５月１８日（木）放送の「ワールドビジネスサテライト」（テレビ東京）で世界の半導体”幹部”が日本に集結について取り上げていたのでご紹介します。
今回のＧ７サミットでは、半導体などの重要物質をいかに確保するのかといった経済安全保障も大きなテーマとなります。
それに先立ち、今日（５月１８日）、世界の半導体メーカーが日本に集結、テレビ東京はそのトップらに単独インタビューをしました。
語られたのは日本への期待、それも莫大な投資計画でした。
午前９時、総理官邸に入って来る世界の半導体企業のトップたち、岸田総理大臣のもとに集まったのは台湾のＴＳＭＣのマーク・リュウ会長、アメリカのインテルのパット・ゲルシンガーＣＥＯ、ＩＢＭのダリオ・ギルシ ニアバイスプレジデントなどそうそうたる顔ぶれ。
招待した理由について、岸田総理は次のようにおっしゃっています。
「日本企業との連携した投資、あるいは次世代半導体解発への協力、こうしたことにつきましてご説明をいただきました。」
日本への投資に前向きな企業が招かれたといいます。
これまで政府は半導体不足に対応するため、台湾のＴＳＭＣを熊本県に誘致、また、次世代半導体の量産を目指すため、政府が後押しして誕生したラピダス、アメリカのＩＢＭは先端技術の提供を表明し、日本での開発投資に前向きです。
そして今回、新たに日本投資組に加わったのは韓国のサムスン電子です。
西村経済大臣は次のようにおっしゃっています。
「サムスンは日本での後工程の研究開発に関する投資検討、研究開発センターの投資検討のお話がございました。」
岸田総理との面会後、大規模な格子計画を発表した企業も。
アメリカの半導体メモリー大手、マイクロン・テクノロジーのサンジェイ・メロートラＣＥＯは次のようにおっしゃっています。
「我々は日本に５０００億円を投資する。」
メロートラＣＥＯは、新たに５０００億円を投資し、１γと呼ばれる技術を採用した次世代の半導体メモリーを開発すると明かしました。
「１γ（ガンマ）テクノロジーへの投資だ。」
「日本での１γによる半導体生産は２０２６年あたりになる見込みだ。」
開発場所はマイクロンの中核拠点にある広島工場、最先端の技術を導入し、高速、かつ消費電力を抑える高性能なメモリーを生産するといいます。
「世界的な半導体のエコシステムの中で日本は常に重要な存在だった。」
「日本政府は半導体の更なる研究開発や生産への支援を重視している。」
「（今回、５０００億円のうち、日本政府の支援について、）詳細は経産省から後日、発表があるだろう。」
続いて、話を聞いたのはアプライドマテリアルズの半導体部門のトップ、プラブ・ラジャさんです。
半導体製造装置で長年世界トップに君臨するアメリカのメーカーで、アプライドの装置無くして半導体は作れないとまで言われる業界の雄です。
その半導体トップが支援を決めた先について、ラジャさんは次のようにおっしゃっています。
「ラピダスに関する支援は間もなく始まる。」
「協業はカリフォルニアで始まると思う。」
「ラピダスの北海道拠点が準備出来れば、そこでまた支援する。」
現在、北海道で次世代半導体の生産工場の建設を進める日本のラピダスに対し、アプライドはアメリカの拠点で最新装置の技術を提供していくと語りました。
「（ラピダスは２０２７年を目処に次世代半導体を量産するというが、５年くらいかけて協力していくのかという問いに対して、）それはイエスだ。」
「投資規模はラピダス側が実際にどんな支援を必要とするかで変わる。」
実は、このアプライドとラピダスにはある奇妙な縁が。
アプライドマテリアルズは２０１３年、日本の装置メーカーの東京エレクトロンと経営統合を発表、２年後にアメリカ司法省の意向で統合は破断になるのですが、この時の東京エレクトロンのトップが東哲郎さん、現在のラピダスの会長です。
ラジャさんは次のようにおっしゃっています。
「勿論、東さんは尊敬しているし、非常に強固な関係にある。」
「ラピダスとも緊密に連携していく。」
そして最後に私たちが話を聞いたのが世界最大規模の半導体メーカー、アメリカのインテルのパット・ゲルシンガーＣＥＯです。
私たちに明かした新たな投資先は半導体ではありませんでした。
「ちょうど今日、（量子コンピューター開発の）覚書に著名した。」
「大規模な量子コンピューターの実現のために大きな飛躍になると思う。」
ゲルシンガーＣＥＯは日本の理化学研究所（理研）と提携し、量子コンピューター技術を共同で開発していくと明かしました。
