2018年02月10日
プロジェクト管理と日常生活 No.529 『EVの普及に向けて バッテリー容量増加の課題とその対応策!』

前回までEV(電気自動車)の普及に向けて充電インフラに焦点を当てて3つの課題とその対応策についてお伝えしてきました。

今回はEV本体のバッテリー容量増加の課題とその対応策について私の思うところについてお伝えします。

 

ご存知のように昨年10月より日産の新型「リーフ」が航続距離400kmをうたい文句に鳴り物入りで販売されました。

ちなみにそのバッテリー容量は40kwhです。

しかし、私が購入して5000kmほど走ってみての実際の航続距離はざっと260kmほどです。

しかも、今のような冬の季節にガソリン車同様に暖房をガンガン使うと200km程度まで短くなってしまいます。

それでも初期の「リーフ」の航続距離200kmに比べれば2倍に伸びています。

ですから、新型「リーフ」でも日常生活に困ることはほとんどありません。

しかもそのベースモデルの価格は約400万円と初期モデルとほとんど変わらないのですからEVとしてはとてもリーズナブルだと思います。

ちなみに、バッテリー容量の増加に伴う容積の増加はないといいますから、エネルギー密度は2倍になったことになります。

しかも、急速充電器での充電時間も、初期「リーフ」では30分で充電量80%でしたが新型「リーフ」では容量が2倍に増えたにもかかわらず同じ80%の充電量にかかる時間は40分といいますから、バッテリー容量の改善は同時にバッテリー充電時間の短縮にもつながっているのです。

 

しかし、既存のガソリン車ドライバー、中でもタクシーなど業務に使用するドライバーにしてみれば、EVへの乗り換えを考える際に実際の航続距離はせめて400km程度が求められると思われます。

実際に、テスラのモデルSの上位モデルは既に100kwhのバッテリーを搭載し、その航続距離は632kmを達成しています。

しかし、その価格は1700万円ほどととても高価なので購入層は富裕層に限られてしまいます。

ですから、EVの普及に向けての課題としてEV本体の安価なバッテリー容量の増加は避けて通れないのです。

 

こうした中、明るいニュースがあります。

昨年10月30日(月)付けネットニュース(こちらを参照)で「東芝、6分間の充電でEV航続距離320kmを可能にする次世代バッテリーを発表」と題した記事について取り上げていたのでご紹介します。 

 

東芝は昨年10月3日、負極材にチタンニオブ系酸化物を用いた次世代リチウムイオン電池(次世代SCiB)の試作に成功したと発表しました。

負極材料に一般的な黒鉛を利用する場合と比較して、約2倍の容量を持つのが特徴です。

エネルギー密度が高く、超急速充電が可能なため、EVに適しているといいます。

今後、電池のエネルギー密度のさらなる向上を図り、2019年度の製品化を目指す方針です。

 

以上、記事の内容の一部をご紹介してきました。

 

一方、昨年10月25日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」ではトヨタで開発が進む全固体バッテリーについて取り上げていたのでご紹介します。

ちなみに、全固体バッテリー(電池)については以前アイデアよもやま話 No.3597 自動車をめぐる新たな動き その3 次世代バッテリーは長持ちで安全!でもご紹介したことがあります。

 

全固体バッテリーは大幅な大容量化が可能になる次世代のバッテリーです。

トヨタ自動車のディディエ ルロワ副社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。

「200人以上のエンジニアが全固体バッテリーを2020年代初めに商用化出来るように準備しています。」

「この技術は“ゲームチェンジャー”になり得ます。」

 

以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。

 

そこで、もう少し詳しい情報を得るためにネット検索した結果(こちらを参照)を以下にご紹介します。

 

トヨタ自動車では2020年代前半を目処にリチウムイオン電池に代わる「全固体電池」を実用化し、既存のガソリン車と遜色無い使用性の実現を目指しています。

同社ではEVの原動力となる「電池」について、2011年に東京工業大学と共同で「全固体電池」を開発しました。

日経新聞によると2016年時点でリチウムイオン電池比でイオン伝導率が約2倍、出力が3倍以上に達しているそうで、多くの電力が必要となる発進時や加速時などに威力を発揮するとしています。

 

全固体電池は正極、負極、電解質が全て固体で、液漏れの心配が無く安全性が高いとされており、航続距離に直結する大容量化にも向くなど、潜在性能の高さが特徴です。

 

以上、ネット記事の一部をご紹介してきました。

 

こうした状況からすると、早ければ2020年、遅くとも2020年代中頃には進化したバッテリーが商用化され、航続距離600kmで急速充電時間も短くて済むような低価格のEVの世界が誕生するのも夢ではありません。

ですから、まだまだEVは世界的な販売台数からすると黎明期を脱しきれませんが、2020年代こそいよいよ世界的に本格的な普及期を迎えると言えそうです。

そして、ETCカードの普及と同様に、EVの販売台数の増加に連動して充電インフラも徐々に整備されていくことは間違いないのです。

 

そして注目すべきは、これまで何度となくお伝えしてきたように、EVの大容量バッテリーは単にこれまでのガソリン車の燃料に取って代わるだけでなく、日々の暮らしにおいても、あるいは被災などによる停電時においても一般家庭用などの電源として使用出来るだけではありません。

今冬も厳しい寒さのために家庭でのエアコンの使用が増え、たびたび東京電力の電力供給量の逼迫が伝えられていますが、夜間にEVのバッテリーを充電し、その電気の一部を昼間の時間帯に一般家庭用電源として使用することにより、電力需要のピークを緩和させることも出来るのです。

このことは、発電コストの高い古い火力発電の廃止にもつながるのでエネルギー問題の解決にも大きく貢献出来る可能性を秘めているのです。


 
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