昨年１１月２５日（水）放送の「報道特集」（ＴＢＳテレビ）で日本発の画期的な「協生農法」について取り上げていたので内容の一部をご紹介します。
ほとんど耕さず、農薬も肥料も使わず、１つの畑で多様な作物を育てる、そんな試み、日本生まれの「協生農法」（添付１参照）が始まっています。
鳥取県米子市、Jリーグのサッカースタジアムの敷地内で小さな畑を始めた医師がいる。
桐村理沙さん、都内の病院勤務などを経て鳥取県へ移住、今は病気の予防を主眼に置いて様々な活動をしている。
その１つがこのユニークな畑だ。
桐村さんは次のようにおっしゃっています。
「鳥取砂丘のイメージあると思うんですけど、ここも砂丘で完全な砂地なんです。」
「トマトがブッシュ、藪みたいになっているんです。」
「これミニトマトなんです。」
「ブッシュの方が風からも守られて、太陽の熱からも守られて、結構寒い時期まで生きるんですけど。」
この畑、同じ種類の野菜が並ぶ普通の畑とはかなり違う。
一見、くさむらのようだが、よく見ると様々な野菜や果物が育っている。
桐村さんは次のようにおっしゃっています。
「もともとは、ここ人工芝が敷いてあるのですけど、人工芝をはがして畑にしたんで、完全に草１本生えてない砂地だったんですよ。」
「控えめな砂でね。」
「だから微生物活動も昆虫活動も植物活動も全然ない。」
「それが１年ちょっとでモリモリの緑になったって状態なんですけど。」
桐村さんが取り組んだのは「協生農法」。
２０１０年、日本で生まれた。
いろいろな種類の果樹や野菜の種や苗を同じ畑に植える。
自然に近い生態系を作り出すという。
桐村さんは、ここに１００種類の種や苗を植えた。
ある程度育つまでは水やりをしたが、後はほとんど見守るだけ。
肥料も農薬も使わない。
「協生農法」を生み出した人物は三重県伊勢市にいた。
大塚隆さん、ムーさんと呼ばれている。
毎月、ここで「協生農法」の講習会を開いている。
ムーさんは長年、自然豊かな全国のリゾート地で観光の仕事に携わっていた。
そこで、担い手不足に悩む農家の声を聞いてきた。
解決策はないかと、植物の育ち方を観察していると、それほど労力をかけなくても出来る農法を思い付いたという。
講習会では、ムーさんの弟子の農園も訪れる。
ムーさんの弟子、バラ園を経営する薮木一輝さんは次のようにおっしゃっています。
「元々はね、バラを作っていたハウスだったんですね。」
「ちょうどいい具合に虫と鳥が入って来てくれる。」
６年前から壊れたビニールハウスで本業の傍ら、「協生農法」を始めた。
薮木さんは次のようにおっしゃっています。
「今年、やっと初めてレモンを採ったんですけど、レモンて意外と葉っぱも香りがすごくいいんですよ。」
「これ、揉んでいただいて、匂い嗅ぐと分かるんですけども、すごく香りするでしょ。」
「ここの植物は特に香りがものすごく強い。」
「で、こういったものをお茶にしたりとか、そういった活用の仕方があるんで。」
また小さいが、ニンジンを抜いて食べてみた、取材しているキャスターの上村彩子さんは次のようにおっしゃっています。
「すごい甘いニンジンです。」
「香りが強くて、中にはぎゅうっと詰まっている感じがしますね。」
「雑味がなくて甘いので、うん、美味しいです。」
雑草のように生えていたのはニラだ。
このニラを食べたキャスターの上村さんは次のようにおっしゃっています。
「甘いです。」
「辛くなくてびっくりしました。」
薮木さんは数日に一度、１５分ほどしか、ここには来ない。
やるのは収穫と植え付けだけ。
一方で、かたちや大きさの揃った同じ種類のものは一度にたくさん採れるわけではない。
流通には乗せにくく、売るのは簡単ではない。
そこで薮木さんは「協生農法」の会員を募集している。
畑の一部を彼らに貸して、指導。
遠方の会員には収穫した野菜を送っている。
講習会を受けた人は・・・
男性：
「植物とか、そういう見る目が変わりましたね。」
女性：
「ムーさん（大塚さん）の自然の見方、捉え方みたいなところから実践してみたいなって。」
「本当に全部を邪魔者にしてないというか、みんなを味方につけて、一緒に本当に協生してるのが、あの畑から見えたのがすごかった。」
ムーさんの始めた「協生農法」で、なぜ果物や野菜が育つのか。
