8月27日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で進化する3D映像について取り上げていたのでご紹介します。
私たちを取り巻いているデジタル技術、最先端の現場では無いはずのモノを目の前に登場させることが出来るまでに進化しています。
横浜駅西口から徒歩5分の場所に建設された建物、ここは今までにない施設だといいます。
ステージがCGのキャラクター人物で構成されている、世界初のライブホログラフィックエンタテイメント常設劇場、DMM
VRシアターです。
9月11日(金)にグランドオープンし、10月より本公演がスタートされています。
初回公演コンテンツは1998年に永眠後、17年経った今もなお、音楽シーンに多大なる影響を与え続け、世代を超えて愛され続けているアーティスト、元X
JAPANのhideさんに決定されました。
名曲『ピンク スパイダー』の初ライブがホログラフィックにより再現されるのです。
8月初旬にあった業界向けの内覧会の招待客の一人は、本物と見分けがつかず、本物が出て来たのかと思ったとコメントしています。
この映像で使うのは、3Dのホログラフィックという技術です。
映像を専用のスクリーンに映し出して立体的に見せています。
CGで作った人物などがまるでその場にいるかのように見えるのが特徴です。
ステージの下にある大型のパネルに映像を映し出すと、ステージに設置した透明なフィルムに反射して観客に見える仕組みです。
目の錯覚を利用することで客席からは映像が立体的に見えるのです。
これまでの技術では、映像が透けてしまうのが難点でしたがそれを克服したのです。
その秘密は、パネルに使われているLEDです。
映像はこれまでに比べて非常に明るいため背景の透けも少なく、立体感を出すことが出来るのです。
ちなみに、このLED一式だけで約1億5000万円といいます。
まるで本物のような映像を実現出来るようになり、既に世を去った人の姿でも新たに作り出せるようになったのです。
hideさんの映像を作るには、まずライブの動きを再現した俳優を撮影します。
顔は過去の映像をもとにCGを作成、髪の毛や毛穴まで繊細に作り込み、俳優の体の映像と組み合わせます。
スポットライトの光や影なども実際のライブと同じように細かく作りました。
DMM.フューチャーワークスの黒田 貴泰社長は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「ここまで作り込めるというところは、どこに勝負しに行っても勝てる。」
「繊細なテクノロジーを使った表現は日本人が得意(です)。」
「ソフトウェアやコンテンツに豊富な土壌があると思っていたので、まさに今、日本が勝負出来ていない世界市場に打って出るには、ハードとソフトの両方を持って勝負しに行くのが一番勝ち目が高い。」
劇場を作る背景には、映画や音楽ソフトなどのコンテンツ市場の停滞があります。
国内の市場は、2000年代半ばに13兆円に達した後、伸びていません。
新技術による活性化が求められているのです。
そこで、総額20億円かけてこのプロジェクトを成功させ、市場を活性化させようというのです。
オープンに向けて準備中のこの劇場には、日々訪問客が絶えません。
セガゲームスや中国の大手映画制作会社、北京ダイナスティ・エンターテインメントからも視察に訪れており、感触は悪くありません。
中国からの視察者もこの3D映像ビジネスの将来性に期待を寄せており、いち早く中国に持って行って一緒にやりたいといいます。
この技術の広がりはエンターテインメントだけに留まりません。
大阪駅の駅ビルにあるジュエリーショップ、カシケイストア ルクアイーレ店、置かれているのはダイヤモンドの指輪の入ったショーケースです。
指輪の周りに浮かび上がる映像、これも3Dホログラフィックです。
通りがかった買い物客も足を止めます。
このショーケースを扱うのは、映像制作の株式会社SUGOI(東京都港区)です。
フランスの会社からライセンスを取り、SUGOIがリースします。
更に、SUGOIは富士通と組んで新たな仕組みを開発中です。
ショーケースに映った映像をスマホのカメラで映すと、自動的にサイトにつながり、お客を誘導します。
広がり始めた3Dホログラフィック技術の可能性について、デジタルコンテンツ協会の市原 健介専務理事は、番組の中で次のようにおっしゃっています。
「エンターテインメントとして楽しむのに普及していくためには、手間がかかるものはちょっと厳しかったのかなと。」
「(今回の技術は)今までとは質が違うので、医療の分野とかデジタルサイネージ(参照:アイデアよもやま話 No.1468 デジタルサイネージは広告革命!?)など、ビジネスの世界でも活用されていく(と思います)。」
白黒テレビからカラーテレビへの転換は、大変な需要を生み出しました。
ところが、カラーテレビから3Dテレビへの転換は、今のところそれほどでもなさそうです。
その理由としては、高い価格や3Dメガネ着用の煩わしさ、あるいはちょっと不自然な映像にあると思います。
でも、今回ご紹介したライブホログラフィックエンタテイメント常設劇場、DMM VRシアターは、将来的にはかなり期待出来そうです。
というのは、例えば、美空ひばりや尾崎豊のような伝説的な歌手やビートルズなど、既に解散してしまったバンドの再現ライブを臨場感たっぷりに楽しむことが出来れば、多少高額の料金を支払っても行きたいというファンは大勢いると思うからです。
確かに、今は製作費がかなりかかっているようです。
でも、世界規模の大きな需要が見込まれれば、投資に見合うだけの売り上げが期待出来ます。
中国の大手映画制作会社もここに着目したのだと思います。
ということで、3Dホログラフィックの今後には大いに期待したいと思います。