2010年07月13日
アイデアよもやま話 No.1562 シロアリを寄せ付けない不思議な木材!
6月27日(日)放送の夢の扉〜NEXT DOOR〜(TBSテレビ)で「日本の森林を守るために木材の有効利用を考えたい」をテーマに取り上げていましたのでご紹介します。

梅雨は家の中で最もシロアリが繁殖する季節です。
そのシロアリを寄せ付けない不思議な木材をを研究しているのは、日本の木材研究の第一人者で東京大学教授の安藤直人さんです。
その木材とは、液体ガラスを塗ってシロアリばかりでなくや火からも保護される木材です。
通常、ガラスは1400℃の高温でないと液体にはなりません。
ところが、この液体ガラスは固まるのを防ぐ酵素が数十種類含まれているためお常温でも固まりません。
酵素が空気に触れることで蒸発しガラスが固まるのです。
液体なので刷毛で塗るだけなので1日で乾いてしまいます。
液体ガラスは木の表面から浸透して木をコーティングします。
そうすると、木に火を点けても火の影響は表面だけなので火事になることを防げるのです。
また、液体ガラスは薬品を使っていないため人体に害はありません。
現在は、木造建築の保護材として使われていますが、安藤教授はこの液体ガラスを塗料メーカーの株式会社日興と共同研究し、更なる可能性を追求しています。

液体ガラスは色を付けることが出来ますから、ガラスのカラーリングにより今までにない雰囲気の建築材としての利用も考えられそうです。
更には、木材だけでなく他の材料との組み合わせも考えられます。

他にも安藤教授が研究しているのは、
木屑とプラスチックを合わせて板を作る、という木屑のリサイクル技術です。
木屑とプラスチックを一緒に撹拌機に入れると、撹拌する熱でプラスチックが溶けて木屑と混ざって出てきます。
それをプレス機にかけると木屑を再生した板が出来る、という仕組みです。

安藤教授は番組の中でこの技術について次のようにおっしゃっていました。
「将来的な技術としてはバイオプラスチックを使いたいですね。」
「例えばこの板が建築の内装に使われてもいずれ地球を汚さずにこれが自然に分解して土に戻ります。」
そして、この板は再度粉砕すれば再利用が可能なのですからこれから求められる持続可能な社会にはピッタリな技術です。
安藤教授は、もっと木を使ってもらおうと国と共同で活動しています。
日本の森林の約4割は使うために植えられた人工林です。
ところが、安い輸入木材やプラスチックが増えたため人工林は放置され荒れ始めているのです。
現在、日本は伐期(切る時期)に来ている山が多いので人工林の木を積極的に使って植え代えていく、そのことがもう一回林業を再生して森林を循環させる、と安藤教授は考えています。

更に、安藤教授には木造住宅の研究家、というもう一つの顔があります。
目指すのは地震に強く快適な家です。
安藤教授は自宅を使ってその実験を行っています。
17年前に建築した時に使われた木材は全てオリジナルで、合板のお化けみたいなLVLというものです。
薄い板を50枚張り合わせた合板を日本で初めて全部構造材として使っているのです。
このLVLはコンクリート並みの強度があるのです。

安藤教授が今最も力を入れているのは2年前からハウスメーカーの金子建築工業株式会社と研究を続けるプロジェクトです。
それは、夏涼しく冬温かい家です。
近年、エアコンによるクーラー病が問題になっています。
安藤教授が目指すのは冷暖房の要らない家です。
具体的には、冷暖房費が1年間なんと1万円以下、という省エネ木造住宅です。
この省エネ実験住宅では、外気温26℃に対して家の中はほとんどの場所が20℃だったのです。
もちろん冷房はついていません。

そのカギとなるのが日本の伝統技術です。
土壁は熱を吸収する性質を持っています。
でも、土壁だけだと外から吸収した熱をそのまま室内へ放出してしまいます。
そこで、土壁と断熱材を組み合わせることで冬は外の寒さを断熱材でブロックし、窓から差し込む太陽の熱を土壁が吸収して室内に放出して部屋の中を温めます。
夏は夜の涼しい空気を土壁に吸収して室内へ放出することで温度が下がるのです。
土壁を使った省エネ住宅は既に15棟が建てられ現在も建築中です。

番組の最後の安藤教授の次の言葉がとても印象的でした。
「機械仕掛けじゃないというのが大事なんですよね。」
「今日本の技術というのは先端技術が沢山ありますけどそれではなくそのままの箱(家)の方をキチっとしておけば他の技術も非常に負荷の低い技術で済むはずなのです。」

伝統の技に新たな息吹を吹き込むことで木の素晴らしさを未来に伝えたい、それが安藤教授の願いです。

一般的に地球温暖化問題の対策や省エネは新技術に頼るのが大きな流れとなっています。
そのような中で安藤教授の行き方は、伝統の技をベースにした素朴な方法を取り入れています。
確かに、夏や冬にはエアコンを使うのが当然と考えられていますが、今回ご紹介した省エネ住宅ではエアコン不要で暑さ寒さをしのぐことがことが出来るのです。

番組で取り上げられた省エネ住宅の建築費が不明です。
でも、もしエアコンの設置費用、および毎月の冷暖房費を考慮した場合の比較で省エネ住宅の方が安く済めば省エネ住宅は画期的な省エネ技術と言えます。

 
TrackBackURL : ボットからトラックバックURLを保護しています