2016年09月24日
プロジェクト管理と日常生活 No.455 『築地市場移転に思う その4 埋没費用に囚われるな』

小池都知事は都知事選で公約の一つに掲げていた都政の透明化の一環として築地市場移転計画の見直しを表明されていました。

そうした状況を反映して、連日のように関連記事が報道されています。

プロジェクト管理の観点からそうした記事の中から5回にわたって私の感じたことをお伝えします。

4回目は、囚われるべきでない埋没費用についてです。

なお、埋没費用についてはプロジェクト管理と日常生活 No.191 『原発推進派が固執する埋没費用』を参照下さい。

 

小池都知事が築地市場から豊洲新市場への移転時期の延期を決断した理由として挙げていたのは、安全性の懸念以外にも不透明な費用の増加、および情報公開の不足がありました。

小池都知事は、移転に伴う事業費が当初の3926億円から5884億円に増加したことに疑問を持たれたのです。

 

そこで、今回はプロジェクト管理の観点から既に使用済の費用、すなわち埋没費用(Sunk Cost)について取り上げます。

当初の予定通り11月7日に移転すべきであるという推進派の中には、既に移転事業のために莫大な投資をしているので今更途中で止めるわけにはいかないという声が上がっていました。

 

しかし、いくらこれまで莫大な投資がなされていても、現時点での客観的な評価をもとに移転時期を延期してでも安全性の最終評価を待ってから移転させた方が良い、あるいは長期的に見れば、既にかなり工事が進んでいても設計の一部変更をして作り直した方が良い、という決断が下された場合には過去の投資の多寡、すなわち埋没費用の大きさに囚われてはいけないのです。

 

特に小池都知事が指摘されているように、誰がどのような過程で決定したのか分からない状態で事業費が当初予算から大幅に増えたことについてはきちんと精査し、その結果を情報公開する必要があるのです。

 

本来、これまでの都知事や都議会が築地市場移転に伴う事業予算の増加などについて説明責任を果たし、情報公開をしていれば今回のような問題は起きなかったのです。

このようなこれまでの体質は、当然東京オリンピック・パラリンピック開催プロジェクトにおいても同様の問題をはらんでいます。

ですから、今回の問題を契機に都政の透明性の改善が図られることを東京都民は期待していると思います。


 
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