2011年09月03日
プロジェクト管理と日常生活 No.191 『原発推進派が固執する埋没費用』
原発関連メーカーや電力会社は当然のことながら、原発推進派の人たちは、今までさんざん投資してきた原発関連コストを回収するために、あるいは原発関連の先進技術維持のために国内での原発再稼働、あるいは海外各国への原発技術の輸出を進めたいと考えるのは大方の見方です。
でも、日本が今後のエネルギー政策をどう進めるか、を決める際には原発の安全性、太陽光発電などの代替エネルギーの可能性、核廃棄物の最終処理までに要するコスト、あるいは原発停止に伴う経済への影響などいろいろな観点から検討する必要があります。

そこで、注目すべきは アイデアよもやま話 No.1312 八ツ場ダム建設を中止すべきかの判断と埋没費用(Sunk Cost)!でもお伝えした埋没費用の考え方です。
今までつぎ込んできたコスト、すなわち埋没費用は、これからの方向性を決める際に考慮してはいけないのです。
例えば、パチンコなどで負けが込んでくると、それまでにつぎ込んだお金を取り戻そうと増々深みにはまってしまうしまうことにならないように。
今回の福島第一原発事故を契機に、今まで想定していた原発の安全性がもろくも崩れてしまい、大規模な被害をもたらしてしまいました。
そして、その被害総額の全容はまだ当分明らかになりそうもありません。
このような状況になると、いくらこれまで莫大な投資をしてきたからと言って、単純に投資を回収するまで原発を稼働し続ける、ということは国民の立場からは許されません。

さて、埋没費用についてプロジェクト管理の観点から例に取ってみます。
例えば、プロジェクト開発に必要なツールの開発を自前で進めている途中で、機能的に優れ、しかも低価格の市販ツールを見つけた、とします。
この場合、このまま自前でのツール開発を進めるか、あるいは自前でのツール開発を中止して市販ツールを購入するか、を決める際の観点は以下のようになります。
・自前でのツール開発に今後完成までに残された開発コストと市販ツールの購入価格との比較
・自前で開発するツールでの保守費用と市販ツールの運用費用(保守契約など)との比較
・自前で開発するツールと市販ツールとの機能によるメリットの比較

このように今後どうするかを決定する際には、今までに掛けてきたツール開発費は登場していません。

要するに、どのような場合においても、今までどれだけ投資をしていても、当初の想定外の状況が発生した場合には、これまでの投資額がいくらであろうとその額に囚われることなく、今後発生するコストやメリットの比較からどうすべきかを決めるべきなのです。

 
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