つい最近までパナマ文書が世界的に大きな話題となっていました。
そこで、パナマ文書関連について、3つのテレビ番組を通して3回にわたってご紹介します。
1回目は、課税逃れの実態についてです。
4月14日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)でパナマ文書を通して課税逃れの実態について取り上げていたのでご紹介します。
パナマの法律事務所から流出した課税逃れに関する内部文書、その量は2.6テラバイト、本にしてざっと2万6000冊分といいます。
史上最大の暴露ともいわれるこのパナマ文書、番組独自の取材から課税逃れの実態と闇の深さが見えてきました。
カリブ海の島国、パナマで4月12日、パナマ文書の流出先である法律事務所、モサック・フォンセカに現地当局の捜査のメスが入りました。
マネーロンダリングなど金融犯罪への関与が疑われています。
モサック・フォンセカは、ペーパーカンパニーの設立に特化した法律事務所で世界で5本の指に入る“ペーパーカンパニーの卸問屋”との異名を持っています。
パナマ文書によって、中国の習 近平国家主席やイギリスのキャメロン首相など各国の指導者やその周辺人物の税金逃れと思われる疑惑が次々と浮上してきました。
そして、ロシアのプーチン大統領は、友人のオフショア取引を指摘されています。
この他にも、アイスランドでは、グンロイグソン首相が辞任に追い込まれるなど、その波紋は世界に広がっています。
OECD(経済協力開発機構)は、4月13日にパリで緊急会合を開催し、世界における課税逃れの現状を把握したうえで今後の防止策を協議しました。
更に、5月に開催される伊勢志摩サミットでもパナマ文書に関する問題を議題に挙げる予定としました。
世界を揺るがすパナマ文書、その情報を発信したのが、アメリカ・ワシントンにあるジャーナリスト団体、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)です。
そこは以外にも小さなオフィスですが、その正体は世界65ヵ国のジャーナリストが加盟する精鋭集団です。
国境を超えた犯罪や汚職など公的な人物の違法行為を追求する調査報道を行っています。
パナマ文書に関する情報は、世界中の400人のジャーナリストが分析、5月上旬にもパナマ文書に関する完全な情報が公開されるとされました。
租税回避地(タックスヘイブン)に法人を設立した日本人の名前は400人ほどあると言われ、今後日本に関する課税逃れの実態が明らかになる可能性も高いといいます。
パナマ文書は一つの法律事務所のデータでしかないというICIJ、この問題はどこまで広がるのでしょうか。
世界のタックスヘイブンとして、ヨーロッパのモナコ、中東のバーレーン、アフリカのイギリス領ジブラルタル、そしてナウルやバヌアツといった南太平洋の国々、というように規模の小さい国や島国が多いのが分かります。
産業や資源の乏しい国が会社設立の手数料であったり、雇用の確保のために設定しているケースが多いと言われています。
そもそもタックスヘイブンの起源にはいろいろな説があるといいます。
中世のローマ教皇領、あるいはハンザ同盟の都市の一つだったとも言われています。
ただ現在のようなタックスヘイブンの始まりは1920年代〜1950年代といいます。
戦争で財政が厳しくなった国が相次いて自国の税率を引き上げる中で、主に富裕層が個人の資産を守るために使っていたと見られています。
パナマに今回のパナマ文書の発信元であるイギリス領バージン諸島があります。
世界中にあるタックスヘイブンの中で特に注目を集めているのがこのバージン諸島といいます。
今回のパナマ文書の発信元によると、先ほどご紹介したモサック・フォンセカによって設立された法人は約21万4000社、そのうち約11万4000社がバージン諸島に集中しているといいます。
タックスヘイブンに詳しい現地の弁護士、マーティン・ケニーさんはその実態について番組の中で次のようにおっしゃっています。
「(バージン諸島をタックスヘイブンとして選ぶ理由について、)バージン諸島は機密性が高い。」
「イギリスの法律で弁護士や会計士には守秘義務がある。」
「クライアントの秘密を暴露出来ない。」
「(どんな人物が租税回避を行っているかという問いに対して、)最近最も多いのは中国人だ。」
「モサック・フォンセカの40あるオフィスのうち10が中国にある。」
「売り上げの少なくとも25%が中国だ。」
「(モサック・フォンセカによる休眠企業(ペーパーカンパニー)の販売について、)古い企業ほど高い価格で売れる。」
「設立後1年経った企業の価値は昨日出来た新しい企業より高い。」
「5000ドルとか6000ドル(約55万〜65万円)が必要だ。」
「10年経った企業は1万ドル(約110万円)かかる。」
このような実態を重く見たアメリカのオバマ大統領は、アメリカや他の国主導で税の抜け道を塞がなければ阻止出来ないと各国の連携を呼びかけています。
ところが、そのオバマ大統領のおひざ元であるアメリカにもタックスヘイブンが存在しているというのです。
それはアメリカ東部のアメリカで2番目に小さい州、首都ワシントンから自動車でおよそ2時間の距離にあるデラウェア州の商業の中心地、ウィルミントン市です。
多くのアメリカの企業がウィルミントン市の普通の2階建てのオフィスビルに見える1209番地を会社の本拠地にしています。
大小28万社の企業が1つのビルを“会社の本拠地”としているというのです。
欧米メディアによると、ここを本拠地としているのはアップル、グーグルなど巨大IT企業の他、フォードやウォルマートなどアメリカを代表する企業が含まれています。
デラウェア州が課す法人税は、州内でビジネスを行っていなければ州法人税はゼロです。
勿論、国に支払う法人税はかかりますが、節税目的にいわゆるペーパーカンパニーを設立し、デラウェア州を本拠地とする企業は増加しています。
その数は110万社以上といい、デラウェア州の約94万人の人口を大きく上回っています。
行政もこうした流れを後押ししています。
州政府は企業部と名付けた専門部署を持っていて、世界一簡単な会社設立の手続きを売りにしています。
電話やオンラインでサービスを受けることができ、平日は深夜0時まで申請受付可能といいます。
そのために職員の勤務シフトまで変えました。
そして、会社設立に要する時間はたったの2時間ほどといいます。
この10年で95億ドル(約1兆円)もの節税を生み出したといわれるデラウェア州、ここを本拠地とする企業は今後も増えそうです。
以上、番組の内容をご紹介してきました。
パナマ文書の流出先である法律事務所、モサック・フォンセカの売り上げの少なくとも25%が中国であることに驚きです。
中国の共産党幹部、およびその関係者である富裕層の資産運用がその背景にあることは明らかです。
中国は共産党による一党独裁の国ですが、今後パナマ文書の内容がICIJにより詳細に分析され、その結果が公開された場合、現在の中国の体制の崩壊のきっかけになるのではないでしょうか。
また、タックスヘイブンが小国や島国だけでなくアメリカのデラウェア州にもあるということにも驚きです。
そして、ここを本拠地とする企業が110万社以上もあり、その中にはアップル、グーグルなどの巨大企業が含まれているというのです。
さて、今回のパナマ文書の暴露について、アイデアよもやま話 No.3413 舛添都知事の政治資金支出にみる政治家のあり方!でもお伝えしたようにマスコミ、あるいはジャーナリストの重要性をあらためて感じます。
もし、ICIJのような組織がなければ今回の件はこれほど世界的に大々的に報道されなかったのではないかと思うからです。