昨年12月2日(水)放送のニュース(NHK総合テレビ)で地球温暖化の国際交渉は限られたパイの奪い合いという側面から地球温暖化対策について取り上げていました。
そこで、地球温暖化対策に必要な“見える化”という観点からご紹介します。
地球温暖化を食い止めようとすると、世界全体で排出出来る温室効果ガスの総量はどのくらいかというのが科学的にほぼ分かってきています。
その排出可能量がパイに当たります。
これは言い換えれば、使用出来る化石燃料の量とも言えます。
今世紀末の気温上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えようとした場合、パイのサイズはもともと2兆9000億トン分あったのですが、そのうち2兆トンほどは既に消費済みで9000億トンほどしか排出出来る枠は残っていないといいます。
これは、現在の世界の排出ペースだと20年以内に無くなってしまう量だと予測されています。
パイが無くなったら気温上昇を2℃未満に抑えるという目標の達成は困難になってしまいます。
そこで、先進国側はこれからは途上国も含めてみんなで削減しなくてはいけないと主張していましたが、途上国や新興国側はそもそもこのパイは先に先進国が食べてしまったのだから、責任は先進国にあって、我々はまだ成長する権利があると主張していて、これがぶつかりあっていたというのが従来の構図だったのです。
ところが、幸いなことにプロジェクト管理と日常生活 No.418 『COP21にみる地球温暖化対策のあり方 その4 問題やリスク、課題を解決するための対応策』でもお伝えしたように、昨年開催されたCOP21(パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)で、大枠で先進国、新興国、そして途上国が全員参加型で「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑える」という国際目標を設定し、「今世紀後半には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」ことを盛り込むことが出来ました。
しかし、9000億トンほどの排出量枠に対し、現在の世界の排出ペースだと20年以内に無くなってしまうというのが現実です。
ですから、本気で地球温暖化問題に世界各国が共同して取り組むうえでは、常に9000億トンという排出量枠を強く意識することが求められます。
そして、特に先進国には自国のCO2排出量削減の促進とともに途上国の経済成長に対する先進技術による支援、およびそれに伴う資金支援をすることが必須です。
なぜならば、途上国の経済成長を止めることは出来ないからです。
そして、経済成長とCO2排出量削減の両方を満たす要件は、先進技術による支援しかないからです。
そこで、一つ提案があります。
それは“見える化”です。
ネット上に9000億トンの排出量枠に対する現状の排出可能残量、および排出残量ゼロまでの年数を公開することです。
こうした“見える化”により、地球温暖化の進行度合いを誰もが常に意識することが出来ます。
そして、地球温暖化対策の促進につなげることが出来るのです。
プロジェクト管理において“見える化”はとても重要です。
目標や現状を数量化して“見える化”をすることにより適切な管理が可能になり、関係者全員の意識も高まるのです。
ですから、地球温暖化対策も世界的なビッグプロジェクトと位置付けて管理すべきなのです。