スケートボードで現われたのが、この農法を科学的に検証し、「協生農法」と名付けた、ソニーコンピューターサイエンス研究所の舩橋真俊さんだ。
東京大学やフランスの大学で、どうすれば環境にやさしい農業が出来るのかを研究する中でムーさんに出会い、自らの理論を実践出来ると思ったという。
舩橋さんは次のようにおっしゃっています。
「（ちょっと離れた山を指して、）あそこの山の斜面が見えます？」
「あそこね、行くと下は岩しかないんですよ。」
「こういうフカフカの土なんか無いんですけど、あれだけ立派な木がいろんな種類、ひしめき合っているんですね。」
「つまり、自然に任せると、ああなる。」
「持続可能性とか健康とか、環境問題を考えた時に、あっちの、より生物多様性、そういったものを突き詰めた食料生産のあり方として研究したり、社会実装しているのがこちらの「協生農法」の農園になります。」
自然界の基本はいろいろな種類のものが隙間なく入り混じって生える密生と混成。
「協生農法」では、この自然界の常識を人工的に取り入れる。
舩橋さんは次のようにおっしゃっています。
「植物の種類がいっぱいあると、微生物の種類も増えます。」
「なので植物の種類をまず増やすと。」
「それによって微生物が増える。」
「それによって元から土の中にあった栄養分が吸収出来るようになりますし。」
土壌微生物が多様化すると、その働きで野菜や果物は栄養分を取り込み易くなるという。
そんな生き物どうしの協力や協調により、肥料や農薬を使わなくても作物が育つというのだ。
ところどころに果樹を植えるのも「協生農法」の特徴だ。
舩橋さんは次のようにおっしゃっています。
「木が増えるとですね、例えば鳥が飛んできて停まるようになるんですね。」
「それから、葉っぱが落ちて、これは人が投入した肥料ではなく、自然循環の中で、有機物のサイクルが生まれます。」
「木があった方が循環が促進されますし、やってくる虫の量も増やすことが出来ますので、生態系としては安定します。」
鳥の糞なども自然の肥料として生かす。
また、「協生農法」では土を耕さない。
そのことで土壌に溜まっていたＣＯ２の放出を抑えられ、地球温暖化の抑制にもつながると舩橋さんは言う。
「協生農法」は環境だけでなく、人にも優しいとして、今、地方からも熱い視線が注がれている。
そのキーパーソンが予防医療を目指して鳥取県に移住、「協生農法」を始めた桐村里紗医師だ。
「協生農法」で育った茶葉と通常の農法で育った茶葉を舩橋さんらが分析したところ、「協生農法」の茶葉には複数のファイトケミカル、植物由来の機能性成分が通常の農法より豊富に含まれていたという。
桐村医師は、「協生農法」の農園で採れる他の野菜や果物にもファイトケミカルが豊富に含まれていると考えている。
桐村医師は次のようにおっしゃっています。
「ファイトケミカルは野菜が外敵や紫外線など、自分を傷つけるものから身を守るために出す免疫物質みたいなものなんですね。」
「例えば、ポリフェノールとかカテキン、ベータカロチンとか、そういったものがファイトケミカルの一種なんですね。」
「だから、野菜の色とか、香りの成分がファイトケミカルなんですけど、「協生農法」の野菜は本当に味がめちゃくちゃ濃くて、それが人間にとっても抗酸化作用にもなるし、色々な機能性を発揮してくれるので、“第七の栄養素”とも言われてるんですけども。」
桐村医師は、昨年、鳥取県の江府市と協定を結び、「人と地球の健康」を同時に実現するプロジェクトを始めた。
江府町は人口２７００人。
少子高齢化と人口減少が進む町だ。
今年５月には、プロジェクトの拠点となる公園を「協生農法」で“食べられる公園”に変える計画がスタートした。
この日は、地元の人たちに加え、「協生農法」に興味を持つ人々が全国から集まった。
桐村医師は次のようにおっしゃっています。
「「協生農法」とか、生物の多様性を高めながら、色々な種類のものが採れる。」
「それを私たちが取り入れることによって、腸内環境の多様性も高まるっていう、まさに地球の土も腸の土も同時に解決出来る。」
同じ鳥取県の米子市や「協生農法」を教育に取り入れる学校も登場した。
校庭の一画を公園にし、農薬や肥料が無くても生き物たちの協力で野菜や果物が育つ様を子どもたちが学ぶ。