３月、初の国産量子コンピューターを公開した理研、その量子コンピューターを動かすうえで欠かせない半導体をインテルが支援することで更なる性能向上につながる可能性があります。
更にインタビューでゲルシンガーＣＥＯが強調したのが日本への期待です。
「今日は世界をリードする半導体企業が一堂に会して岸田総理に会えた。」
「これは日本と、そのエコシステムがいかに重要かを示している。」
「多くの様々な根底のテクノロジーが日本から出てきている。」
「サプライヤーや材料、ウエハーや機器、ケミカルなどだ。」
「ヨーロッパとアメリカ、日本が合意すれば、テクノロジーの世界が合意したようなものだ。」
こうした状況について、番組コメンテーターで早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は次のようにおっしゃっています。
「（そうそうたる顔ぶれの半導体トップが日本に終結し、日本への投資の意欲を感じるが、）ただ一方で、世界的な投資家であるウォーレンバフェット氏が最近、台湾のＴＳＭＣの株を売却したというニュースも入ってきてますので、いわゆる地政学的な背景もあって、日本に注目が集まっているという部分も忘れてはいけないのではないかなと思います。」
以上、番組の内容をご紹介してきました。
また、５月２２日（月）放送の「ワールドビジネスサテライト」（テレビ東京）でも同様のテーマについて取り上げていたので、その内容の一部をご紹介します。
ラピダスの北海道での工場建設に向けた動き、相当本格化してきていますね。
そして、この半導体に関しましては、岸田政権も相当力を入れているということですね。
解説キャスターで日本経済新聞 編集委員の滝田洋一さんは次のようにおっしゃっています。
「あらためて５月１８日に東京に集まった世界の半導体関連７社の顔ぶれを見てみたいんですけども（こちらを参照）、やっぱり海外からの投資の呼び込みは相当本気だと思うんですね。」
「半導体業界の言わばセブンシスターズと言われる面々ですよね。」
「ここでキーワードになってくるのは経済安全保障ということになってくると思うんです。
「マイクロンに対する中国当局の当てつけは相当本格化しているんですよね。」
「そうした中にあって、スマホやパソコンのデータ処理に欠かせないロジック半導体っていうのがあるんですけども、その生産拠点を見るとこんな感じ（こちらを参照）になるわけですよね。」
「特に台湾なんですけども、中国と台湾の軋轢が今後高まることが予想される中で、経済安全保障の観点からも半導体の台湾への一極集中はリスクとしてもかなり強く意識され出していると、そんな感じじゃないでしょうか。」
「（それであらためて半導体の製造開発拠点として日本が注目されているという指摘に対して、）はい、“魚心あれば水心”って、そんな展開じゃないでしょうかね。」
以上、番組の内容の一部をご紹介してきました。
なお、番組ではアイメックについて名前はあげたものの、具体的な内容については触れられていませんでした。
そこで関連記事についてネット検索した結果は添付、および６月１２日（月）付けネット記事（こちらを参照）の通りです。
２つの番組、および関連記事を通して、その内容を以下にまとめてみました。
・５月１８日、日本への投資に前向きな世界の半導体メーカーが日本に集結した
・午前９時、総理官邸に入って来る世界の半導体企業のトップたち、招待した理由について、岸田総理は「日本企業との連携した投資、あるいは次世代半導体開発への協力についてご説明をいただきました」と語っている
・これまで政府は半導体不足に対応するため、台湾のＴＳＭＣを熊本県に誘致、また、次世代半導体の量産を目指すため、政府の後押しによりラピダスを誕生させた
（世界の半導体メーカーの意向）
・ＩＢＭ（アメリカ 長年にわたり、半導体研究に多くの投資を行ってきた）
-先端技術の提供を表明し、日本での開発投資に前向きである
・サムスン電子（韓国 半導体メモリ製品の世界的なリーダー）
-日本での後工程の研究開発に関する投資、および研究開発センターの投資を検討している
・マイクロン・テクノロジー（アメリカ 半導体メモリー大手）
-日本に５０００億円を投資し、１γ（ガンマ）と呼ばれる技術を採用した次世代の半導体メモリーを開発する
-日本での１γによる半導体生産は２０２６年あたりになる見込みである
-開発場所はマイクロンの中核拠点にある広島工場、最先端の技術を導入し、高速、かつ消費電力を抑える高性能なメモリーを生産するという
