2001年9月1日に発生したアメリカ同時多発テロに世界中の人々は驚愕しました。
そして今、IS(イスラム国)などによる国際テロが日常茶飯事のように世界のどこかで起きています。
こうしたテロが発生するまでの戦争は、原則として兵士や兵器関連施設が直接の攻撃対象でした。
また、攻撃する側も一般市民ではなく陸海空の兵隊でした。
勿論、先の戦争で爆撃機による無差別爆撃や原爆投下により大勢の一般市民が犠牲になるという事実がありましたが。
そこで、今回は、関連するいくつかの報道情報をもとに、パリ”同時テロ”から見えてくる新たなテロ勃発リスク対応策の必要性についてお伝えします。
そもそもテロ発生の背景としては以下のようなものが考えられます。
・中東における第一次大戦後のヨーロッパの国境の線引き
・中東イスラム諸国の過激主義や暴力が多くの難民を生み出していること
・フランスなどの移民に対する格差、差別、偏見による移民の将来に対する悲観や疎外感
・宗教的対立
・こうした動向を利用して自らの組織や領土の拡大を図ろうとするISのような集団の発生
・こうした集団の思惑に惑わされて同調する世界各国の若者たちの発生
また、現在、世界各地で起きているテロには、以下のような特徴があります。
・宣戦布告無し
・テロ兵士は一般市民との区別無し
・テロの標的は無差別で普段の暮らしの中でいつ起きるか分からない
そこで、世界各国によるテロ発生のリスク対応策として以下のようなものが考えられます。
・格差社会の是正などにより国民の不満や将来に対する不安を解消すること
・少数派に対する抑圧や扇動的な行動を抑えること
・移民に同化を強いるのではなく、価値観を共有するように教育や職業訓練などの機会を提供し、社会に溶け込めるようにすること
・情報共有など協力して当たること
さて、日本もパリの同時テロを対岸の火事として傍観することは出来ません。
中でも、ISは日本を攻撃の対象と名指ししており、日本人がテロに巻き込まれる可能性が懸念されています。
昨年だけでもISの名のもとに、6人の日本人が規制になっています。
1990年代以降でみれば、50人以上の日本人がジハードの名のもとに殺害されています。
昨年12月20日(日)放送の「日曜討論」(NHK総合テレビ)のテーマは「揺れる世界 テロとどう向き合うか」で、NHK世論調査(昨年12月11日〜13日)によると、大規模テロへの備えが出来ているという回答は20%、出来ていないという回答は72%でした。
そうした中、昨年12月4日(金)放送の「視点・論点」(NHK総合テレビ)の論者、日本大学総合科学研究所の河本
志朗教授は、日本のテロ対策として以下の4つを強調されています。
・水際対策と警戒警備の強化
・国民の当事者意識と警戒
・万一に備えた準備
・多機関連携の強化
テロは一旦発生すれば、多くの犠牲者を出し、社会不安を生み出すので未然防止すること、すなわちリスク対応策が極めて重要だといいます。
しかし、テロはいつどこで起きるか分からないので、警察などによる警備には限界があります。
ですから、国民の当事者意識がテロ対策として重要であるといいます。
また、様々なリスク対応策を実施してもテロを完全に防ぐことは出来ません。
ですから、万一テロが起きた場合に備えた準備や救命活動などの多機関連携の強化、すなわちコンティンジェンシープランも重要になります。
東京オリンピック・パラリンピックまでにテロ対策に残された時間は5年足らずです。
全ての国民はテロは起こり得るのだという危機感を持ち、万一不幸にもテロが発生した場合に備えた準備をし、様々な訓練を重ねて多機関連携を強化する、一刻も早くこうした取り組みを進めることが求められていると河本教授は、おっしゃっています。
一方、以前お伝えしたように日本人の6人に1人は貧困と言われています。(参照:アイデアよもやま話 No.3137 日本人の6人に1人は貧困!)
でも、今のような制度がこのまま続き、並行して様々な業務のAI化やロボット化による人員削減、および非正社員化が進めば、更に日本人の貧困率が高まる可能性が大きくなると見込まれます。
そうなれば、社会の二極化が進み、社会に対する不平・不満が高まり、テロ発生のリスクも高まります。
ですから、日本国内のテロ対策としては、東京オリンピック・パラリンピックの2020年開催に向けたテロ対策と並行して格差社会の是正への取り組みが求められていると思います。