ナス、オクラ、キュウリにニンジン、かたちは悪くても様々なものが採れている。
こちらの学校の教員は次のようにおっしゃっています。
「最初は私も半信半疑でした。」
「ただ、実際に大きなキュウリが採れたり、ナスが採れたり、そういう普通の畑で採れるものが採れていることに、ものすごくビックリしました。」
「協生農法」が、今の農家が抱える問題を解決する可能性も増えている。
担い手不足による耕作放棄も起きる荒廃農地の問題だ。
日本の荒廃農地は２６万ｈａ（２０２１年度・農水省）、東京２３区の約４倍の面積に上る。
６年前から「協生農法」に取り組む森哲也さんは次のようにおっしゃっています。
「「麦わら農園」て呼んでるんですけど、食べられる森です。」
「一反（約１０００�屐砲糧�で果樹だけでも１００本以上植わってます。」
「有用植物、野菜やハーブや山菜を入れると、もう１００種類以上。」
猛暑に襲われたこの夏は、さすがに時々水やりをしたと言うが、農園にはベリーにみかんといった果物、沖縄のキュウリ、モーウイなどの野菜が沢山成り、食べられる花も咲いていた。
今では、家族４人が食べるのに十分な量が収穫出来ているという。
元々ここは休耕田だった。
水を溜められる粘土質で、水はけが悪く、このまま放置すれば、荒廃農地になり兼ねないと森さんは考え、休耕田を畑に変えるため、溝を掘って畝を作った。
森さんは次のようにおっしゃっています。
「重粘土質って言うんですけど、粒の粒子が細かいんで、だからかっちかち、コンクリートみたいに。」
「こういうところで野菜が育つとは誰も思わないんですよ。」
「畑には向かないよと。」
「野菜は育たないと言われているところなんですけど、育ってますよね。」
「この休耕田で「協生農法」が成功したら、一気に普及すると思ってますね。」
一度始めれば、少ない負担で出来る「協生農法」。
森さんは、荒廃農地を減らす可能性があると考えている。
早稲田大学などは、「協生農法」専用のロボットを開発している。
ロボットにはカメラやセンサーが付いていて、作物の色やかたちをＡＩで判断。
将来の自動収穫を目指す。
「協生農法」の広がりは国内に止まらない。
日本で生まれた「協生農法」。
ソニーの研究所に勤める、（「協生農法」の）名付け親の舩橋さんは、２０１５年、アフリカでも実証実験を始めた。
２０１５年、ブルキナファソの砂地では、１年で草木が育ち、様々な作物が採れたという。
アフリカでは、「協生農法」は急拡大、９ヵ国に広まり、研究する団体、アフリカ協生農法研究教育機関も出来た。
その責任者、アンドレ・テンダノさんは次のようにおっしゃっています。
「（協生農法」を一言で言うと、どんな農法だと感じているかという問いに対して。）「協生農法」は多様な作物を沢山作れる唯一の農法です。」
「収益性だけでなく、生態系を回復する効果もあります。」
「栄養的にも衛生的にも評価が高く、農薬も使っていませんし、採れた作物は高級品に分類され、価格も通常より高く売れます。」
「協生農法」は昨今の激しい気候変動への対応にも適していると言う。
「例えば、１つの畑でトウモロコシだけを栽培する場合は雨の量がトウモロコシに適さない時は不作で、全部台無しになってしまいますが、トウモロコシだけでなく、同時に落花生や果樹を植えれば、雨の量がトウモロコシには足りなくても、他の作物が育つには十分かもしれないのです。」
「協生農法」は中国各地でも始まった。
「協生農法」の名付け親、舩橋さんは次のようにおっしゃっています。
「やっぱり緊迫したニーズがあるのは中国であったり、アフリカだったり、そういうところの方が、より早く動くんじゃないかなというふうに見ていますね。」
様々な課題があるものの、「協生農法」を始めたムーさん、こと大塚隆さんは、その可能性に期待を寄せている。
「自然界の仕組みを利用した、楽する農法。」
「その力を利用してやれば、労力も費用もかからないでしょということかな。」
「それと、環境に優しいから、今みたいな環境問題、健康問題、飢餓・貧困問題、一気に解決出来る。」
「これが目的で作ったんだよね。」
こうした取り組みについて、キャスターの膳場貴子さんは次のようにおっしゃっています。
「なんか、とってもいいですよね。」
