1月4日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で石灰石で出来た画期的な紙について取り上げていたのでご紹介します。
昨年12月、都内で開催された環境展「エコプロ2016」では、日本の企業が誇る最先端の素材が集結していました。
その中でひと際注目を集めていた新素材が不思議な紙です。
触ってみると、ツルツルしていて頑丈そうですが、まず驚くのは耐久性です。
手で破ろうとしても破れず、経年劣化に強いのです。
更に水に入れた状態で鉛筆などで文字を書くことも出来ます。
紙の弱点である耐久性と耐水性の両方を克服した紙の代用資材、その名も「ライメックス」です。
実は、「ライメックス」は石灰石からできており、ベンチャー企業、株式会社TBMが2015年に開発に成功しました。
宮城県白石市に「ライメックス」の製造工場があります。
工場のあちこちにあるのが石灰石を砕いた粉です。
そして、もう一つの原料がごく一般的なプラスチック樹脂「ポリプロピレン」です。
石灰と樹脂を機械で混ぜて、高温で熱して引き延ばしていきます。
樹脂は伸びやすく、薄くできますが、そのままでは単なる透明なフィルムに過ぎません。
一方、石灰は白く、しかも硬いので混ぜ合わせることで紙のように白く丈夫なシートになります。
石から作る紙はこれまでにもあったといいますが、独自の技術で軽く薄くできたのです。
TBM白石工場の工場長、小林
貞夫さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「世界でここにしかない技術だと思っています。」
「ライメックス」の価格は1kg当たり約500円と普通の紙と比べると割高ですが、現在生産量を増やしており、コストは下がる見込みです。
なお、リサイクル可能で、一般ゴミとして廃棄出来ます。
一般的に紙を作るには、紙1トン当たり約20本の樹木と約100トンの水が必要です。
しかし、「ライメックス」は石灰石と樹脂のみで木も水も一切使いません。
主原料の石灰石は、日本でも自給率100%で、世界中でほぼ無尽蔵にあるといいます。
「ライメックス」の生みの親でもある、TBMの社長、山崎
敦義さんは番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(「ライメックス」の一番の魅力について、)木を切らずに、水を使わずに砂漠の真ん中でも作ろうと思えば出来る。」
「(これからの時代は)ペーパーレスと皆さん思われていますが、実際にグローバルで見た時、人口増加や産業化が進む中で、(紙は)2030年に(今の)倍の約8億トンの消費量になると言われているんですけど、そういったところで水資源を使わず、こういう素材が作れるのはすごく画期的なことだと。」
そんな「ライメックス」は今、私たちの身の回りにも広がり始めています。
まずは名刺、耐久性に優れ、既に約600社が採用しています。
更に印刷大手の凸版印刷では「ライメックス」の用途について、昨年11月にTBMと共同開発することなどで合意しました。
凸版印刷のビジネスイノベーション推進本部の本部長、糸谷
祥輝さんは、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「封筒は郵便ポストにささった時に半分以上(外に)出ますので、雨に濡れるようなものに使えないかという想定をしたりですとか・・・」
さて、山崎社長は、自ら更なる可能性を求めて動いていました。
商談に訪れたのは、企業や個人向けにチラシやパンフレット、名刺などの印刷を手掛けているラクスル株式会社です。
現在の会員数は30万人を超えています。
ちなみに、ラクスル株式会社についてはアイデアよもやま話 No.3578 「ラクスル」に見企業間のシェアリングエコノミー その1 印刷業界の革新!などでもご紹介したことがあります。
ここで「ライメックス」の製品を取り扱ってもらえば、認知が一気に広がります。
用意していたのは、飲食店向けのメニュー表です。
通常の紙のようにラミネート加工することなく、耐久性や耐水性に優れていることをPR、結果は上々の評価でした。
早ければ2月にも取り扱うことが決まりました。
山崎社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「いよいよ今年からは世の中に本格的に商品としてデビューしていくステージに立ったので、世界中にこの素材をどれだけのスピードで広めていけるか、挑戦していきたいと思っています。」
ちなみに、番組のメーンキャスター、大江
麻理子さんが「ライメックス」を使用した名刺を100枚作ってもらったところ、価格はおよそ2500円で一般の名刺と比べると多少割高です。
しかし、通常の紙で100枚の名刺を作った場合、10リットルの水が必要といいますが、「ライメックス」だとそれが不要なのです。
そこで、「ライメックス」による名刺を採用した企業に聞いたところ、エコをアピール出来るビジネスツールとしても活用出来るということでした。
更に、「ライメックス」はスマホのケースや食品トレイ、あるいは園芸用プランターなど、プラスチックの代替品としても活用の幅が広がってきています。
これによって従来のプラスチックの原料だった石油の使用量を大幅に削減する効果も期待出来るといいます。
山崎社長は、現在使っている樹脂は「ポリプロピレン」などということですが、今後それも天然由来のものに切り替えていくと考えており、より地球に優しい素材を目指して行くということです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
ペーパーレス化がどんどん普及しつつある状況ですが、それでも完全なペーパーレス社会はまだまだ先の話です。
そうした中、今回ご紹介した石灰石を主な原料とする「ライメックス」は以下の点から画期的な紙といえます。
・「ポリプロピレン」を天然由来の資源に切り替えれば、持続可能なかたちでの生産が可能になる
・耐久性、および耐火性に優れているので、プラスチックの代替品としても活用出来る
・大量生産によってまだまだコスト削減の余地がある
ちなみに、自宅の郵便受けに配達された郵便物が雨に濡れてふやけてしまう場合がよくあります。
こうした時に、はがきや手紙の封筒、あるいは郵便物の包み紙が「ライメックス」で出来ていれば雨による被害もなくなると期待出来ます。
ということで、「ライメックス」は製紙業界における革命的な存在として大いに期待出来ると思います。