以前、アイデアよもやま話 No.1562 シロアリを寄せ付けない不思議な木材!で画期的な木材についてご紹介しましたが、そうした中、昨年12月14日(木)放送の「アイデアの方程式」(テレビ東京)で強く燃えにくい建築材のヒントについて取り上げていたのでご紹介します。
神社仏閣、お城など日本が誇る木造建造物、そんな貴重な木造建築を何百年、何千年先まで残すという夢をかなえる、ある発明があります。
強く燃えにくい建築材、そのヒントは何だったのでしょうか。
今、建築業界で熱い注目を浴びる液体ガラスがあります。
普通のコンクリートはコインで傷つけると削れてしまいますが、液体ガラスを塗るとほとんど傷が付きません。
しかも、木材に塗れば防火性能も向上します。
長年の研究の末、常温でのガラスの液体化に成功した開発者は、「(木材に使う際、)塗る以外にももっと良い使い方があるのではないか?」、更なる研究に没頭していたある日、食卓に並んだ「おかず」に閃きました。
それは味の沁みたおでんでした。
おでんの調理方法をヒントに、木材を煮てから液体ガラスに付け込んでみました。
その結果、耐久性・防水・防火性の他に防腐効果やシロアリにも強い木材が誕生しました。
世界遺産の厳島神社にも使われる液体ガラス、伝統建築を未来に残す発明の陰にあったのはなんとおでんでした。
ということで、今回のアイデア方程式は(ガラス+木材)×おでん=強く燃えにくい建築材でした。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
この番組を観て、そもそも常温でのガラスの液体化を開発しようとしたきっかけが何だったのかに興味が湧いてきました。
そこでネット検索したら、今回ご紹介した液体ガラスを開発した株式会社ニッコー(東京都杉並区)の塩田 政利社長のブログで以下の記述に出会いました。(詳細はこちらを参照)
コンクリートのガラス化という体験を生かして木材のガラス化に挑戦した。地球温暖化問題の一環としての森林育成と木材活用。木材活用のためには、燃える、腐る、白蟻に食われる、変色する、色褪せる、曲がる、反る、割れる、という木材という植物の弱点をカバーしなければならない。
そもそも戦後の高度成長期に入り、建築構造物はコンクリート、鉄、化学合成物質を大量に使用している。問題は、施工の簡素化、コスト低減などの理由であろうが、耐久力に欠ける。現在の建築構造物はその耐久力が平均40年以下だと国の統計で出ている。
ですから、液体ガラスの開発は、塩田社長の地球温暖化問題、あるいは地球環境問題に対する強い危機感が込められていることが分かります。
さて、こうした木材を作るにはとても手間暇がかかるので高価になってしまうと思いますが、一般的な装飾品などにこの液体ガラスを塗れば、光沢が増し、傷付きにくくなると思います。
ですから、今回ご紹介した液体ガラスにはいろいろな用途が考えられます。
また、こうした需要が増えれば、その分低価格での提供が期待出来ます。
それにしても、おでんとの組み合わせによるアイデアは意外でした。
ちなみに、私は昨年たまたま厳島神社を訪れる機会がありましたが、もし事前に液体ガラスが使われていることを知っていれば、ととても残念に思いました。