「あまり手をかけなくていいいっていうのは、すごく魅力だと思ったし、それでいて自然環境にもプラスになるっていう農法だったら、是非、家の片隅でやってみたいなと思いながらワクワクして見ていました。」
「で、何より、その土地を土壌から豊かにしていく、土地を再生していくということですよね。」
「そんな農法っていうことは世界的に見ても、これから大きな可能性があるんじゃないでしょうか。」
取材したキャスターの上村彩子さんは次のようにおっしゃっています。
「以前、有機農家さんを取材した際に、雑草の処理をするのが一番大変だということを聞いていたので、雑草をも野菜を作るための環境を作る、それに活用していることにはとても驚きました。」
「ひどければ雑草をある程度切るですとか、枯れそうであれば水をあげるなどの手入れはしますが、生態系が出来上がっていれば、ある程度、自然の力に任せることが出来るというのは、やはり魅力的で、講習を受けに来ている方も家庭菜園に是非取り入れたいという方もいらっしゃいました。」
「そして、土壌については、土壌生態学に詳しい福島大学の金子信博教授です。」
「（金子教授は）「今、世界では、農業で大切な土壌微生物や土壌生物を保全する“耕さない農法”が注目されている。「協生農法」もその一つで、生物間の相互作用をよく考えて開発されたシステムだ。」とお話されています。」
「（ただ、農業で生計を立てるのは大変だと聞くので、こうした農法を農家の方が取り入れるには課題がありそうだという指摘について、）収穫量が読みにくく、大きさや見た目などの問題もあって、まだまだ日本では販路の確保は難しく、自給自足であったり、家族規模の小農に向いていると思うのが正直なところではあります。」
「ただアフリカでは「協生農法」で育てられた野菜がオーガニックの高級食材として高く売られていて、農家さんの収入も上がっています。」
「面積が広がることで、現地の雇用にもつながっているということでした。」
「そして現在は、家庭菜園や兼業など、農業には様々な係わり方があります。」
「自分で何か、ものを一から作ったり、旬のものを食べたり、そして実りに感謝して豊作を祈るというのは大事な食文化でもあります。」
「新しい農法の一つとして、今後どのように広がっていくのか注目していきたいと思います。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
ちなみに、「協生農法」と従来の「有機農法」（添付２参照）との違いは添付３を参照下さい。
番組を通して、日本生まれ（２０１０年）の「協生農法」について以下にまとめてみました。
（きっかけ）
・大塚隆さん（通称：ムーさん）は、長年、自然豊かな全国のリゾート地で観光の仕事に携わっていたが、担い手不足に悩む農家の声を聞いてきた
・解決策はないかと、植物の育ち方を観察していると、それほど労力をかけなくても出来る新たな農法を思いついた
（科学的な検証）
・ソニーコンピューターサイエンス研究所の舩橋真俊さんは、大塚さんが思い付いた農法でなぜ果物や野菜が育つのかを科学的に検証し、「協生農法」と名付けた
-東京大学やフランスの大学で、どうすれば環境にやさしい農業が出来るのかを研究する中で大塚さんに出会い、自らの理論を実践出来ると思った
・自然界の基本はいろいろな種類のものが隙間なく入り混じって生える密生と混成であり、「協生農法」では、この自然界の常識を人工的に取り入れている
-植物の種類がいっぱいあると、微生物の種類も増える
-従って、まず植物の種類を増やすと微生物が増えるので元から土の中にあった栄養分が吸収出来るようになる
-土壌微生物が多様化すると、その働きで野菜や果物は栄養分を取り込み易くなる
-こうした生き物どうしの協力や協調により、肥料や農薬を使わなくても作物が育つという
-ところどころに果樹を植える
-木が増えると鳥が飛んできて停まるようになり、葉っぱが落ちて、自然循環の中で、有機物のサイクルが生まれる
-木があった方が循環が促進され、やってくる虫の量も増えるので、生態系としては安定する
-鳥の糞なども自然の肥料として生かす
-土を耕さない
-そのことで土壌に溜まっていたＣＯ２の放出を抑えられ、地球温暖化の抑制にもつながる
