2016年01月09日
プロジェクト管理と日常生活 No.418 『COP21にみる地球温暖化対策のあり方 その4 問題やリスク、課題を解決するための対応策』

今回はプロジェクト管理の観点から、一連の報道を通してCOP21の採択にみる地球温暖化対策のあり方について、4回にわたってお伝えします。

4回目は、CMMIの観点からのCOP21(パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)の評価についてお伝えします。

 

プロジェクト管理の観点から対応策を検討するうえで、まず思い浮かぶのはこれまで何度かお伝えしてきた、プロジェクト管理の世界ではバイブル的な存在のCMMIという手法です。

 

プロジェクト管理の世界では有名な、米カーネギーメロン大学ソフトウェア工学研究所が公表したソフトウェア開発プロセスの改善モデルとアセスメント手法であるCMMICapability Maturity Model Integration 能力成熟度モデル統合)があります。

このCMMIでは、組織の成熟度を以下に示すように5つの段階に分けて評価します。

レベル1 : 初期状態 (混沌とした、いきあたりばったりで、一部の英雄的なメンバー依存の状態)

レベル2 : 管理された状態 (反復できる状態、プロジェクトレベルで管理・プロセスの規則が存在)
レベル3 : 定義された状態 (組織の標準プロセスがあり、組織横断的に実施されるプロセスの首尾一貫性が保たれている状態
)
レベル4 : 定量的に管理された状態 (蓄積された過去のデータを統計的に分析しており、定量的な予測ができる状態
)
レベル5 : 最適化している状態 (継続的に自らのプロセスを最適化し、プロセスを改善する状態)

 

そこで、前回お伝えしたCOP21(パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)の成果をこのCMMIに照らして評価してみました。

結論は、とても十分とは言えないまでも枠組みとしてはレベル5までを包含したものとなっているという評価です。

その理由は以下の通りです。

・地球温暖化問題に対して、途上国を含めて全ての国で危機意識が共有化出来たこと

・「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑える」という国際目標を設定出来たこと

・「今世紀後半には温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」ことを盛り込んだこと

・先進国だけでなく途上国も含めて全ての国が自主的に温室効果ガスの削減目標を作成し、国連に提出、対策を取ることを義務付けられたこと

・各国の実施状況の報告と目標の5年ごとの見直しを義務化し、その内容を公表すること

・排出量の実績などについては専門家による検証を受けること

・世界全体の削減状況を2023年から5年ごとに確認すること

 

要するに、個々にみれば不十分ながら、あるいは世界的な目標と個別目標との不整合はあるものの、明確な世界的な目標を設定し、それを達成するためのPlan−Do−Seeという一連の改善サイクルを回し、更に専門家による検証を取り入れた新しい枠組み「パリ協定」の採択は一定の成果を上げたと言えます。


 
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