2024年01月13日
プロジェクト管理と日常生活 No.852 『中古車業界 不正防止の切り札 その1 査定の分離』
昨年9月5日(火)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で中古車業界 不正防止の切り札について取り上げていたので2回にわたってご紹介します。 
1回目は、査定の分離についてです。
なお、日付は全て番組放送時のものです。

ビッグモーターの問題(こちらを参照)で揺れる中古車業界ですが、不正を防ぐ新たな取り組みが明日、発表されます。
ビッグモーターのような不正を防ぐため、名古屋のスタートアップ、カーベース株式会社が明日から日本初だという、新たなこのサービスを始めます。
ハニーフ アブドウラ社長は次のようにおっしゃっています。
「僕たちはクルマ屋さんというよりもITの会社と考えておりますので、これからDX化していくことで少しずつ変わっていければなと。」

スリランカ人のアブドウラ社長は5歳から日本で育ちました。
ヤフーでシステムエンジニアを務め、2021年に中古車のネットオークション会社を立ち上げました。
今回始めた“業界が変わる”というサービスについて、その現場を取材しました。
クルマの売却を考えているお客のもとへやってきたのは検査を担当する池末晋之祐さん、“カートリ”と名付けた、この新たなサービス、お客の指定した場所に出向き、クルマの状態を細かく記録していきます。
ただ、池末さんはクルマの状態を調べるだけ、値段をつけることはありません。
実は、ここがサービスの新しいところなのです。

一般的なクルマの買い取りではお客がインターネットで査定を申し込むと、売却希望の方法が多い時には10社以上の買い取り業者に伝わります。
その情報をもとに買い取り業者が個別にお客と連絡を取り、査定して買い取り額を出すのです。
お客は何度も業者に対応する必要があることに加え、査定と買い取りを同じ業者がするため、これがトラブルのもとに。
今回、“カートリ”に申し込んだ井本さん(30代)は次のようにおっしゃっています。
「一括査定に電話したら何社からもコールバックがあって、10社近く電話対応をし、日取りとかを合わせるのが大変で、前の車を売却したことがあったんですけども、ちょっとトラブルになりかけて、・・・」

新サービス、“カートリ”では査定士の資格を持つ検査員がクルマを細かく記録、その情報を買い取り業者に一斉に提供します。
これに対し、高い買い取り額を提示した業者だけがお客とつながれるというサービスなのです。
査定と買い取りを切り離し、ビッグモーターのような不正を防ぎます。
アブドウラ社長は次のようにおっしゃっています。
「僕が個人的に一番の売りは、まず電話ラッシュが無いというところですね。」
「お客様としては我々とだけ対応すればいいというふうなかたちになっておりますので、そこは一番負担が軽減されるんじゃないかなと考えております。」

実は、買い取り業者にとっても検査員の人件費が圧縮出来ます。
池末さんは次のようにおっしゃっています。
「出張検査になるので、お客様の都合のところもあるかと思うんですけど、うまく都合がつけば1日3件〜4件ぐらいは回れるかなと。」

査定では全体像は勿論、細かなところまで最低でも50枚ほどの写真を掲載します。
そこで効率を高める工夫も。
池末さんは次のようにおっしゃっています。
「携帯電話1台で検査は全て弊社はこれだけで、取り忘れもありませんし。」

撮影する順番をアプリが提示するので、それに合わせて撮影するだけ。
写真だけでなく、クルマの調子が分かるようにエンジン音も録音します。
こうして撮った写真などはクラウドを通じて本社にあるパソコンに整理されて収録されます。
会社に戻って来てからは、売り手のこだわりなどのコメントを載せると完成です。
ビッグモーターなどが行った不透明な取引により揺れる中古車業界、新たなサービスを今、展開する理由についてアブドウラ社長は次のようにおっしゃっています。
「正直、今のタイミングですと割と厳しい目が向けられてはいるんですけど、そういったところをオープンにしてやっていくっていうことでお客様から信頼を得られるんじゃないかなと考えていますので、我々としては信頼が一番大事というふうに考えます。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

ビッグモーターのような不正を防ぐため、カーベースが昨年9月6日から始めた、日本初の新たなサービス“カートリ”について、以下にまとめてみました。

(サービスの内容)
・お客の指定した場所に出向き、クルマの状態を細かく記録する
・クルマの状態を調べるだけで値付けはしない
・査定士の資格を持つ検査員がクルマを細かく記録、その情報を買い取り業者に一斉に提供する
・これに対し、高い買い取り額を提示した業者だけがお客とつながれる
・査定と買い取りの切り離しにより、買い取り業者による不正行為を防ぐ

(サービスにおける工夫)
・査定では最低でも50枚ほどの写真を掲載するが、撮影する順番をアプリが提示するので、それに合わせて撮影するだけなので撮り忘れが防げる
・こうして撮った写真などはクラウドを通じて本社にあるパソコンに整理されて収録され、売り手のこだわりなどのコメントを載せて完成させる
・写真だけでなく、クルマの調子が分かるようにエンジン音も録音する

(メリット)
クルマのオーナー:
・カーベースと対応するだけで複数の買い取り業者とのやり取りが不要になる
・これまでより高額で売れる可能性がある
買い取り業者:
・検査員の人件費が圧縮出来る

このように、カーベースが始めているサービスは、カーベースが検査・査定を行い、中古車業者は買い取りをするということで、これまで中古車業者が検査・査定、および買い取りを全て行っていた役割を分離することにより、ビッグモーターが行っていた不正の適切な再発防止策となるのです。

なお、不透明な取引により揺れる中古車業界ですが、“カートリ”を展開する理由についてアブドウラ社長は”信頼が一番大事”と考えているといいますが、このことはどんな業界にも当てはまります。
そして、“顧客に信頼してもらえるか”という視点で現在の商品やサービスのやり方を見直してみることは現行業務プロセスの改善に向けて大いに参考になると思うのです。

 
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