・桐村里紗医師は予防医療を目指して鳥取県に移住し、「協生農法」を始めたが、そこで育った茶葉と通常の農法で育った茶葉を舩橋さんらが分析したところ、「協生農法」の茶葉には複数のファイトケミカル、植物由来の機能性成分が通常の農法より豊富に含まれていた
-桐村医師は、「協生農法」の農園で採れる他の野菜や果物にもファイトケミカルが豊富に含まれていると考えている
・ファイトケミカルは野菜が外敵や紫外線など、自分を傷つけるものから身を守るために出す免疫物質みたいなものである
-例えば、ポリフェノールとかカテキン、ベータカロチンとかがファイトケミカルの一種である
-野菜の色や香りの成分がファイトケミカルである
（地方からの熱い視線）
・桐村医師は、昨年、鳥取県の江府市と協定を結び、「人と地球の健康」を同時に実現するプロジェクトを始めた
-江府町は人口２７００人で少子高齢化と人口減少が進む町である
-今年５月には、プロジェクトの拠点となる公園を「協生農法」で“食べられる公園”に変える計画がスタートした
-この日は、地元の人たちに加え、「協生農法」に興味を持つ人々が全国から集まった
・同じ鳥取県の米子市や「協生農法」を教育に取り入れる学校も登場した
（今の農家が抱える問題を解決する可能性）
・「協生農法」が今の農家が抱える問題を解決する可能性も増えている
-担い手不足による耕作放棄も起きる荒廃農地の問題である
-日本の荒廃農地は２６万ｈａ（２０２１年度・農水省）、東京２３区の約４倍の面積に上る
-６年前から「協生農法」に取り組む森哲也さんは、一度始めれば、少ない負担で出来る「協生農法」には荒廃農地を減らす可能性があると考えている
（「協生農法」専用のロボット）
・早稲田大学などは、「協生農法」専用のロボットを開発している
-ロボットにはカメラやセンサーが付いていて、作物の色やかたちをＡＩで判断し、将来の自動収穫を目指す
（「協生農法」の海外展開）
・ソニーの研究所に勤める、「協生農法」の名付け親の舩橋さんは、２０１５年、アフリカでも実証実験を始めた
-２０１５年、ブルキナファソの砂地では、１年で草木が育ち、様々な作物が採れた
-アフリカでは、「協生農法」は急拡大、９ヵ国に広まり、研究する団体、アフリカ協生農法研究教育機関も出来た
・中国各地でも始まった
-アフリカに限らず中国などにも緊迫したニーズがあるので、より早く動くという
（今後の可能性）
・様々な課題があるものの、「協生農法」を始めた大塚さんは、その可能性に期待を寄せている
-自然界の仕組みを利用した、楽する農法なので、労力も費用もかからない
-環境に優しいので、環境問題、健康問題、飢餓・貧困問題などを一気に解決出来る
（今、世界で注目されている“耕さない農法”）
・今、世界では農業で大切な土壌微生物や土壌生物を保全する“耕さない農法”が注目されており、「協生農法」もその一つで、生物間の相互作用をよく考えて開発されたシステムだと福島大学の金子信博教授は指摘している
・しかし、“耕さない農法”には以下の課題がある
-収穫量が読みにくく、大きさや見た目などの問題もあり、まだまだ日本では販路の確保は難しく、自給自足であったり、家族規模の小農に向いているのが現状である
-一方、アフリカでは「協生農法」で育てられた野菜がオーガニックの高級食材として高く売られていて、農家の収入も上がっており、耕地面積が広がることで、現地の雇用にもつながっているという事例がある
-新しい農法の一つとして、今後どのように広がっていくのか注目していきたいと金子教授は思っている
（メリット）
・ほとんど耕さず、農薬も肥料も使わず、１つの畑で多様な作物を育てることが出来る
-ひどければ雑草をある程度切るとか、枯れそうであれば水やりは必要だが、基本的な作業は収穫と植え付けだけである
-処理をするのが一番大変だという雑草をも野菜を作るための環境として活用する
・採れた野菜や果物は香りが強く、美味しい
・「協生農法」の野菜は味が非常に濃く、それが人間にとっても抗酸化作用にもなり、色々な機能性を発揮してくれるので、“第七の栄養素”とも言われている
・生物の多様性を高めながら、色々な種類のものが採れて、それを私たちが取り入れることによって、腸内環境の多様性も高まるので、地球の土も腸の土も同時に解決出来る
