2023年02月16日
アイデアよもやま話 No.5506 宇宙通信で変わる暮らし!
昨年10月20日(木)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で宇宙通信で変わる暮らしについて取り上げていたのでご紹介します。 
なお、日付は全て番組放送時のものです。

アメリカの実業家、イーロン・マスク氏が率いるスペースXのインターネット接続サービス、スターリンク(STARLINK)の運用が日本でも始まりました。
人工衛星を利用するため、専用のアンテナがあればエリア内どこでも高速のインターネット回線に接続出来るとして注目を集めています。
宇宙に広がる通信網は私たちの生活をどう変えるのか追跡取材をしました。

ビーコア株式会社(東京・千代田区)ではAIを使った画像認識サービスを提供しています。
取締役の杉山典男さんは次のようにおっしゃっています。
「これが当社独自特許のカラービットというコードになっていまして、3色の色を並べることでコードとしてカメラで認識する。」

カメラがこの色の配列を自動で識別することで店舗や工場の在庫管理が出来る他、入館システムなどのサービスを提供しています。
しかし、このサービスに必ず必要となるものがあります。
杉山さんは次のようにおっしゃっています。
「クラウドでやっておりますので、通信環境が重要になってくると。」
「例えば、山間部ですとか、海とかで利用したいというお客さんがゼネコンさんのお客さんに結構いらっしゃったりするので、そういったところで何かしら出来る通信を探していたと。」

こうした中、先週新たに導入したものがあるということで、見せてもらいました。
こちらがスペースXが提供する通信サービス、スターリンクです。
自社のロケットで数千の衛星を打ち上げていて、どんな場所でもインターネットを利用することが出来るといいます。
このサービスについては現在、ウクライナで稼働中です。
ロシアの侵攻を受けたウクライナに無償で提供し、注目されました。
こうした中、先週から日本でもサービスの提供が始まったのです。
使い方は、電源につなげるだけで、待っているとアンテナが自動で衛星を探してくれます。
3分ほど待っているだけで簡単にインターネットが利用出来るようになりました。
しかし、気になるのは通信速度、試しに動画を見てみると、速度を計測しても問題なくインターネットが利用出来る速さが出ていました。
この通信速度がスターリンクの最大の特徴です。
通常、使用される通信衛星は地上から3万6000kmの高さになります。
距離があるので通信に時間がかかります。
それに比べ、スターリンクの高度は550km、地上に近く、高速通信が可能だということです。
アンテナなどの機材は7万3000円ですが、月額の利用料は1万2300円です。
こちらではスターリンクを活用し、山間部など、通信環境が整っていない現場へのサービス拡大に期待しています。
杉山さんは次のようにおっしゃっています。
「本当にベンチャー企業というか、小規模事業体でも、これだけ衛星通信を自由に使ってソリューション(自社のサービス)を展開出来るのは非常に魅力的なものだと思います。」

スターリンクをスペースXとともに法人や自治体向けに提供するのがKDDIです。
松田浩路執行役員は次のようにおっしゃっています。
「(自然災害で)陸上の通信ネットワークが切れた場合には通信が途絶えてしまったんですけども、そこも衛星でバックアップとして活用が出来るのではないかなと、非常に自治体さん方からも声掛けを多くいただいております。」

実はこうした新たな通信手段を巡って、国内でも新たな開発が進められております。
NTTと衛星通信大手のスカパーJSATが立ち上げた株式会社スペースコンパス、現在開発を進めているのがHAPS(高高度プラットフォーム)と呼ばれる新たな通信手段です。
HAPSはスターリンクのような低軌道衛星よりずっと地球に近い高度20kmの成層圏から通信サービスを提供します。
携帯電話の基地局を搭載した無人機から地上に電波を飛ばすのでアンテナなどは要らず、インターネットを利用出来ます。
無人機は、幅25m、重さはわずか70kgほど、機体の全体にソーラーパネルが張られていて、太陽光で動きます。
共同CEOの松藤浩一郎さんは次のようにおっしゃっています。
「約半年間、成層圏の一定の場所を滞空出来るような機体を開発しています。」

スペースコンパスは2025年度中の国内実用化を目指しています。
5G、高速通信規格のネットワークを日本全域に展開する構想です。
この構想の課題について、松藤さんは次のようにおっしゃっています。
「いろいろあるんですけども、一つは制度面、これ(HAPS)は世界でまだ誰もやっていないサービスなので電波法ですとか航空法の整備が必要になります。」
「(国内外の)様々なパートナーと一緒にこの構想を実現に結び付けていきたいと考えております。」

スターリンクを巡っては、14日にイーロン・マスクさんがウクライナへの提供の中止を示唆したかと思えば、一転して15日にサービスの継続を表明するなど、その言動が波紋を呼んでいます。
通信という重要なインフラを一社に頼ることのリスクが浮き彫りになったわけですが、こちらに日本の大手4社の現状をまとめました。
こうした状況について、解説キャスターで日経ビジネスの編集委員、山川龍雄さんは次のようにおっしゃっています。
「私は、日本こそ一番宇宙通信は必要だと思いますね。」
「(その理由は)3つあって、まず山間地が多いということは、地上のインフラが届きにくいところがそれだけあるということですね。」
「それから自然災害が多いので、既存の設備がいろんなトラブルに遭う。」
「だからバックアップの重要性が非常にあるということ。」
「それから何と言っても有事対応ですね。」
「今、ウクライナがこれだけ優勢に戦争を進めているというのは何と言ってもインフラがずっとインターネットがつながっていることが大きいわけで、翻って日本には周辺にロシアも北朝鮮も中国もあるわけですから、防衛力、それから抑止力強化のためにも必要だと思います。」
「特にこれについては、イーロン・マスク氏頼みじゃなくて、日本の技術に期待したい。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通して、これまで電波状況が悪くてスマホがつながらなかった状況が宇宙通信により解消されることが分かりました。
ですから、既存の通信大手各社がスターリンクのような宇宙通信を導入すれば、私たちは災害時なども含めて安心して快適な状況でスマホを使うことが出来るようになるのです。
また、今回ご紹介したビーコアのようにスターリンクが提供するような通信サービスを活用することによってこれまで不可能だったビジネスモデルを実現出来るようになるのです。
ただし、問題は利用料金です。
仮に今、使っているスマホよりも10%程度料金が高いくらいに抑えられれば、かなりの引き合いがあると思います。
勿論、私も利用するつもりです。

なお、これまでこうしたサービスに積極的に取り組んできたソフトバンクが宇宙通信に対して、他の3社に比べて消極的に見えるのが気になるところです。

 
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