・アプライドマテリアルズ（アメリカ 半導体製造装置で長年世界トップに君臨するメーカー）
-現在、北海道で次世代半導体の生産工場の建設を進める日本のラピダスに対し、アメリカの拠点で最新装置の技術を提供していく
-ラピダスは２０２７年を目処に次世代半導体を量産するというが、５年くらいかけて協力していく
-投資規模はラピダス側が実際にどんな支援を必要とするかで変わる
・インテル（アメリカ 世界最大規模の半導体メーカー）
-理化学研究所（理研）と提携し、量子コンピューター技術を共同で開発していく
-３月、初の国産量子コンピューターを公開した理研、その量子コンピューターを動かすうえで欠かせない半導体をインテルが支援することで更なる性能向上につながる可能性がある
・アイメック（ベルギー 半導体の微細化に向けた研究に力を入れている）
-ラピダスと提携し、北海道で研究拠点の設立を検討する
-米中対立など半導体産業の変化が両者を近づけた
・入山教授の指摘
-そうそうたる顔ぶれの半導体トップが日本に終結し、日本への投資の意欲を感じる
-一方で、世界的な投資家であるウォーレンバフェット氏が最近、台湾のＴＳＭＣの株を売却したこともあり、地政学的な背景もあって、日本に注目が集まっているという部分もある
・滝田さんの指摘
-５月１８日に東京に集まった世界の半導体関連７社の顔ぶれを見ると、海外からの投資の呼び込みは相当本気である
-半導体業界の言わばセブンシスターズと言われる面々で、キーワードは“経済安全保障”である
-マイクロンに対する中国当局の当てつけは相当本格化している
-そうした中、中国と台湾の軋轢が今後高まることが予想される中で、経済安全保障の観点からも半導体の台湾への一極集中はリスクとしてもかなり強く意識され出している
-そこであらためて半導体の製造開発拠点として日本が注目されている
さて、番組を通して、特に私が注目したのは、以下の３つです。
�� 中国と台湾の軋轢が今後高まることが予想される
・世界的な投資家、ウォーレンバフェット氏が最近、台湾のＴＳＭＣの株を売却した
�� 経済安全保障の観点からも半導体の台湾への一極集中はリスクとしてもかなり強く意識され出している
・地政学的な背景もあり、日本に注目が集まっている
�� インテルのゲルシンガーＣＥＯは「ヨーロッパとアメリカ、日本が合意すれば、テクノロジーの世界が合意したようなものだ」と述べているが、台湾のＴＳＭＣと韓国のサムスン電子も東京に終結している
こうした世界的な半導体関連メーカーが日本に集結する動きは、日本のみならず、世界の半導体の安定的な供給に向けて、とても理に適っています。
地政学的な観点から、日本の半導体関連産業に追い風が吹き、今後の成長にとても期待が持てる状況になっているのです。
なので、岸田政権の支持率は低迷状態にありますが、日本の半導体関連産業の復活に向けた取り組みにおいては高く評価されてもいいと思うのです。
ということで、世界的な半導体関連メーカーが日本に集結することになった背景には、中国を念頭に置いた経済安全保障リスクの対応策の必要性があったのです。
こうした取り組みをエネルギーやＡＩ、宇宙、あるいは医療などの分野においても展開することが日本の経済、あるいは軍事における安全保障の面で大きな成果をもたらすことにつながるのです。
ですから、日本政府にはこうした面で今後とも積極的に取り組んでいただきたいと思います。
なお、世界的な中国の覇権主義的な脅威に対抗する取り組み、中でも現代の“産業の米”とも言われる半導体における“対中国”の連携は中国にとってかなりの脅威と思われます。
また、今や中国は不動産バブル、および若者の２０％を超える失業率といった大きな問題に直面しています。
ですから、習近平政権による世界的な覇権主義の展開はいずれどこかで軌道修正をせざるを得なくなると思われます。
添付）
アイメックと半導体の関連
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imecは半導体の微細化に向けた研究に力をいれており、多くの半導体関連メーカーとの共同開発を進めている。 JSR はimecとの合弁会社でEUV向けフォトレジストを生産するほか、 大日本印刷 （DNP）はimecと共同で、次世代半導体向けフォトマスク（回路原版）の開発を進めている。
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