2022年05月05日
アイデアよもやま話 No.5260 ロシアによるウクライナ侵攻、司法の追及が始まる!
3月17日(木)付けネット記事(こちらを参照)で司法の追及が始まったロシアによるウクライナ侵攻について取り上げていたのでその一部をご紹介します。
なお、日付は全て記事掲載時のものです。

・ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、オランダにある国際司法裁判所(ICJ)は「国際法に照らして重大な問題を提起している」としてウクライナ側の訴えを認め、ロシアに対して直ちに軍事行動をやめるよう命じる暫定的な命令を出しました。
・国際司法裁判所の訴訟には当事国の同意が必要で、今回ロシアはその意思を示していませんが、裁判所は暫定的な命令には法的拘束力があるとしています。
・命令には15人の裁判官のうち13人が賛成し、ロシアと中国の裁判官が反対しました。
・国連の主要機関で「世界法廷」とも呼ばれる国際司法裁判所で、軍事侵攻に厳しい判断が示されたことで、たとえロシアが受け入れなくても、ウクライナへの国際的な支援に一層の正当性が認められることになり、同じハーグにある国際刑事裁判所で始まっている戦争犯罪などの捜査にも影響を与える可能性が指摘されています。
・国際司法裁判所の暫定的な命令が出されたあと、ウクライナの代表は記者団に対して「ロシアは国際法上の義務である裁判所の命令を順守し、軍事作戦を停止しなければならない。ウクライナは正義を実現するために国際法のあらゆる手段に訴える」と述べました。
・林外務大臣は「わが国は、ロシアによるウクライナ侵略は、国際法や国連憲章の違反だと強く非難するとともに、攻撃の即時停止と部隊の撤収を求めてきた。ICJによる暫定措置命令は当事国を法的に拘束するものであり、日本としては措置命令を支持し、ロシアに対し、直ちに従うことを強く求める」などとする談話を発表しました。
・中国外務省の趙立堅報道官は17日の記者会見で「われわれはロシアとウクライナが話し合いを通じて問題を適切に解決すること、そして国際社会が平和的な解決のために積極的な役割を果たすことを支持する」と述べる一方「各国は、複雑な要素を増やすことを避けるべきだ」と、くぎを刺しました。

以上、ネット記事の一部をご紹介してきました。

そもそも「国際司法裁判所とは何ぞや」ですが、2012年8月29日付けネット記事(こちらを参照)で「国際司法裁判所の判決、拘束力はどのくらい?」をテーマに取り上げて分かり易く伝えていたので以下にその一部をご紹介します。

・裁判をするには関係する国がICJに問題を委ねると合意しなければならないこと
・自分の国にかかわる問題をICJが裁判してもよいと受け入れている67ヵ国同士であれば相手の同意がなくても裁判に出来ること
・しかし、韓国は受け入れていないため、竹島の領有権問題については日本単独で訴えても韓国が同意しないと裁判にはならないこと
・ICJに全てを解決できる力はないが、国際社会に問題を知ってもらい、味方を増やす機会にはなること
・従ってICJが裁判においては国の主張を通すための外交の力が問われること

なお、このネット記事では渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生(当時)の話として、ICJの経緯を伝えていたので以下にご紹介します。

 17世紀の西欧で確立した近代主権国家体制のもとでは、自国の権利を主張し合う国際紛争が起きた場合、「戦争によって解決するものだと考えていました。しかし、戦争は国家を疲弊させます。そこで、平和的な解決方法を提案したのが、1794年に英国と米国の間で結ばれたジェイ条約でした。独立戦争後も続いていた外交問題を「仲裁裁判で解決しようとしたのです。特に米国の南北戦争をめぐる「アラバマ号事件」は、英国の中立国義務違反をめぐって8年間も争われましたが、第三国も含めた仲裁裁判により解決し、国際裁判の重要性が注目されました。
明治維新後の日本では、横浜港に停泊していたマリア・ルス号(ペルー船籍)内の中国人を奴隷であるとして日本政府が解放したことが、ペルーとの外交問題に発展しました。この「マリア・ルス号事件」は、ロシアを仲介とする国際裁判によって日本側の主張が認められ、解決しました。このような経験が20世紀の国際裁判所の設置につながったのです。

以上、ネット記事の内容の一部をご紹介してきました。

こうして見てくると、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、オランダにある国際司法裁判所(ICJ)がウクライナ側の訴えを認め、ロシアに対して直ちに軍事行動をやめるよう命じる暫定的な命令を出したというのは極めて当然です。
そして、この判決結果はたとえロシアが受け入れなくても、ウクライナへの国際的な支援に一層の正当性が認められることになったということは支援を受けるウクライナに今後の有利な展開をもたらすことになります。

また、この暫定的な命令には法的拘束力があるとしていますが、問題があります。
ウィキペディアには以下の記述があります。(こちらを参照)

国連憲章第94条第1項ではICJの判決には法的拘束力があると定められる。しかし国家権力が判決履行を強制する国内裁判と違い、その国家が当事者となるICJの裁判においては国家の上に立つ世界政府などといった国家に判決を強制する権力は存在しない。

要するに、今のICJには判決履行を強制する権力がないのです。
従って、ロシアによるウクライナ侵攻についても、いくらウクライナがICJにロシアを訴えて、ICJがロシアに対して直ちに軍事行動をやめるよう命じる暫定的な命令を出したといってもその効果はあまり期待出来ないのです。
なぜならば、ロシアがその命令に従わなくても具体的な罰則規定がないからなのです。
しかし、それでも上記のようにICJによる判決はロシアに非があるということでウクライナに有利に働く効果はあるのです。
また長期的にみれば、ロシアによるウクライナへの侵攻が終息を迎えた後もプーチン大統領は国際社会から完全に信頼を失い、従って計り知れないほどの損失をロシア国民にもたらすと思われます。

なお、今回の件で一貫してロシアに協力的な姿勢を崩さない中国も同様に国際社会から大なり小なり信頼を失うと思われます。

 
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