・昨今の激しい気候変動への対応にも適している
-例えば、１つの畑でトウモロコシだけを栽培する場合は雨の量がトウモロコシに適さない時は不作で、全部台無しになってしまうが、トウモロコシだけでなく、同時に落花生や果樹を植えれば、雨の量がトウモロコシには足りなくても、他の作物が育つには十分かもしれない
・収益性だけでなく、生態系を回復する効果もある
（国内でのビジネス化の事例）
・「協生農法」の講習会を開催する
・会員を募集し、畑の一部を彼らに貸して指導し、遠方の会員には収穫した野菜を宅配する
以上、「協生農法」についてまとめてみましたが、ほとんど耕さず、農薬も肥料も使わず、１つの畑で多様な作物を育てる、日本生まれの「協生農法」は、自然を最大限に活用し、しかも自然との共生が図れる、まさに日本の文化を体現したような、究極の農法と言えます。
ただし、大量消費社会の先進国において、すぐに従来の農法に取って代わることは出来ません。
しかし、かたちは不揃いでも採れた野菜や果物は香りが強く、美味しく、しかも健康にも良いというメリットから、一定の需要は期待出来ます。
そして、家庭菜園の普及が進む中、一般家庭での「協生農法」への取り組みも拡大していきそうです。
また、アフリカなどの途上国において、「協生農法」を広大な土地で展開すれば、食糧難の解決に大いに貢献出来そうです。
更に近い将来、早稲田大学などが開発中の「協生農法」専用のロボットが実用化されれば、自動収穫が出来るようになり、農家の人手不足の解消にもつながると期待出来ます。
また、宇宙開発が加速化する中で、宇宙に滞在中での食生活においても、こうした技術はとても役立ちそうです。
なお、「協生農法」の基本的な考え方は、自然に逆らうことなく、とても無理がなく、しかも農薬などを一切使わず、とてもシンプルだと思います。
そして、自然の持つパワーを最大限に生かしているのです。
ですから、まるで相手の動きに逆らわず、力で相手をねじ伏せず、相手の力を利用して相手を倒す、武道の達人の身のこなしを彷彿させるような技術だと思います。
農業に除草剤や農薬を使用するといった、いろいろな技術を用いた方法とは全く真逆な農業への向き合い方です。
従って、その分、エネルギーを消費する必要も無く、環境にも優しくなるのです。
ということで、こうした基本的な考え方をいろいろなところに応用することが出来れば、とてもすっきりした社会になると思ってしまいます。
添付１）
協生農法とは？
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協生農法（Agroecology）は、持続可能な農業システムの一形態であり、環境と社会への影響を最小限に抑えながら食料生産を行うことを目指します。この手法は、生態系の原則や農業の生態学的な相互作用を基にした農業のアプローチです。以下に、協生農法の主な特徴をいくつか挙げてみましょう：
1.生態系の模倣: 協生農法では、自然の生態系を模倣し、農地の生態系をバランス良く保つことが重視されます。生態系の健康を維持することで、害虫や病気の制御が自然な形で進むことを期待します。
2.多様性の促進: 異なる植物種の組み合わせや複数の作物を同時に栽培することにより、生態系の多様性を促進します。これにより、生態系の安定性が向上し、土壌や生態系の健康が改善されるとされています。
3.有機農業の原則: 協生農法は通常、有機農業の原則に基づいています。化学肥料や農薬の最小限の使用、土壌の保護、持続可能な資源管理などが含まれます。
4.循環型の農業: 協生農法では、資源の循環を重視します。例えば、有機物質を堆肥にして土壌に戻すなど、資源を効果的に再利用することが特徴です。
5.農民参加と地域社会の結束: 協生農法では、農民の参加と地域社会の結束が重要視されます。地域の独自の環境条件や文化に適応した農業が奨励されます。
6.持続可能な食料生産: 協生農法は、持続可能な食料生産を追求します。これには地元の需要に合った食料の生産や、地域社会において維持可能な農業の形成が含まれます。
協生農法は、持続可能性や環境への配慮が重視される現代の農業において注目を集めています。異なる地域や環境条件に適応させながら、食料生産の効率性と環境への影響を同時に考慮することが特徴的です。
