスチックごみの総重量が、世界の海に生息する魚の総重量を超えるとの予測もあり、分解されずたまり続ける大量の廃棄プラスチックの問題が今、世界で懸念されています。

 

インドから直線距離で約8000キロ離れたスペイン南東部ムルシア州のパロス岬で今年2月、地中海の海岸に体長約10メートルのやせ細ったオスのマッコウクジラの死骸が打ち上がりました。

同僚らと死因を調べることになった「エル・バリエ野生生物保護センター」のアリシア・ゴメス・デラモーンさん(29歳)は、クジラの胃と腸から消化されずに残ったプラスチックの破片を見つけましたが、当初は驚きはありませんでした。

プラスチックは世界の海岸に打ち寄せるごみの8割以上を占め、海洋生物の体内に取り込まれたりする例はよくあるからです。

しかしその後、アリシアさんたちは言葉を失うことになりました。

3時間半かけて取り出したごみの大部分がプラスチックで総量は29kg、地中海を取り囲む中東、北アフリカで使われるアラビア語が書かれたレジ袋なども含まれていたのです。

 

このマッコウクジラの体内から見つかった29kgものごみは主にプラスチックで、レジ袋やペットボトル、傘などの生活用品、その他は漁業に使うネット、農業用の温室の一部など計47種に及びました。

洗って乾燥させても19kgの重さがありました。

 

海はつながっており、世界のどこかで出たごみが、別のどこかで生き物や地球を苦しめているのです。

 

現在世界の海にどれほどのプラスチックごみがあるのか、正確に知ることは難しいといいますが、国際的に多く引用されるのが米ジョージア大などの研究チームによる推定です。

2015年に米科学誌サイエンスで発表された論文によると、世界の沿岸部から海に流出するプラスチックは毎年480万〜1270万トン(中間値は約800万トン)です。

陸上で適切に処理されなかったごみが主に河川を通じて流れ込み、中国やインドネシア、フィリピン、ベトナムなど東南アジアが最大の発生場所となっています。

 

軽くて耐久性に優れたプラスチックの特性は海に暮らす生物には脅威としてはね返ります。

海流に乗って世界の海をさまよい、一部は波や太陽の光の作用で細かく砕けて魚介類も摂食して食物連鎖に入り込みます。

イギリスのプリマス大学の研究チームの集計では世界で約700種の海洋動物からプラスチックごみが検出されたことが報告されており、うち17%は国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定する種でした。

世界経済フォーラムの報告書は、現状のレベルで海への流入が続いた場合、2050年には世界の海のプラスチックごみが重量換算で魚を上回ると警告しました。

 

なお、プラスチックは分解されにくいために200年以上も地球に留まるといいます。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

前回、タイの海岸に打ち上げられて死んだクジラの胃の中から約8kgという大量のプラスチック製の袋が見つかったとお伝えしましたが、今回ご紹介した地中海の海岸に打ち上げられたマッコウクジラの体内から見つかった29kgのごみも主にプラスチックだといいます。

ですから、世界中を見渡せば、もっと大量のプラスチックごみを飲み込んでしまったクジラを見かけるはずです。

こうした個別の問題だけでなく、2050年までに海に流入するプラスチックごみの総重量が、世界の海に生息する魚の総重量を超えるという予測も無視出来ません。

 

一方で、人類による乱獲のためにクジラの生存数が激減したため、この流れに歯止めをかけようと国際捕鯨委員会(IWC)総会が1982年に商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を採択するなど、現在、国際的な捕鯨規制が進められています。

 

こうした観点から、単に生物の絶滅危機に焦点を当てた政策を進めるだけでなく、生物の生存環境を保護することにももっと力を注ぐべきだと思います。

前回の「ちょっと一休み」でご紹介した、海外でストローなど使い捨てのプラスチック製品を規制する動きはその一例です。

 

同時に、こうした問題は人類にとってもとても脅威になります。

というのは、魚介類がプラスチックを摂食して食物連鎖に入り込むと、そうした魚介類を人が食べ続けることにより、いずれ人の体内にもプラスチックが蓄積されるからです。

ですから、私たちは自分自身のためのみならず、他の海洋生物の生存環境の維持、更に地球環境の保全のためにも世界規模で様々なプラスチックゴミの処分方法について真剣に考え、早急に実行に移す必要に迫られているのです。


 
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