2022年07月15日
アイデアよもやま話 No.5321 気になる”ロシア倒産”の増加!
4月6日(水)放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)で”ロシア倒産” の増加について取り上げていたのでご紹介します。 

ロシアへの経済制裁の影響についてですが、ロシアと貿易する日本の企業は最大で約1万5000社にのぼることが帝国データバンクの調べで分かりました。
その多くが体力のない中小企業とされ、制裁による取引停止が長引けば事業の継続に大きな影響が出る事態になっています。

従業員9人の株式会社三忠(東京・江東区)ではロシアからそばの原料となる殻付きのそばの実を輸入しています。
国産のものと比べると香りはやや少ないものの、品質は上がってきているといいます。
ロシア産を輸入する理由について、澤野仁志業務部長は次のようにおっしゃっています。
「ロシア産は価格が安いのが一番のメリットになります。」
「(国産と比べて)4割から5割くらい安くなってくると思います。」

殻付きのそばの実は中国からの輸入量が最も多かったといいますが、ロシア産は中国産よりも安いことなどから昨年の輸入量は中国産を逆転、今では輸入する殻付きのそばの実の約3割がロシア産です。
更にそばの付け合わせで使われるわらびもロシア産が多く流通しているといいます。
経済制裁の影響について、澤野さんは次のようにおっしゃっています。
「船ですね。」
「物流の方で滞りが出始めているという影響が出ています。」
「今のところは、契約が戦争前のものがあったので、それを一生懸命持って来ているところなんですけども、今後ロシアのそばが必要とされるかどうか。」
「(ロシア産のそばが輸入されなくなると私たちは気軽にそばが食べられなくなるのではという問いに対して、)その可能性が出てきています。」

日本企業のロシア貿易の実態をまとめた帝国データバンク(東京:新宿区) 情報統括部の上西伴浩部長は次のようにおっしゃっています。
「今回データを分析したところ、ロシアに直接輸出入するのが338社、そこからまた取引をされている企業を全て含めると約1万5000社というのが判明しました。」

帝国データバンクによりますと、輸出で多いのが電気機械や自動車部品メーカー、輸入では水産業や木材業です。
上西さんは次のようにおっしゃっています。
「日本の食卓では冬になるとカニが出てきてますし、物量が少なくなれば、その分価格にも影響するでしょうし、一般の人にも影響するかもしれませんね。」

ロシアと取り引きする企業を地域別に見ると、1位が東京、2位が北海道です。
その北海道で、地元企業のロシア貿易を支えているのが銀行です。
北海道銀行では2009年以降、道内企業のロシア進出を本格的にサポート、現地に子会社を設立するなどし、外食企業の出店支援や寒冷地における温室技術を持つ道内の中小企業を巨大プロジェクトに参画させるなど、ロシアビジネスを支えてきました。
今回のロシアとの貿易の制限について、北海道銀行の担当者は次のようにおっしゃっています。
「北海道にとって一番近い外国はロシア、そのため長い時間をかけてコツコツと支援してきましたが、今は全く出来ません。」
「政府の方針に従って駐在員を戻しましたが、私たちはロシア事業を見直すことは考えていません。」
「経済損失も試算していません。」

今、新たに検討されるロシアへの経済制裁、今後日本の中小企業にどんな影響が出てくるのでしょうか。
上西さんは次のようにおっしゃっています。
「すぐに倒産はないとは思うんですけども、先ほど言った受注依存度で5割〜7割を占めるビジネスをやられているとして、資金力もそうないとするならば、(倒産が)出てもおかしくないかなと。」

こうした状況について、解説キャスターで日本経済新聞論説主幹の原田亮介さんは次のようにおっしゃっています。
「先ほど銀行の話が出ていましたけれども、影響がかなり長期化すると思うんですよね。」
「そうした場合にやっぱり特に水産物とか特定のものを輸入してさばくということですから、事業転換をしないと中々会社として生き残れない。」
「それをサポートするような方法がいるんじゃないですか、政策的には。」

以上、番組の内容をご紹介してきました。

番組を通してロシアへの経済制裁の影響について以下にまとめてみました。
・ロシアと貿易する日本の企業は最大で約1万5000社にのぼる
・その多くは体力のない中小企業とされ、制裁による取引停止が長引けば事業の継続に大きな影響が出る事態になっている
・帝国データバンクによると、輸出で多いのが電気機械や自動車部品メーカー、輸入では水産業や木材業である
・ロシアと取り引きする企業を地域別に見ると、1位が東京、2位が北海道である
・北海道で、地元企業のロシア貿易を支えているのが銀行である
・北海道銀行ではロシア貿易について長い時間をかけて支援してきたが、今は全く出来ない状態である
・影響がかなり長期化すると見込まれるので、受注依存度で5割〜7割を占めるビジネスでは資金力がないと倒産が出てもおかしくない
・従って、会社が生き残るためには事業転換を図ることが求められる
・また、こうした企業の生き残りのための政策も求められる

なお、帝国データバンクによる全国企業倒産集計2021年度(こちらを参照)によれば、年度倒産件数は56年ぶりの6000件割れといいます。
そして国や自治体による資金繰り支援が支えになって中小企業の「資金繰り破たん」を回避出来ていることが、引き続き倒産の発生を低水準に抑制する要因となっているといいます。
ですから、本来倒産するはずの企業が国や自治体による資金繰り支援によって倒産を免れている状態なのです。
しかし、ロシアへのウクライナ進攻、およびロシアへの経済制裁は長引くと見込まれているので国や自治体による資金繰り支援が続く状況は望ましくなく、従って企業には事業転換を図ることが求められるのです。

いずれにしてもプーチン大統領の決断によるウクライナ進攻は世界経済に大きな影響を及ぼしています。
またプーチン大統領は国際ルールをことごとく無視しており、ロシア進出企業との契約も突然あっさりと反故にしています。
中国も同様に国際ルールを無視した行動を継続させています。
ですから、こうしたロシアや中国に係わる経済的なリスクを前提としたロシアや中国との付き合い方が世界の国々や企業に求められるのです。

 
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