添付２）
有機農法とは？
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有機農法は、化学的な肥料や合成農薬を最小限に抑え、自然な生態系の原則に基づいて食料を生産する農業の手法です。有機農法では、持続可能性、環境保護、動植物の健康への配慮が中心となります。以下は、有機農法の主な特徴です：
1.無化学肥料: 有機農法では、合成の化学肥料の使用を最小限にとどめ、代わりに有機資材や堆肥を土壌に追加して栄養分を補給します。これにより土壌の健康を保ち、微生物の活動を促進します。
2.合成農薬の最小化: 有機農法では、化学的な農薬や除草剤の使用を制限し、代わりに自然の敵や有機的な手法を用いて害虫や雑草の管理を行います。これにより、土壌や水質、生態系に対する悪影響を減少させます。
3.遺伝子組み換え作物の禁止: 一般的に、有機農法では遺伝子組み換え作物の使用が許可されていません。これは、自然の生態系への潜在的な影響や遺伝子組み換え技術に対する疑念からくるものです。
4.循環型の農業: 有機農法は、資源の循環を重視します。例えば、農作物の残さや動物の排泄物を堆肥として再利用することが一般的です。
5.動物福祉の考慮: 有機農法では、家畜の飼育においても動物福祉を重視します。放牧や屋外飼育が奨励され、抗生物質や成長促進剤の使用が制限されることがあります。
6.地域社会との結びつき: 有機農法はしばしば地域社会との結びつきを重視し、地元の需要に合った生産を奨励します。直売所や地元の市場での販売が一般的です。
7.有機認証: 有機農法を実践する農業者や生産者は、有機認証を受けることがあります。認証プロセスは一定の基準に基づき、生産者が有機農法の原則に従っていることを確認するものです。
これらの特徴により、有機農法は環境や人の健康に対する悪影響を最小限に抑えながら、持続可能で健康的な食料生産を目指します。
添付３）
協生農法と有機農法の相違は？
ChatGPT
協生農法（Agroecology）と有機農法は、両方とも持続可能な農業の手法でありながら、いくつかの重要な相違点が存在します。以下に、協生農法と有機農法の主な相違を挙げてみましょう：
1.理論的なアプローチ:
•協生農法: 協生農法は、広範な生態系の原則に基づいた農業のアプローチです。生態系の模倣、多様性の促進、地域社会の結束などが重要な要素です。
•有機農法: 有機農法は、主に化学的な肥料や農薬の最小化に焦点を当てる農業のアプローチです。有機資材の利用、合成農薬の制限、遺伝子組み換えの禁止などが特徴です。
2.範囲と対象:
•協生農法: 協生農法は、広い範囲で生態系の健康を保ちつつ、食料を生産することを目指します。生態系全体の相互作用を考慮しています。
•有機農法: 有機農法は、特に化学的な肥料や農薬の使用を制限することに焦点を当て、土壌や水質の保護、人の健康への悪影響の最小化を目指します。
3.生態系の模倣:
•協生農法: 協生農法では、自然の生態系を模倣し、生態系の構造や機能を理解して、それを農業に応用します。
•有機農法: 有機農法も自然のプロセスを尊重しますが、協生農法ほど広範かつ深いエコロジカルなアプローチではありません。
4.科学的基盤:
•協生農法: 協生農法は生態学や生態系科学の原則に基づいています。科学的なアプローチとエビデンスに基づいて実践されます。
•有機農法: 有機農法も科学的な研究に基づいており、有機農業の原則やプラクティスは科学的な評価や研究によって支持されています。
5.認証プロセス:
•協生農法: 協生農法には特定の国際的な認証プロセスがなく、その実践は地域やコミュニティの特定の状況に合わせて変化します。
•有機農法: 有機農法には国際的な有機認証制度が存在し、一定の基準に基づいて認証が行われます。
これらの相違点にもかかわらず、協生農法と有機農法はどちらも環境に配慮し、持続可能な農業を追求する点で共通しています。異なる地域や農業環境において、これらのアプローチを組み合わせることもあります。
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