2017年01月11日
アイデアよもやま話 No.3597 自動車をめぐる新たな動き その3 次世代バッテリーは長持ちで安全!

2017年の年初にあたって、主に昨年後半にあった自動車をめぐる新たな動きについて8回にわたってご紹介します。

3回目は、長持ちで安全な次世代バッテリー(蓄電池)についてです。

 

昨年12月18日(日)付け読売新聞で次世代バッテリーについて取り上げていたのでご紹介します。

今や、バッテリーはスマホやノートパソコン、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)などの電源として現代生活に欠かせない存在です。

こうしたバッテリーの安全性を高め、使いやすくしようと、更に小型で安価、高性能の次世代バッテリーの開発が進められています。

 

現在、最も幅広く使われているバッテリーはリチウムイオンバッテリーで、1990年代に製品化されました。

しかし、電解質に可燃性の有機溶媒を使用していたため、加熱すると燃えることがあるのが欠点です。

こうした課題を解決するのが、電解質を含め素材全てを個体にした全固体バッテリーです。

液体を密封しなければならないリチウムイオンバッテリーに比べて構造を単純化出来るため、小型化、軽量化が進むと期待されます。

また、電極と電解質を積み重ねて電圧を高めることも容易です。

液体に比べ、個体の電解質はイオンが流れにくいのが難点ですが、新素材の開発で克服されつつあります。

 

また、リチウムイオンバッテリーは比較的長持ちしますが、長期にわたって使用すると充電容量が減少するなど劣化します。

充放電を繰り返すうちにリチウムなどが徐々に負極にくっつく「析出」が起こり、電極の表面にムラができてしまうのが原因の1つで、電流が大きい場所ほど析出が起こりやすいのです。

この課題に対して、首都大学東京の金村 聖志教授(59歳)は2008年、正極と負極の接触を防ぐ「セパレーター」という素材を工夫し、劣化のスピードを抑える方法を開発しました。

金村教授は、「析出が起きやすいためにこれまで使えなかった素材も電極に使えるようになり、バッテリー容量を倍近くに増やせる可能性が広がった」とおっしゃっています。

また、リチウムイオンバッテリーに使われているリチウムはレアメタルで資源の量が少なく高価です。

一方、ナトリウムなど自然界に豊富にある元素を正極に使ったバッテリーの研究も1970年代頃から進められてきましたが、電解質が電気分解されやすく、数回の充放電で使えなくなる欠点がありました。

東京理科大学の駒場 慎一教授(46歳)は、電解質の不純物を取り除けば電気分解が起こりにくくなることを発見し、2009年には100回充放電しても問題ない「ナトリウムイオンバッテリー」を開発し、実用化の道を開きました。

駒場教授は、「ナトリウムは資源がほぼ無尽蔵で、大型のバッテリーを大量に製造出来る。家庭や工場でバッテリーを使えば、(最大使用電力を抑える)ピークカットが進む」とおっしゃっています。

 

この他にもネットニュースで次世代バッテリーについて以下のようなタイトル記事を見つけました。

・東工大とトヨタなど、出力密度3倍の2次電池を全固体で実現(昨年3月23日付け)

Liイオン電池の寿命が12 倍以上に向上、エンジン部品などの安永が開発(昨年11月24日付け)

 

以上、次世代バッテリー関連の記事をご紹介してきました。

 

そもそもバッテリーの歴史は、イタリアの物理学者、ボルタが1800年に開発した銅や食塩水などからなるボルタ電池に始まりますが、今回ご紹介したようにバッテリーの進化はまだまだ発展途上のようです。

バッテリーの長寿命化、小型化、安全性の向上、低価格化が進むとともにEVにはフル充電での航続距離の延び、充電回数の減少、低価格化が期待出来ます。

他にも面倒なスマホの充電回数の減少など様々な利便性が期待出来ます。

更には、レアメタルでなくほぼ無尽蔵に存在するナトリウムなどの資源を使うことにより、低価格化のみならず今後とも拡大する需要に容易に応えることが出来ます。

また、駒場教授もおっしゃっているように電力需要のピークカットにも貢献出来るのです。


(追記)
急速充電器の現在の設置状況から現状で無視出来ない課題を思い出しました。
急速充電器は一昨年から昨年にかけてかなり増えました。
でもガソリンスタンドの設置台数に比べればまだまだ少ないのです。
こうした状況から、EVでの外出時に充電しようとすると、ガソリン車が給油する時に比べてその回数は多くなります。
しかもEVの航続距離は短く、地方ほど急速充電器の設置台数は少ないので、ガソリン車の給油に比べて充電回数は多くなり、充電のための走行距離も多くなります。
こうした状況を加味すると、現状ではエネルギーの消費量におけるEVとガソリン車との差は一般的に言われるほどの差はないと思います。
こうしたことからも、今後のEVの普及に向けて、より遠くまで走れるバッテリーの開発、および急速充電器の設置台数の増加が急がれます。


 
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