2024年02月17日
プロジェクト管理と日常生活 No.857 『羽田衝突事故の緊急安全対策』
1月9日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で羽田衝突事故の緊急安全対策について取り上げていたのでご紹介します。 

羽田空港で起きた航空機の衝突・炎上事故から今日(1月9日)で一週間です。
国土交通省(国交省)は緊急の安全対策を発表しました。
新たな事故を防ぐ取り組みは効果を発揮するのでしょうか。

斉藤国交大臣は次のようにおっしゃっています。
「直ちに取り組むことが出来る安全安心対策について、これまで指示したものも含め、緊急対策として取りまとめました。」

羽田空港のC滑走路で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突・炎上した事故を受け、国土交通省が取りまとめた緊急対策、管制官による監視体制の強化や滑走路侵入に関するルールの徹底など、5つが示されました。(こちらを参照)
これらの中で、既に実施されているのが視覚支援。
滑走路の中に入る手前の停止線を目立つ塗料に変更するというものです。
羽田空港のC滑走路では6日に塗り替えが行われました。
今後、他の滑走路や各地の空港でも実施される予定です。
国交省によると、新たに塗られたのは高輝度のものだといい、クルマの走る道路でも使われているといいます。
道路向けの“高輝度”塗料を扱う双葉ライン(東京・葛飾区)にその特徴について訊いてみると、塗料に混ぜ込まれているのが細かなガラスの粒、このガラスに光が反射することで視認性が向上するのだといいます。
双葉ラインの北條勝政社長は次のようにおっしゃっています。
「私どもの会社で施工しているわけではないので分かりませんけれども、ガラスビーズが混入していることによってパイロットの方の視認性は向上するかなとは思いますけども。」

緊急対策には用語の見直しも盛り込まれました。
管制塔:
「ナンバーワン、C5上の滑走路停止位置まで地上走行して下さい。」

海上保安庁の航空機(海保機):
「滑走路停止位置、C5に向かいます。」
「ナンバーワン ありがとう。」

今回の事故では管制官が離陸順の1番目を伝える目的で、“ナンバーワン”と発言したことに対し、海保機が離陸の許可と意味を取り違えてしまった可能性が指摘されています。
そのため、緊急対策では離陸順を伝える運用を全国の空港で取り止めることも盛り込まれました。
誤解を招く可能性がある用語の見直しに向け、1月中に管制官とパイロットの交信に関する緊急会議も開きます。
また、管制室には滑走路に誤って侵入した機体を赤色で警告するモニターがありますが、これを常に監視する担当者を新たに配置します。

国交省が打ち出した緊急対策、はたして有効なのでしょうか。
日本航空でパイロットを務めた小林宏之さんは次のようにおっしゃっています。
「監視する人を一人、常時配置するのが一番効くのではないかと思います。」
「今回も、もし専門の人が画面を見ていたとしたら、事故を防げたと思うんですね。」

管制官は滑走路以外にも気を配る必要があるため、専門職員の配置は有効だといいます。
また、パイロットを務めた経験から、停止線の塗り直しについては次のようにおっしゃっています。
「輝度を高くすれば、より鮮明に見えますので、それを乗り越えていってしまうということは少なくなるんじゃないかと。」
「ある程度、歯止めになると思います。」

一方で、管制官とパイロットの交信については次のようにおっしゃっています。
「(今後、見直される言葉はあるかという問いに対して、)今のところは考えられないです。」
「用語につきましては既に見直した用語ばかりですので、ここで再度徹底いたしましようという意味だと思います。」

今回の対策で、事故の再発をほぼ防げるのではないかと指摘する小林さん、一方でヒューマンエラーを防ぐにはAIなどを用いたシステムの導入も必要だと指摘します。
「人間ていうのは、どんなに頑張ってもヒューマンエラーをゼロには出来ませんので、そういった意味からしても、例えヒューマンエラーが発生しても、事故に至らないソフト、あるいはハードを開発していくというのは絶対必要だと思います。」
「今の技術、あるいはAIを使った技術ですと将来的には、(そうしたシステムが)可能になる可能性は十分あると思います。」

緊急対策を公表しました国土交通省は、今後有識者による検討会を立ち上げまして、運輸安全委員会からの調査報告の後に抜本的な対策を取りまとめる方針です。

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組の内容を以下にまとめてみました。
・1月2日、羽田空港のC滑走路で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突・炎上した事故が起きた
・これを受け、1月9日、国土交通省が取りまとめた緊急対策、管制官による監視体制の強化や滑走路侵入に関するルールの徹底など、以下の5つが示された
 1.管制機関及び航空事業者等への基本動作の徹底指示
 2.管制官による監視体制の強化
   -管制室には滑走路に誤って侵入した機体を赤色で警告するモニターがあるが、これを常に監視する担当者を新たに配置する
 3.パイロットによる外部監視の徹底、視覚支援
   -視覚支援とは、滑走路の中に入る手前の停止線を目立つ塗料に変更することであり、既に実施されている
   -今後、他の滑走路や各地の空港でも実施される予定である
 4.滑走路進入に関するルールの徹底
 5.関係者間のコミュニケーションの強化
   -誤解を招く可能性がある用語の見直し
・元パイロットの小林さんは、再発防止策について以下のように指摘している
 -今回の対策で、事故の再発をほぼ防げるのではないかと見る
 -一方でヒューマンエラーを防ぐにはAIなどを用いたシステムの導入も必要である
 -どんなに頑張ってもヒューマンエラーをゼロには出来ないので、例えヒューマンエラーが発生しても、事故に至らないソフト、あるいはハードの開発は絶対に必要である
・緊急対策を公表した国土交通省は、今後有識者による検討会を立ち上げて、運輸安全委員会からの調査報告の後に抜本的な対策を取りまとめる方針である

なお、1月19日(金)付けネット記事(こちらを参照)では事故当時の緊迫した状況が詳細に書かれています。

そして、この事故の詳細な調査はまだまだ続き、運輸安全委員会が回収した海保機のボイスレコーダーの解析がカギになるといいます。

しかし、この2つの情報源から、以下の再発防止策案が浮かんできます。
・管制室には滑走路に誤って侵入した機体を赤色で警告するモニターがあり、現在は補助的に使用しているが、赤色で警告する際、警告音も出して、管制官に知らせる
・羽田空港は世界有数の混雑空港で、管制官の余裕がなくなっているという声も多く聞かれることから、AIなどのITを最大限に活用して、管制官の作業の負担を減らす

 
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